メス犬の不妊化手術の時期と発育への影響の調査結果

メス犬の不妊化手術の時期と発育への影響の調査結果

メス犬が不妊化手術を受けた時期が、その後の身体的な発育にどのような影響を及ぼしたかを調査した結果が発表されました。

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メス犬の不妊化手術の時期は成長に影響を及ぼすか?

ラブラドールの子犬2頭

愛犬に不妊化手術をするかどうか、するとしたら時期はいつが良いのか、犬と暮らす人にとっては悩ましい問題のひとつです。推奨される時期も文献によって違っていたり、犬種による差もあったりしてさらに判断を難しくしています。

犬の不妊化手術の時期と健康への影響は、いくつかの研究結果が報告されています。しかし、メス犬の不妊化手術の時期(発情前か、または発情後か)が、成長と身体発育に及ぼす影響について調査した研究は、今までのところ確認されていませんでした。

このたび、イギリスのノッティンガム大学獣医学部、グラスゴー大学獣医学部、非営利団体のガイドドッグナショナルセンターの研究チームが、不妊化手術の時期が違う2つのグループのメス犬を対象に身体発育への影響を調査し、その結果が発表されました。

同じ条件で育てられた介助犬候補を対象に調査

ハーネスを付けた介助犬

この研究で調査対象となったのは、2012年2月から2015年8月の間に介助犬プログラムで生まれた306頭のメス犬でした。

犬たちは全頭がラブラドールとゴールデンレトリーバーの交雑種です。生後8週でボランティアの家庭に預けられ、不妊化手術を受けて14ヵ月齢で介助犬としてのトレーニングに入ります。

そのため全員がほぼ同じ条件で管理され、離乳期から全て同じ市販のドライフードが与えられているため、比較するのに理想的です。

306頭のうち、155頭は発情前に不妊化手術を受け、151頭は最初の発情を迎えた後に手術を受けています。全ての犬は6ヵ月齢および17ヵ月齢で身体評価が実施されました。(発情前に手術を受けた犬の身体評価は手術前日に実施。)

身体評価は指定の獣医師によって行なわれ、体高、体重、ボディコンディションスコア、定規で測定した外陰部の寸法、外陰部の記述的外観が含まれます。

またこの身体評価とは別に、各犬の6ヵ月齢と17ヵ月齢の時点での外陰部をデジタル撮影した画像の提出が依頼され、評価分類されました。

発情前の手術に大きな禁忌はないが慎重な対応が必要

ゴールデンレトリーバーを撫でる獣医師

2つのグループの犬たちの身体評価を比較分析した結果、発情前に手術したグループは発情後に手術したグループの犬に比べて、6ヵ月齢から17ヵ月齢の間の体高の変化が有意に大きく、外陰部の長さと幅の測定値の変化が小さいことがわかりました。

発情期前に手術したグループの体高変化の大きさは、成長期が延長され骨膜形成の閉鎖が減少した結果として、骨が長くなり体高が増加した可能性が述べられています。これは筋骨格系疾患のリスクに関連する可能性があります。

また17ヵ月齢の時点での発育を比較した結果は以下の通りでした。

  • 発情期前手術のグループの平均体高58.5cmに対し発情期後手術では平均56.6cm
  • 発情期前手術のグループの平均体重28.3kgに対し発情期後手術では平均27.3kg
  • 発情期前手術のグループの外陰部のサイズ平均2.8×1.7cmに対し発情期後手術では平均3.2×2.1cm

有意とは言えない差でしたが、発情期の前に手術をしたグループは体高と体重が大きく、外陰部のサイズが小さいことが示されています。

外陰部のデジタル画像を分析した結果は、発情期前に手術をしたグループでは6ヵ月齢と17ヵ月齢の両方で皮膚ひだが認められました。

また、発情期前の手術グループでは17ヵ月齢の時点で外陰部がくぼんでいる、またはやや反り返っている犬が有意に多かったこともわかりました。

発情前に手術をしたグループの外陰部のサイズや形状については、生殖器官を発育させるホルモンで卵巣から分泌されるエストロゲンが、手術によって分泌されなくなったためと考えられます。

これらの結果から、発情前の不妊化手術は大きな禁忌ではないことが示されましたが、身体発育におけるこれらの違いが長期的な健康に及ぼす影響については、さらに調査し理解を深める必要があると研究者は結論づけています。

まとめ

座ったラブラドールとゴールデンレトリーバー

メス犬が不妊化手術を受けた時期が発情前なのか最初の発情後であったかで、その後の身体発育にどのような影響があったかを調査した結果をご紹介しました。

この結果は、ラブラドールとゴールデンレトリーバーの交雑種という大型犬を対象にしたものなので、他の犬種では違う結果が出る可能性もあります。

そのため全く別の犬種の不妊化手術の適切な時期については、かかりつけの獣医師との連携が重要になります。

しかし、介助犬や作業犬の育成団体にとっては判断のための有益な情報となると考えられます。多くの飼い主さんにとって悩ましい問題だけに、さらに進んだ調査が待たれますね。

《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani13091431

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