1.見当識障害(徘徊や旋回、迷子など)
犬の認知症としてあらわれる症状として、まずは見当識障害が考えられます。
見当識障害というとむずかしく感じるかもしれませんが、これは時間や方向などの感覚が狂ってしまい、「今がいつなのか」「ここがどこなのか」という、これまでは当たり前に理解できていたものがわからなくなってしまう症状です。
具体的には、知っているはずの人やほかの犬を認識できなくなってしまったり、方向転換ができずに狭いところに入り込んだり角をうまく曲がれなくなったりすることがあります。そのほかにも、物との距離感覚がわからなくなり、こぼしたおやつやフードを見つけられなかったり、障害物にぶつかってしまったりすることもあるでしょう。
こうしたことが起こると、怪我をする恐れもありますし、犬自身が行動を起こすことに不安を感じるようになってあまり動かなくなったり、ぼーっとして過ごすことが増えたりします。また、同じ場所をぐるぐると歩き回る行動もよく見られます。
これまで当たり前にできていたことができなくなるので、始めは飼い主さんも戸惑うかもしれません。粗相が増えたりするため、わざと失敗しているのでは…と疑うこともあるかもしれませんが、老齢の犬の場合は認知症の症状である可能性も疑ってみてください。
2.睡眠障害(昼夜逆転や夜鳴きなど)
犬の認知症が進行すると、睡眠障害が起こることがあります。
夜眠れなくなってしまい、夜中中起きて歩き回っていたり、夜鳴きしたりする様子が見られます。また、夜眠れなくなることで、反対に日中眠ることが増えて「昼夜逆転」の状態になってしまうことも少なくありません。
犬の睡眠障害が見られたら、できるだけ日中に起きて活動して、夜には疲労感できちんと眠れるようにサポートしてあげましょう。日中にある程度寝ることも必要ですが、起きている間に家の中で簡単な遊びやトレーニングをしたり、散歩に連れ出したりして、心身に刺激を与えることを意識しましょう。
3.性格の変化
「今まではこんなことしなかったのに」「最近怒りっぽくなった」など、年齢を重ねた犬の性格に変化を感じる飼い主さんは少なくないようです。
実は、認知症を発症した犬は、性格や行動に変化が見られるようになることがあるのです。認知症の犬に多いのは、無気力や無関心で、ぼんやりとした様子を見せることが増えます。これは、認知機能が低下することで、周囲の変化に気がつきにくくなることの影響だと考えられます。
また、感情のコントロールができなくなったり、自分自身の変化に対する不安を感じるようになったりして、攻撃的になる犬もいます。老犬にそのような変化が見られたら、犬が不安や恐怖を感じることがないような接し方を考えてあげましょう。
4.排泄コントロールができない
犬は年齢を重ねると、排泄のコントロールがうまくできなくなってしまうことがあります。これは、排尿をコントロールする括約筋の働きが低下することなどが関係しているため、認知症の犬だけでなく老犬全般に起こる問題です。
しかし、認知症の犬の場合は、排泄の感覚についても鈍くなって「トイレに行く」という脳への信号が正しく届かなくなってしまったり、トイレの場所自体がわからなくなってしまったりすることもあります。
犬がトイレの失敗をすると、飼い主さんはびっくりしたりショックを受けたりするかもしれませんが、どうか怒らずに対応してあげてください。犬もきちんとトイレに行けなかったことにショックを受けていることもありますし、粗相をした感覚すらない場合もあります。
トイレの場所を寝床のすぐ近くにしてあげたり、サークルの中で生活をさせたり、おむつを活用したりと、認知症の症状の進行度や生活環境に合わせたサポートしてあげましょう。
まとめ
犬の認知症は、10歳ころから何らかの症状が出てくると言われています。そのため、大型犬では8歳頃、小型犬では10歳頃から対策することが必要と考えられています。長寿化している日本の家庭犬にとってはとても身近な疾患のため、どの犬でもかかる可能性があると考えておいた方がいいでしょう。
愛犬の老後をきちんとサポートするためにも、認知症を発症する前から、多く見られる症状や行動の変化を知っておくことは大切です。
今回こちらで紹介した内容をぜひ頭に入れておき、いざというときに正しい接し方や対応ができるようにしてくださいね。