伝説の山岳救助犬バリーの名を冠した財団
セントバーナードと言えば、首に小さな樽を下げた姿を思い浮かべる方が多いと思います。あの樽はセントバーナードがスイスの山岳救助犬として働いていた時に、救助した人の体温を上げるために飲ませるアルコール度数の高いお酒が入っていたものです。
現在では山岳救助犬は、ヘリコプターでの輸送に適したサイズの小さい犬がメインになっており、セントバーナードはほとんどいないのですが、かつてスイスにはバリーという名の伝説の救助犬がいました。
19世紀初頭、バリーは峠を越える際に遭難した人を発見して運び、40人以上もの人々の命を救ったとされています。
そのスイスの地には、バリーの名を冠したバリー財団という非営利団体があります。バリー財団は、2005年にスイスにある世界最古のセントバーナード犬舎からセントバーナードのブリーディングを引き継いだ団体で、ブリーディングの他に動物介在型ソーシャルワークの提供や、関連施設の運営などを行なっています。
以前とは違う形で人々を救う仕事をしているセントバーナードたち
バリー財団で生まれた犬たちの多くは、財団が提供している動物介在型ソーシャルワークに参加するためのトレーニングを受けて、人々を助ける仕事に就いています。
動物介在型ソーシャルワークとは、いわゆるセラピードッグが参加するさまざまな分野の仕事を指します。セントバーナードたちは学校、病院、高齢者施設、刑務所などを訪問してセラピーや教育支援活動に参加しているそうです。
医療分野でのセラピーは、支援を受ける人々の障害のタイプに合わせた独自のサポートを提供し、心身および心理社会的リハビリテーションにおいて、犬たちが医療専門家を手伝っています。
犬たちは毎年、スイス全土で約600の活動に参加しています。かつてバリーがしていたのとは違う形ではありますが、セントバーナードは今も人々を助け救ってくれているようです。
受け継がれているバリーの伝統
「バリーとは違う形で」と書きましたが、200年前の山岳救助犬たちも既にセラピードッグの役割を果たしていた可能性があります。
バリーは修道士によって設立された宿泊所で暮らしていました。アルプス越えの危険なルートで遭難した巡礼者や旅人の救助に当たっていたのですが、助けられた人々の称賛の声によって、セントバーナードは信頼できる伴侶動物としての評判を確立しました。
バリーをはじめとした救助犬たちは人々の身体だけでなく、心も助けたのかもしれません。
2023年夏にバリー財団で生まれた犬の中には、バリー1世の血統を継ぐ子孫たちもいます。バリーの伝統は、目に見える形と見えない形の両方で確実に受け継がれているようです。
バリーの功績や現代のセントバーナードたちの活躍は、バリー財団内にあるバリーランドで目にすることができます。バリーランドには博物館や犬たちを見学できる施設があり、多くの観光客が訪れているそうです。
まとめ
かつて山岳救助犬として活躍していたセントバーナードが、現代においてはセラピードッグとして幅広い分野で人々を助けているという話題をご紹介しました。
バリー財団の人々は、セントバーナードはスイスのシンボルだと述べています。犬種としての役割が変わっても、セントバーナードへの愛はスイスの人々の間に変わりなく続いているようです。
《参考URL》
https://www.reuters.com/lifestyle/switzerlands-beloved-st-bernard-dogs-lap-up-new-social-role-2023-09-26/
https://fondation-barry.ch/EN/