穀類有りと穀類無しのドッグフードの消化率を調査
ペットフードの原材料がペットの健康に及ぼす影響については、多くの飼い主さんの気になる点です。穀類を使用せず代わりに豆類や芋類を多く使ったフードは安定したシェアを獲得しており、近年では動物性タンパク質を一切使わないヴィーガンドッグフードも増えています。
これらのフードが犬の健康に悪い影響を及ぼすことがないのか、栄養分はきちんと消化吸収されているのかなどを、きちんと検証することは重要です。
アメリカのペットケアのリサーチ会社BSMパートナーズと、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校動物科学の研究者チームは、このたび穀類を含むドッグフードと穀類不使用のドッグフードの消化率を調査した研究結果を発表しました。
この研究の目的のひとつは、穀物不使用のフードに多く使われている豆類(エンドウ豆やヒヨコ豆)の成分が、消化率や犬の拡張型心筋症に与える影響を理解することです。
ビーグルと大型雑種猟犬を対象に4種類のフードで給餌実験
調査のための給餌実験に参加したのは、イリノイ大学の研究室で飼育されているビーグル32頭(オス/メス各16頭、平均年齢2.2歳)と、雑種猟犬33頭(オス16頭メス17頭、平均年齢1.1歳、平均体重27.6kg)です。
犬たちに与えられたフードはこの実験のために特別に製造されたもので、原材料の違う以下のような4種類が用意されました。
- 動物性タンパク質の比率が高く穀類が使われている
- 動物性タンパク質の比率が低く穀類が使われていない
- 動物性タンパク質の比率が低く穀類が使われている
- 動物性タンパク質の比率が高く穀類が使われていない
動物性タンパク質として使用されているのはチキンミールで、チキンミールの比率が低い穀物不使用フードではタンパク源としてレンズ豆、えんどう豆、えんどう豆タンパクが使用されています。
穀類が含まれるフードに使用された穀物はコーン、小麦、コーングルテンミール、ソルガムです。動物性タンパクが高く穀物不使用のフードでは炭水化物源としてレンズ豆、えんどう豆、乾燥ポテトが使用されています。
4種類のフードはすべてAAFCOの栄養基準を満たしており、総合的な栄養成分はほぼ同じになるように設計されています。犬たちは4つのグループに分類され、4種類のうちどれかのフードを6ヶ月間与えられました。
給餌0日、30日、90日、180日の時点で犬の便サンプルが採取され、便の特徴、糞便中の代謝産物、糞便中の微生物叢を調べることにより、各フードの栄養素消化率が評価されました。
4種類全てのフードが高い消化率
排泄された便の量は低動物性タンパク穀類不使用のフード摂取グループは、他のフードを与えられたグループよりも有意に多くなっていました。
また、高動物性タンパク穀類不使用フード摂取グループの便の量は少なかった。ビーグルと雑種猟犬では、ビーグルの方が便の量が多かったこともわかりました。
便の分析の結果からタンパク質源や炭水化物源に関係なく、4種類のフードはどれもビーグルと雑種猟犬の両方で高い消化率を示しました。
消化率、代謝産物、糞便中の微生物叢には、犬種による違いが認められました。雑種猟犬では見かけの消化率(フードから摂取した栄養素の量と便に排泄された栄養素の量の差を消化吸収した量と見なした測定方法)が高く、糞便中の短鎖脂肪酸濃度と微生物のファーミキューテスの割合が高かった。
低動物性タンパク穀類不使用フードでは、糞便中のアンモニア、インドールの濃度が低くなり(悪臭が少ない)、短鎖脂肪酸、酢酸、プロピオン酸、一時胆汁酸の濃度が高くなっていました。
微生物叢では、セレノモナド、ヴェイロネラ、ラクトバチルス、ストレプトコッカス、リギラクトバチルス、メガモナス、コリンセラアエロファシエンス、ビフィドバクテリウムが豊富になり多様性の低下が認められましたが、全ての犬は健康でした。微生物叢の変化は今後さらに調査が必要だということです。
豆類の多いフードは、消化率に悪影響を及ぼし食物に関連する拡張型心筋症の原因のなる可能性があるとの仮説がありますが、今回の研究結果はどのフードも高い消化率を示し、低動物性タンパク穀類不使用フードでは、腸内の健康に有益な短鎖脂肪酸の増加も確認されました。
まとめ
動物性タンパク質、穀類、豆類の含有量が違う4種類のフードを使った給餌実験から、全てのフードは高い消化率を示したという調査結果をご紹介しました。
ドッグフードの原材料を注意して見る飼い主さんは多くても、消化率や代謝物の分析までは研究機関でないとわからないことですので、このような調査結果が報告されるのはありがたいことだと感じます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1093/jas/skad268