C-BARQ質問票を使ってセラピードッグへの適性を判定する研究

C-BARQ質問票を使ってセラピードッグへの適性を判定する研究

セラピードッグになるための適性を判定するのに、C-BARQ質問票が有効なのではないかということを確認するための調査が実施され、その結果が発表されました。

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セラピードッグの適性判定にC-BARQが使えるだろうか?

車椅子の男性にお手をするラブラドール

高齢者施設や学校、病院さらには天災の被災者などに対する動物介在療法は、人々をリラックスさせストレスや心的外傷からの回復を助けるという研究結果が数多く報告されています。

そのためセラピードッグの需要も高まっていると同時に、「うちの愛犬をセラピードッグにしたい」という飼い主さんも増えています。

セラピードッグの候補犬は、トレーニングを始める前に適性テストで評価されるのですが、飼い主さんの中にはこの適性テストでどんなことが要求されるのかを知らずに、受験させる人もいます。

犬の行動を評価する方法のひとつに、C-BARQと呼ばれる質問票に飼い主が記入するというものがあります。日常的なさまざまな状況における愛犬の反応についての質問への回答から、犬の行動特性が評価されます。

日本の酪農学園大学獣医学部の研究チームは、セラピードッグ候補犬が適性テストを受ける前に、飼い主が回答するC-BARQ質問票でセラピードッグの適性を判定できるのではないかと考え、質問票のどの項目がセラピードッグの適正判定に役立つかを検証しました。

現役または引退したセラピードッグの行動特性を調査

学校の教室を訪問しているラブラドール

調査の対象となったのは、「北海道ボランティアドッグの会」が実施するセラピードッグ適正テストに合格し、現在または過去にセラピードッグとして活動していた犬たちです。彼らが様々な状況でどのような行動パターンを示すのかが調査されました。

調査は現役または引退したセラピードッグの飼い主114人が、Eメールを使ってC-BARQ質問票に回答するという形で行われました。

質問の内容は、見知らぬ人に対する攻撃性、飼い主及び家族のメンバーに対する攻撃性、他の犬に対する攻撃性、見知らぬ人に対する恐怖、大きな音や未知の状況に対する恐怖(非社会的恐怖)、他の犬に対する恐怖、飼い主や家族のメンバーとの分離に関する行動、愛着と注目を求める行動、訓練可能性、小動物などに対する追跡性、興奮性、触られることに対する反応、エネルギーレベルの13項目101問に「全く当てはまらない」〜「非常によく当てはまる」の5段階から選択する形式です。

犬の行動の他に犬の生年月日や犬種などの基本情報も収集されました。

セラピードッグに適したC-BARQ項目の因子

セラピー犬のごールデンレトリーバーを撫でる女の子

集計された回答からは、さまざまな犬種と幅広い年齢の犬がセラピードッグとして活動していることがわかりました。最も多かった犬種上位3種は、ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、トイプードルでした。

セラピードッグの55.3%が多頭飼育であり、過去の別の研究で「他の犬と暮らしている経験が多い犬ほど高い落ち着きを示す」と報告されていることを裏付けています。多頭飼育の犬は、動物介在療法に適した気質を持っている可能性が示されたといいます。

C-BARQの回答から示されたセラピードッグに適した因子は次のようなものでした。

  • 訓練性と服従性が高い
  • 家族への愛着を求める行動が低い、または中程度
  • 興奮性が低い
  • 分離不安行動や分離生理反応が低い
  • 人や犬への恐怖や攻撃性が低い
  • 不慣れな状況での恐怖や不安が低い
  • 多動性が低い
  • 縄張りや持ち物を守ろうとする攻撃性が低い

研究者はこれらの要素や、C-BARQ質問表を一般公開(例えば「北海道ボランティアドッグの会」のウェブサイトなど)することで、飼い主が自分の愛犬がセラピードッグに適性があるかどうかを判断することができると考えています。その結果、セラピードッグになる犬が増える可能性があります。

まとめ

ガン患者の女性とセラピー犬のラブラドール

セラピードッグとして活動している犬の行動特性をC-BARQ質問票を使って調査したところ、この質問票のいくつかの項目からわかる因子から、セラピードッグとしての適正がある程度判定できることがわかったという研究結果をご紹介しました。

研究者はこの質問票や因子を公開することで、愛犬がセラピードッグに適していると知る飼い主が増え、セラピードッグ普及に役立つと考えています。

また研究者は言及していませんが、逆の視点から見れば、適性がないのに愛犬をセラピードッグとしてトレーニングしたいという人が減る可能性もあります。

適性がなければ不合格になるのですが、諦めずに何度も挑戦することで犬の福祉を損なうことも少なくありません。そのような意味でもこの研究結果が広く知られてほしいと感じます。

《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani13050834

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