犬への愛着と運動量やライフスタイルとの関連を調査
人間とペット動物の絆は、人と動物両方の健康と幸せに良い影響を与えることは広く知られています。中でも犬は人間に最も身近な動物であり、いっしょに運動する機会も多いことから、飼い主の心身の健康への影響について数多くの研究が発表されています。
ポルトガルのトラス=オス=モンテス・エ・アルト・ドウロ大学の健康科学と獣医学の研究者チームは犬と散歩する飼い主の協力を得て、散歩する犬と人間の運動量、ライフスタイル、犬への愛着はそれらに影響しているのかどうかを調査しました。
この研究は、まだ専門家による査読を受けていない査読前論文です。
犬と飼い主が加速度センサーを身につけて運動量を測定
この研究への参加者は公園などで散歩中の犬の飼い主に声をかけたり、ソーシャルネットワークで告知したりといった方法で募集し、38名の人と彼らの愛犬38頭が参加。参加者の平均年齢は43歳で、犬は2歳以下が13.2%、3歳〜8歳65.8%、9歳以上21%でした。
参加者は、年齢、性別、世帯人数、身長、体重などを含む基本情報の質問票、ライフスタイルに関する質問票、自分自身の健康への知覚についての質問票、犬への愛着を測定するための質問票への回答を求められたといいます。
質問票への回答から、飼い主のBMI(肥満度を示す体格指数)と犬のボディコンディションスコア(犬の体型と触れた状態から肥満度を評価するスコア)が割り出されました。
また参加者と犬は1週間にわたって1日24時間、加速度センターを身につけて運動量を測定することを求められました。
人間は利き腕とは反対の腕に、犬は首輪またはハーネスにセンサーを装着します。加速度センサーとは1秒における速度変化を測定するセンサーで、スマートフォンの歩数計アプリなどにも多く使われています。
飼い主自身の健康や犬への愛着は、犬の健康や運動と関連していた
調査の結果、ほとんどの参加者はBMIが正常範囲で健康意識が高く、生活習慣は「非常に良好」という評価に当てはまることがわかり、また参加者の教育水準が高かったことも特徴的でした。
「喫煙を控える」「健康に対する意識が高い」など、自分自身の健康に対して積極的な行動を取る参加者は、愛犬の健康についても優先度が高く積極的であるという傾向も示されました。
飼い主の年齢、学歴、職業は愛犬の体重管理に関連する因子であることもわかりました。具体的には、飼い主の学歴や雇用のレベルが高いほど、犬のカロリー消費量や運動量に対する関心が高いという相関関係が示されました。
世界保健機関(WHO)が推奨する身体活動の量は、1週間に150〜300分とされています。この調査における加速度センサーによる測定の結果は、参加者の大半が犬との散歩によってこの推奨基準を満たしていたことを示しました。
また飼い主から犬への愛着度が高いほど、飼い主と犬両方の身体活動レベルが高いことも明らかになりました。愛するペットの存在は飼い主をより活動的にし、犬と一緒に散歩や運動をすることを促進するということです。
まとめ
犬の飼い主へのアンケート調査と加速度センサー装着による運動量測定の結果から、より健康的な習慣を持つ人々は、愛犬の健康にもより大きな関心を示す傾向があり、犬への愛着が強い飼い主は、犬と人両方の身体活動レベルが高かったという報告をご紹介しました。
過去の研究では、愛犬の存在が飼い主の運動量や健康に良い影響を与えることに重点が置かれていましたが、この研究では犬と人が双方向でお互いに良い影響を及ぼし合っていることが示されました。
この研究ではサンプル数の少なさなど課題もありますが、飼い主だけでなく犬の健康も含めた視点は、今後の研究に活かされてほしいと思います。
《参考URL》
https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-3169925/v1