愛犬に遺言を書いて遺産を残すことはできる?
愛犬のために遺言を書くこと自体はできます。しかし、日本の法律上、『遺産は人にのみ譲ることができる』と定められています。
そのため、「愛犬に全財産を譲る」と遺言を書いても、人間に対してと同様に愛犬に遺産を譲ることはできません。
愛犬のためにやっておきたいこと
最期までお世話をすると誓った愛犬に対して、飼い主が生きているうちに愛犬のためにやっておきたいことがあります。
世の中、いつ何が起こるか分かりません。数時間後、自然災害によって、愛犬よりも先に自分が亡くなってしまうかもしれません。
本当に何が起こるか分からないからこそ、いつ別れが訪れるか分からないからこそ、愛犬のために飼い主として何をやっておくべきなのか、ぜひ一緒に考えてみてほしいです。
愛犬のための遺言の書き方を学び、準備しておく
前述した通り、愛犬に遺産を残すことはできません。そのため、「愛犬に全財産を譲る」と書いても、愛犬のためにはなりません。
もしも愛犬のお世話を頼める人がいるのであれば、その人に財産を譲り、そのお金で愛犬のお世話をしてもらうことはできます。
しかしそのためには、「誰に財産を譲るのか」「譲った財産をどのように使うのか」など、贈与契約を交わしておくべきです。口約束だけでは絶対にダメです。財産だけを譲り受け、愛犬のお世話を放棄するようなことがあってはならないからです。
愛犬のお世話を引き受けてもらうという条件を付与した遺言書を残し、遺産の一部をその相手に譲渡することを「負担付遺贈」と言います。
若い人に依頼する
飼い主が亡くなった後の愛犬のお世話を依頼する人は、若い人である方が安心です。
高齢の人ですと若い人より犬の飼育のハードルがあがるため、万が一のことがあった時、また別の人に愛犬が渡されてしまうかもしれないからです。
遺言に書いた通りにお世話を受けることは難しくなるでしょう。財産も愛犬のためには使われないかもしれません。
「遺言執行者」を指定しておく
「遺言執行者」とは、文字通り遺言内容を執行する人のことで、遺言書を作成したらそこに明記しておかなくてはいけません。まさに、「愛犬のお世話を依頼され、財産を受け取った人が、ちゃんと愛犬のお世話の義務を果たしているかどうか」を確認する人を指します。
万が一遺言書によって依頼された義務がきちんと果たされていなかった場合や、注意や勧告を受けても改善されなかった場合には、遺言書によってきめられていた遺産の贈与を無効にすることができます。
公正証書遺言を作成する
遺言書の作成方法はいくつかありますが、可能であれば紛失や改ざんの心配のない「公正証書遺言」を作成することをおすすめします。この遺言書は、原則として公証役場で作成します。
無料相談もできますので、作成前に訪ねてみるとよいと思います。公正証書遺言を作成するために必要な書類なども教えてもらうことができます。
実際に公正証書遺言を作成する時には、2人の証人が立ち会う必要があります。なお、未成年や利害関係人は証人になることができません。
愛犬のための遺言を書くときに注意したいこと
飼い主が亡くなった時、飼い主の兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限遺産相続できる取り分の「遺留分」というものがあります。
愛犬のために残した遺言によってこの遺留分を侵害された場合、法定相続人は、この侵害額を請求することが可能です。請求する相手は、愛犬のお世話を条件に遺産の一部を譲渡された人です。
つまり、快く依頼を受けてくれた人に対して侵害額の請求等のトラブルが起きてしまっては、愛犬のお世話にも悪影響が及んでしまいかねません。
他に法定相続人がいる場合には、最低限遺産相続できる取り分を相続することができるような内容で遺言を書いた方がよいでしょう。
まとめ
法律上、愛犬に遺言を書くことはできても、人間に対してできるように遺産を残すことはできません。
飼い主が亡くなった後の愛犬のお世話を頼める人がいるのであれば、生きているうちに依頼しておいた方がよいでしょう。
愛犬のお世話を依頼する人に財産の一部を遺贈する場合には、必ず愛犬のお世話を条件とすることを忘れないように注意してください。なお、相続税がかかる場合もありますので、見越した額を遺贈するのがおすすめです。