獣医歯科専門医によるデンタルケア製品の効果調査
愛犬のデンタルケアに頭を悩ませている飼い主さんはとても多いと思います。歯磨きが必要なことはわかっていても、犬が嫌がってできない場合も少なくありません。
デンタルのためのいろいろな製品もありますが、どれを選べば良いのかも迷ってしまいます。そんな悩みに、ヒントを与えてくれるような調査結果が報告されました。
この調査はポーランドの獣医歯科の専門医が、ザクロエキスをベースにした市販のペット用デンタルケア用品の効果を調査したもので、獣医科学ジャーナルのフロンティアーズ誌に掲載されました。
調査されたデンタルケア用品は、ビルバック社のペットの飲料水に混ぜて使うタイプのもので一般に市販されています。
歯科クリーニング後にデンタルケア製品を30日間テスト
調査に参加したのは40頭の顧客所有の犬たちで、健康状態が良好、軽度から中等度の歯肉炎が有り、全ての歯が揃っているというのが参加の条件でした。
犬たちはヨークシャーテリアやジャックラッセルテリアなどの小型犬から、ジャーマンシェパードなどの大型犬を含む14の異なる犬種です。
全ての犬は血液検査と尿検査を含む検診の後に、全身麻酔下で口腔の健康状態について詳細なチェックを受け、その後に歯垢と歯石を取り除く歯科クリーニングと研磨が行われました。
こうして歯が完全にきれいな状態になった犬たちは、ランダムに20頭ずつの2グループに分けられました。
1つのグループは飲料水100mlあたりにザクロエキスのデンタルケア製品1mlを混ぜたものを毎日与えられ、もう1つのグループの犬の飲料水には何も加えないという条件です。試験期間は30日と設定されました。
試験期間中に他のデンタル製品の使用や歯磨き、デンタルトリーツなどは与えないよう指示されたとのことです。
ザクロエキス成分の製品が歯垢と歯石を抑制!
調査に参加した犬たちは30日後に、歯肉の健康状態、歯垢と歯石の蓄積状態がチェックされました。このチェックと評価は、どの犬がデンタルケア製品を使っていたのかを獣医師が全く知らされない盲検下レビューで行われたということです。
レビューの結果は、デンタルケア製品を毎日投与された犬は投与されなかった犬に比べて、歯垢の量が47%、歯石の量が24%少なく、歯肉も完全に健康だったという有意な違いを示すものでした。
この製品の主成分であるザクロエキスは、試験管内で歯周病に関与する種類を含む口腔内細菌の増殖を抑制するという証拠があり、今回の調査はそれを受けて実施されました。
研究者はこの製品が、歯科クリーニング後の歯垢と歯石の再形成を抑制するのに役立つと結論づけ、その作用機序は有害細菌の増殖の制限と細菌のバイオフィルムの形成を防止することが可能性として考えられると述べています。作用機序については、今後さらに詳しい研究が行われる予定です。
まとめ
主成分としてザクロエキスが含まれるデンタルケア製品(飲み水に混ぜるタイプ)は、獣医師による歯科クリーニング後の歯垢と歯石の再形成を抑えるのに役立つという調査結果をご紹介しました。
ただし、このような製品は使用前に獣医療専門家による歯科クリーニングを受けた場合にのみ効果的であることを留意することが重要だそうです。
すでに付いてしまった歯垢にはブラッシングなど物理的な除去が必要で、歯石(歯垢がミネラル化したもの)は専門家によるクリーニングが必要です。
やはり歯ブラシによる歯磨きは不可欠であるようですが、このような製品を組み合わせることで、より効果的に歯と歯肉の健康を保てると考えられます。
口腔衛生は内臓を含めた全身の健康にも密接に結びついていますので、愛犬の健康と長生きのためにもお口をきれいに保ちたいですね。
《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2023.1241197