老犬介護の心構え
犬の住環境や栄養状態の向上によって、近年では犬の寿命がどんどん伸びています。昔は小型犬で15歳、大型犬で10歳と言われていた寿命でしたが、今では17歳を超えて元気に散歩する小型犬も多いようです。
しかし毎日一緒に過ごしていると気付きにくいのですが、犬も歳をとって様々な身体機能や認知機能が衰えていきます。
では、ハイシニアとなった犬にはどのような介護が必要で。どのようにサポートしていけばよいのでしょうか。
そこで今回は、老犬介護のために必要な「心構え」について解説します。愛犬の老化現象が始まったときに正しく対応できるようにしておきましょう。
1.身体機能の衰えをサポートできるようにしておく
高齢犬は、かなりの確率で「白内障」を発症します。これは、犬の目の水晶体が白く濁って視力が低下する病気です。ほかにも、「緑内障」や「網膜委縮症」などでも犬の視力は低下していきます。
愛犬の目が最近悪くなってきたと感じたら、はっきりした声で声をかけてあげたり、動線にあるものを片付けたりして、目が見えにくくても自由に動けるようにサポートしてあげましょう。家具の角にクッションを付けるのも良いでしょう。
また、犬は高齢になると、足腰の筋力が低下します。特に後ろ足の筋肉の衰えの方がはやく、立ち上がれなくなったり歩いているときによろけたり転んだりするようになります。踏ん張りがきかなくなるので、たいしたことのない段差を超えるのもひと苦労するでしょう。
さらに、愛犬に歩くスピードや踏ん張る力の低下が見られたら、段差をなくすようにスロープを付けたり、床材や敷物を滑りにくい材質のものに変えてあげることも必要です。また、一人で立ち上がれなくても立ってしまえば歩けるという子も多いので、介護用ハーネスで腰を持ち上げるサポートなどをしてあげると良いでしょう。
くわえて、顎の力や嚥下機能の低下も老化現象の一つです。
固いドライフードが飲み込みにくくて嫌がり、食事を摂らなくなることもあるようです。
柔らかい半生のフードやおかゆ状のものを与えたり、自分からお皿に口を持って行くことが難しい子の場合は、スプーンやシリンジを使って口に入れてあげるサポートなどが必要です。固形物が嚙みにくいようなら、スープ状にしても良いでしょう。
2.認知機能の衰えをサポートできるようにしておく
昼夜の感覚がズレて夜中に起きて歩き回り、昼に寝てしまうというのも、認知症の症状のひとつ。夜中に突然甲高い声で鳴きだしたり、遠吠えを続けるなどの様子が見られた場合は認知症である可能性があるので、一度病院で診察をすることをお勧めします。
可能な限り日中に日差しを浴びさせたり、ちょっとした遊びや散歩などをして起こしておき、夜にしっかり眠れるよう生活リズムを整えてあげましょう。場合によってはお薬を利用して、夜しっかり寝てもらうことも大切です。
また、昼夜の認知にズレが生じたり、トイレや布団の上などの「場所」が良く分からなくなって、トイレの粗相が増えてしまうこともあります。筋力が低下して、トイレまで歩いていけなくなっていたり、トイレまで我慢することが出来なくなったりという場合もあるようです。
この場合、トイレのスペースを広げてあげたり寝床にトイレを近づけたりする方法や、犬用のおむつを利用する方法があります。まだ立って歩いて行ける犬の場合は、ふんばりがきくようにトイレ周辺を滑らないようにしてあげることも大切です。防水シートも役に立ちますよ。
まとめ
経験上、医療の発達や栄養の向上により、老犬介護は思ったより長く続きます。飼い主にとって、精神的にも肉体的にも、そして経済的にも大きな負担となることが少なくありません。
ただし、愛犬のストレスを考えると、生活環境はなるべく変えないでいてあげたいですよね。
「大切な愛犬だからきちんと介護してあげたい」「ちゃんとサポートしてあげたい」と、ついつい飼い主は一生懸命になりすぎてしまうものです。しかし、飼い主があまりに思いつめてしまうと、その不安が犬にも伝わってしまいます。
無理をし過ぎず、場合によっては老犬シッターや動物病院に相談をしたり、一時預かりなどを利用したりすることも、長く介護を続けるうえでは必要だと思います。