犬が触られることで得られる効果
人と犬は、数万年もの昔から共に協力しあって暮らしてきました。その長い歴史の中で、犬は穏やかな性質が、人は協調行動が、それぞれ強化されるように進化してきたと考えられています。
そして人と犬は、視線を使った意思疎通の手段を手に入れました。また最近の研究では、人が犬の体を優しくさすることで、さすった人とさすられた犬の双方の体内で、オキシトシンが多く分泌されることが分かっています。
オキシトシンとは「幸せホルモン」とも呼ばれているホルモンで、人の母子間や、飼い主さんと飼い犬の間で視線を合わせたりスキンシップを図ることで、お互いの親和性を高め、共感性を育み、不安を和らげ、ストレスを抑制し、痛みを和らげる効果があることが知られています。
もちろん、飼い主さんと飼い犬の間に全く信頼関係が築かれていなければ、これらの効果は現れません。しかし、信頼関係を築きながらスキンシップを重ねることで、より良い関係性を構築することができるのです。
では、実際に信頼している飼い主さんから触られることで、飼い犬にどのような効果があり、触れ合う際にどのようなことを意識すべきなのかについて解説します。
1.気持ちがいい
飼い主さんが触ることで、犬は「気持ちが良くなる」という効果を得られます。人も、凝ってしまった首回りや肩、パンパンに張ってしまった脚などを揉まれたりマッサージされると気持ちが良くなるのと同じです。
まだ信頼関係が築けていない間は、愛犬もあまり触らせてくれないかもしれません。しかし、飼い主さんに触られると気持ちがいいということが理解できれば、徐々に心を開いて触らせてくれるようになるでしょう。
2.安心しリラックスできる
愛犬にとって、飼い主さんは母犬のような存在です。
学校や会社などから帰宅し、母親に会うとホッとするのと同じように、愛犬も飼い主さんがそばにいて自分の体に触れてくれることで、飼い主さんの温もりを感じて安心し、リラックスできるようになります。
3.ストレスが軽減する
触れ合うことでたくさん分泌されるオキシトシンによる効果の一つが、ストレスの軽減です。
ストレスが軽減することで免疫力の向上も期待できますので、愛犬の長生きにもつながると考えて良いでしょう。
4.痛みが和らぐ
オキシトシンには、痛みの感覚を和らげるという効果もあります。
腹痛を起こした幼い子どものお腹に、母親が優しく手のひらを乗せて「痛いの痛いの、飛んでけ〜!」などと言うと痛みが和らぐのと同じ効果です。
5.深い信頼関係を築ける
毎日愛犬に必要なお世話をし、危険なことから愛犬を守り、優しく声をかけながらこまめに全身を優しく触ることで、愛犬から良き母親として認められ、頼られるようになることでしょう。
そして愛犬と視線を合わせ、スキンシップを続けていくことで、母子間のような愛情を育み、共感しあえる関係性が構築されます。それが積み重ねられていくことで、深い信頼関係を構築することができるのです。
6.愛犬の体調の変化を早期に察知できる
毎日愛犬の全身を触りながら皮膚や被毛、筋肉や関節のチェックを行うことで、愛犬の体調の小さな変化にも気付けるようになります。
つまり、病気やケガを早期に発見し、まだ症状が軽い内に治療できるということです。愛犬の全身をどこでも触れるようにしておきましょう。
飼い主が意識すべき愛犬への触れ方
犬が飼い主から触られるメリットについて理解できたところで、飼い主として意識すべき愛犬への触れ方についても見ていきましょう。
触られるのを好まない犬種の存在を理解する
一般的に猫と違い、犬は触られるのを嫌がる印象は少ないですが、それでも犬種によっては触られるのを好まない場合もあります。
トイ・プードルやチワワ、マルチーズなどの愛玩目的に改良されてきた犬種は、触られることを好む傾向が強いですが、日本犬やハスキーなどの原始的なグループに属している犬種は、非常に独立心が強く、あまり人から触られることを好まない傾向が強いです。
もちろん、日本犬やハスキーとはスキンシップを図れないということではありません。しかし愛犬との交流は、その子の個性を尊重するのはもちろん、犬種特性も考慮に入れると良いでしょう。
触るタイミングに気を付ける
飼い主さんとスキンシップを図りたいと思っている場合は、愛犬が自ら飼い主さんに近寄ってきたり、前足や鼻先で体を押してきたりします。
しかし、食事中や眠っているときに触られると嫌がることが多いです。見知らぬ人には触られたくないという犬も多いです。
愛犬が顔や体を緊張させている、固まって動かない、逃げようとしている、口の周りを舐める、目を逸らす、尾を下げるといったストレスサインを示しているときには、触らない、また触らせないようにしましょう。
触ると喜ぶ場所を見極める
基本的に、愛犬が気持ちいいと感じられるような触り方をすることが大切です。そのためには、愛犬が触ると喜ぶ場所や嫌がる場所を把握する必要があります。
触ると喜んだり嫌がったりする部位は、犬によってまちまちです。しかし一般的には、足先、尾、肛門周辺、目、鼻、口周り、耳の中などは嫌がる子が多く、胸、肩、首回り、眉間から頭の部分、耳の付け根、腰などは喜ぶ子が多いです。
これらを参考に、愛犬が喜ぶ場所を見極めましょう。
ストレスをかけない撫で方をする
愛犬を撫でる時には、下記に注意しましょう。
- ストレスサインを出している時には無理に触らない
- 視線の高さが合うような低い姿勢で、飼い主もリラックして優しく穏やかに撫でる
- 手のひら全体で触れるようにする
- 撫でるときは毛並みに逆らわない
触られるのが好きな犬であっても、人間に自分勝手に触られてしまうのは当然問題があります。愛犬のストレスにならないように、上記の点に注意しておきましょう。
まとめ
人の子育てと同じように、愛犬との暮らしにもスキンシップが大切です。
しかし、その効果を知らずに触れ合うよりも、効果や注意点を知った上でスキンシップを図る方が、より多くのメリットを享受することができるでしょう。
この記事を参考に、ぜひ愛犬が喜ぶ触れ合い方を見つけてください。