「コマンド」と「芸(トリック)」の違い
犬のしつけの中で、様々な動きや言葉、ルールを教えることがあると思います。
それらは主に「コマンド=指示」と「トリック=芸」の2種類に分かれます。しつけをする際には、その違いをきちんと認識した上で犬と接する必要があります。
「コマンド=指示」とは
「コマンド=指示」とは、犬が人間社会の中で生きていく上で守るべきルールやマナーを教えるために必要なしつけに使用するものです。
具体的には『おすわり』や『ふせ』『待て』『おいで』『ついて』『ちょうだい』『ダメ』『静かに』などが挙げられます。
『おすわり』や『ふせ』『待て』は、犬の行動を止めたり落ち着かせたりするために役立ちます。犬が好き勝手に動き回って制御ができないと、散歩中に自転車や車とぶつかって事故にあったり、人に飛びついて怪我をさせてしまったりといったトラブルが起こることがあります。
動物は体の動きが気持ちに影響を与えるため、激しく動き回るほどパニックになったり興奮状態になったりします。その反対に、座って待つことで、気持ちが落ち着き冷静になれるのです。
そのほかの「コマンド=指示」も、散歩中に横について歩くことや、呼び戻しに応じること、おもちゃを口から離すこと、吠えをやめさせることなどに必要なものばかりです。
「トリック=芸」とは
『オテ』に代表される犬の芸は「トリック」とも呼ばれています。できなくても生活上困ることはありませんが、やっている姿が可愛らしいものばかりなので、教えている飼い主さんも多いと思います。
『オテ』をはじめ、『ハイタッチ』『バイバイ』『ごろん』『バーン』『ジャンプ』『おじぎ』など様々なものがあり、ドッグダンスなどの競技に取り入れている人もいます。また、『オテ』を足拭きの際に、『バーン』をブラッシングの際にと生活に役立てている人もいるようです。
犬に「芸(トリック)」を教えるメリットや必要性
犬に「トリック=芸」を教えることは絶対に必要なことではありませんが、実は教えることにいくつかのメリットがあります。
犬が自ら考えるようになる
犬に芸を教えるとき、基本的にほめて教えることが多いと思います。犬が可愛い仕草をすれば、自然と飼い主さんが笑顔になったりまわりの人が「すごいね!」と盛り上がってくれたりするでしょう。
そのような経験をすると、犬は「どうしたらほめてもらえるんだろう」「何をすれば、またおやつがもらえるかな」と考えるようになります。そして、自分の頭で色々なことを考えたり、自発的な行動を取るようになったりします。
脳への刺激になる
犬は新しいことを学習するとき、脳に刺激が与えられます。また、覚えた芸を披露して周囲の人にほめられることで喜びを感じることも、脳や精神衛生にとってとてもいいことだと考えられます。
特にシニア犬に芸を教えると、頭の体操になって認知症予防ができると考えられているので、ぜひ取り入れてみてください。愛犬の負担にならないように、焦らず少しずつ教えてあげてくださいね。
人との関係性づくりに役立つ
「トリック=芸」を教えるのは、犬と飼い主さんのコミュニケーションにも役立ちます。芸を教える過程で、飼い主さんは犬の様子をじっくり観察することになりますし、教え方を工夫することもあるでしょう。
犬も飼い主さんとコミュニケーションをとれることやほめてもらえることに喜びを感じますし、意思疎通を図るために飼い主さんのことを理解しようとします。
それらのことは、しつけをしている間以外の関わりにも大きな影響を与え、犬と飼い主さんが信頼関係を築くことに役立つでしょう。
犬に「芸(トリック)」を教えるときのコツ
犬に「トリック=芸」を教えるときにまず心がけて欲しいことは「楽しみながら教える」ということです。
愛犬の可愛いトリックは見ていて可愛いものですが、愛犬が嫌がっているのに強制的に教え込もうとしたり、間違ったときにイライラして怒ったりというような態度を取ると、犬は本当に必要なしつけトレーニングに対しても消極的になってしまうことがあります。
生活に絶対に必要なことではないため、トイレトレーニングや吠えをやめさせるしつけなどと違い、覚えなくても困ることはありません。そのため、ぜひ飼い主さんも焦ることなく、じっくり時間をかけて楽しく教えてあげてください。
また、最近ではSNSにユニークな犬の様子が上げられていることもありますが、SNS映えを意識しすぎて犬に無理な行動や仕草をさせすぎないように注意しましょう。
他の犬がやっていたとしても、犬の体格や習性によっては適さないものもあるので、決して無理強いすることはしないでください。
まとめ
「トリック=芸」は犬との生活で絶対に教えなければならないことではありません。
しかし、教えることで飼い主さんと犬の絆が深まったり、認知症予防ができたりと様々なメリットがあるので、ぜひ取り入れてみてくださいね。