イヌゲノムの国際研究共同体『ドッグ10Kゲノムプロジェクト』
2015年に中国科学院昆明動物研究所、カリフォルニア大学LA校、アメリカ国立衛生研究所の遺伝学者によって主催された『ドッグ10Kゲノムプロジェクト』という国際的な研究プロジェクトがあります。
このプロジェクトは、イヌのゲノム配列決定に関する世界的な取り組みを調整し、ドッグサイエンスコミュニティのためのリソースを構築することを目標としています。
現在ドッグ10Kゲノムプロジェクトは、数千頭のイヌゲノムの配列決定と解析を目指しています。
プロジェクトは国際的な研究共同体として世界各国から25の研究機関にまたがる48人の研究者が参加しており、このたび約2,000のイヌゲノムを配列決定し解析したという発表がありました。
多様なイヌ科動物のゲノム解析から得られた高度な遺伝学ツールキット
この研究では、イエイヌ1,611頭(純血種の321犬種)、集落犬309頭、オオカミ63頭、コヨーテ4頭を含む1,987頭からサンプルを採取してゲノム解析を行ないました。
その結果、常染色体、X染色体、ミトコンドリアにまたがる4,800万以上の一塩基変異、インデル変異、構造変異など、239品種について75%以上の変異が発見されました。
これらの発見によって得られた高度な遺伝学ツールキットは、犬の家畜化、犬種の形態や行動、病気のかかりやすさにおける遺伝的な違い、ゲノムの進化や構造などの生物学的な疑問に答えるために使用できるようになったそうです。
ドッグ10Kゲノムプロジェクト、拡がる可能性
ドッグ10Kゲノムプロジェクトのデータは一般公開されています。プロジェクトの目標は、世界各地のコミュニティがアクセスできるリソースを作成することです。
このリソースは犬の祖先研究であれ、ガンの臨床治療であれ、ドッグサイエンスのどんな研究にも利用することが可能です。
今回の研究論文の主執筆者であるスウェーデンのウプサラ大学の研究者自身も、このプロジェクトデータの可能性について「まだ表面しか見えていない」と語っています。
この高度なツールが、今後のドッグサイエンスの世界でどのように活用されていくかを楽しみにしているとのことです。
まとめ
国際的な大規模研究共同体であるドッグ10Kゲノムプロジェクトが、約2,000もの多様性に富んだイヌ科動物のゲノムを発表し、データを一般公開したという話題をご紹介しました。
その内容は難解すぎてさっぱりわからないというのが正直なところなのですが、この論文のタイトルが「これらのゲノム配列決定がゲノムの機能および構造に関する理解を前進させる」と題しているとおり、犬の遺伝学についての理解が深まり、現在はわかっていない病気の原因や治療方法が発見されるかもしれないと考えると「すごいことだ!」というのはわかります。
プロジェクトに携わっている研究機関の数や規模、さらに研究によって得られたデータが一般公開されていることなど、全てにおいて「すごいことだ!」と感じられます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1186/s13059-023-03023-7
http://www.dog10kgenomes.org/dog10k/index.html