現代ではありえない昔の「犬のしつけ方法」
犬のしつけ方法は、動物行動学の研究結果などから日々アップデートされています。10年ほど前には良いとされていた方法も、気が付けば新しい方法が提唱されていたりするため、飼い主さんも勉強を続けていかなくてはいけません。
しかし、かつての日本では、犬のしつけに関する情報のアップデートはそれほど重要視されておらず、今となっては「ありえない方法」でしつけをされていた犬もたくさんいました。
では、当時は常識と認識されていた、現代ではありえない「犬のしつけ方法」とは一体どのようなものだったのでしょうか。
1.体罰でしつける「強制訓練」
今から30年ほど前までは、犬をしつける場合は体罰を用いる方法が一般的でした。これは一般家庭だけでなく、訓練所での訓練も同様です。
体罰を用いたしつけ方法とは、犬が望ましくない行動をとった際に「怒鳴る」「叩く」などといった罰を与える方法です。
例えば、家で犬が何かに吠えた場合、「イケナイ」という声かけをするほかに、大きな声で怒鳴ったり、犬の頭を叩いたりして吠える行動を止めさせようとしていたのです。
散歩をする際も引っ張らないで歩くように、「チョークカラー」という首が締まるタイプやとげがついているタイプの首輪を使っていました。引っ張ったら「痛い・首が苦しい」ことを発生させ、引っ張らないように犬に教えていたのです。
この犬への罰を用いた訓練を「強制訓練」という言い方をする場合もあります。この訓練方法は、熟練のトレーナーであれば適切なタイミングで最小限の痛みを用いてトレーニングをすることが可能です。犬の性格を考慮し、あまりにも危険な行動を止めさせたい場合は今でも用いられることがあります。
しかし一般の飼い主さんでは、適切なタイミングで罰を与えることが難しく、トレーニングの効果は得られないばかりか、犬との信頼関係を損ねてしまう危険があるので、現在ではお勧めされていないのです。
2.「リーダー論」によるしつけ
ひと昔前までは、犬はオオカミを祖先とし群れの秩序を守る動物と考えられていました。そのためオオカミの群れを参考に、家族を群れとして飼い主が群れのリーダーとしてふるまうようにすることが望ましいと言われていました。
しかし現在では、この理論が疑問視されています。
まず、参考にしていたオオカミの群れ自体が、実は厳密な縦社会ではないことが分かってきました。またオオカミは、犬の直接の祖先ではないだけではなく、『家畜化が進んだ犬には、そもそも「群れ」の概念があまり無いのではないか』ともいわれています。
このリーダー論を用いたしつけの場合、食事は人間より後に与えるといったことや、リーダーより高いところに座らせない、リーダーより前を歩かせないというような「リーダーを優先させる」行動を取らせるようにしていました。
また、望まない行動をした犬のマズルを掴んでじっと目を見つめてみたり、体をひっくり返して押さえつけたりといったことも推奨されていました。
こちらは現代でも割と広く利用されている理論なので、一部のトレーナーさんや訓練士さんによっても行われることがあります。上記の体罰と同様に、こちらも適切なタイミングで行えば効果があることもありますが、犬に苦痛を与えたり不安を与えたりする可能性が高いので避けたほうが良いでしょう。
特に、マズルを握ったり仰向けにして押さえつけたりする方法は、犬の性格によっては強烈に反発をしたり、逆に恐怖で委縮してしまって飼い主を嫌いになってしまう可能性があります。
まとめ
今回は、かつては常識とされていた「犬のしつけ方法」の考え方について解説しました。
現在もなお、「犬のしつけ方法」は進化の途中です。動物行動学の研究がさらに進めば、今行われている方法も「間違っている」と言われるかもしれませんし、犬たちの性格によっても適切な方法はそれぞれ異なるでしょう。
いずれにせよ大切なことは、犬との信頼関係を壊さずに、お互いに気持ちよく生活ができるように行動してもらうことです。
ひとつのしつけ方法にこだわらず、飼い主側も勉強を続けて、愛犬の性格や生活スタイルに合った方法を見つけられると良いですね。