犬が『スキップ』してたら病気の可能性も?可愛いだけの仕草じゃない"危険なサイン"とは

犬が『スキップ』してたら病気の可能性も?可愛いだけの仕草じゃない"危険なサイン"とは

子どもの頃、楽しくてウキウキした気分になると、ついスキップしてしまうことがありませんでしたか。そのため、愛犬がスキップするような歩き方をしていると、「楽しいのかな」と思ってしまいがちです。果たして、犬も楽しいとスキップをするものなのでしょうか。犬のスキップに隠れている心情や危険なサインについて解説します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

愛犬の気持ちや健康状態のチェックにも重要な歩き方

歩く犬

人や動物が歩く姿のことを歩様といいます。歩様には、姿勢や歩幅、足の上げ方や腕の振り方など、さまざまな要素が含まれます。人間の場合、歩様によって個人を特定することも可能で、画像により歩様を解析することで犯人を特定するなど、犯罪捜査にも応用されています。

同じように、犬の歩様にも個性が現れます。と同時に、その時の心情や体調が反映されます。そのため平常時の歩様を把握しておくと、変化が見られたときに愛犬の気持ちの浮き沈みやケガ、病気のサインを読み取り、ストレスや健康管理に活かせるようになります。

今回は、特に目立ちやすい「スキップのような歩き方」をしている場合に着目し、愛犬の心情や体調が発しているサインの意味を解説したいと思います。

一般的な犬の歩き方

犬の歩様

まずは、一般的な犬の歩き方について整理しておきます。

常歩(なみあし:ウォーク)

平常時の歩き方で、4本の足をバラバラに出して歩きます。常に2本以上の足が地面に付いているため体が大きく揺らさずに安定した状態で歩けます。足運びは、左前足→右後ろ足→右前足→左後ろ足のようになります。

速歩(はやあし:トロット)

少し速めの歩き方です。対角状にある前足と後ろ足が同時に設置するため、足運びは左前足+右後ろ足→右前足+左後ろ足のようになります。この歩き方も体を大きく上下に揺らすようなことがなく、安定した状態で歩けます。

駈歩(かけあし:キャンター)

横から見ると頭を上げたり下げたりと、体を上下に揺らしてリズミカルに走る歩様です。足運びは左前足→右前足→左後ろ足→右後ろ足のように1本ずつの足を地面につけますが、前足と後ろ足でタタッタタッといったリズムになります。

襲歩(しゅうほ:ギャロップ)

犬の全力疾走時に見られる歩様です。基本的には駈歩のときと同じ足運びなのですが、両前足が地面を蹴ってから両後ろ足が地面に接地するまでの間は、全身が宙に浮いた状態になります。

犬種固有の歩き方

一般的な歩様から外れている歩き方を不正歩様といい、ケガや病気のサインとなります。しかし、犬種によっては不正歩様がその犬種固有の正常歩様である場合もあります。

ハックニー歩様

馬が歩くときのように前肢の足先を高く上げて歩く歩様です。ミニチュア・ピンシャーやイタリアン・グレーハウンドにとっては正常な歩様で、肩甲骨の角度の浅さや前肢のくるぶしから指の間の部分が直立している体の構造からきています。

ローリング歩様

頭を前に突き出して重心を前半身にかけるため、前足が不安定になります。側面の揺れ(ローリング)が大きくなりエネルギーが無駄に消耗されますが、ブルドッグやペキニーズでは正常な歩様とされています。

側対歩

足運びが左前足+左後ろ足→右前足+右後ろ足のように、片側の前足と後ろ足が同時に地面に付く歩き方です。緊張した人が右足と右腕を同時に前に出すのと同じような状態ですが、オールド・イングリッシュ・シープドッグでは正常な歩様とされています。

犬のスキップに表れている心理や病気のサインとは

犬の膝蓋骨脱臼説明図

スキップとは、片足を2度連続して着地させる歩き方ですので、明らかに不正歩様です。しかし私たち人間は、子どもの頃ワクワクして楽しいときなどに、自然とスキップをしたことがないでしょうか。犬のスキップから読み取るべきサインについて考えてみましょう。

楽しい?

犬も「楽しい」気分のときに、スキップのような走り方をすることがないとはいえません。過去にたまたまそのような走り方をしたら飼い主さんがとても嬉しそうに反応したことを覚えていて、また一緒に楽しみたいと思っているのかもしれません。

ただし、特に気分が高揚した様子でもないのに頻繁にスキップをするようなら、病気やケガが潜んでいる可能性が高いと考えましょう。以下に、代表的な病気を紹介します。

膝蓋骨脱臼

後ろ足の膝の部分には膝蓋骨があり、これが正常な位置からずれてしまった状態を膝蓋骨脱臼といい、特に小型犬によく見られます。状態により4つのグレードに分類されますが、最も初期に見られる症状が、激しい運動をすると後ろ足に出るスキップです。

犬のスキップの大半の原因が膝蓋骨脱臼だともいわれています。自然に治り、再発を繰り返しながら進行していくことが多いので、繰り返すようならすぐに動物病院で診てもらいましょう。

股関節形成不全

股関節に異常が見られる場合にも、後ろ足にスキップのような動きが出ます。股関節に異常が出る代表的な病気に、股関節形成不全があります。これは大型犬で起こることがある病気です。スキップの他にも、ウサギ跳びのような走り方、お尻を振りながら歩くモンローウォーク、股関節を広げて後ろ足を横に崩して座るといった症状が見られます。

その他

捻挫や骨折、神経系の病気、肉球のケガなどが原因でスキップをすることもあります。気分が高揚しているわけでもないのに繰り返しスキップする様子を目にするようであれば、できるだけ早く動物病院で診てもらいましょう。

まとめ

速歩の犬

人と同様に犬にも歩き方に個性が出ますので、一概に「これは不正歩様だ」と心配をする必要はないかもしれません。しかし犬の一般的な歩き方を知っておき、その上で普段の愛犬の歩様を把握しておくことで、愛犬の気持ちを理解したり、ケガや病気の前兆や初期症状に気付くことができます。

そのためにも、普段愛犬が歩いたり走ったりしている姿を動画に撮影しておくことをおすすめします。違和感を感じたときにすぐに比較でき、動物病院での説明にも役立ちます。

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