家庭犬と研究室の犬、同じものを食べた時の腸内細菌叢の違いを調査

家庭犬と研究室の犬、同じものを食べた時の腸内細菌叢の違いを調査

家庭で暮らす犬と研究室で飼育されている犬、同じものを食べた場合に腸内細菌叢に違いが出るのだろうかという調査結果をご紹介します。

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生活環境が犬の腸内環境に与える影響を調査

ボウルのフードを食べるビーグル

犬も含めて多くの動物において、腸内細菌叢は健康を保つために大きな役割を果たしています。

犬の腸内環境を調査するための研究は数多く行われていますが、そのほとんどは厳密に管理された環境で暮らす実験犬が対象となっています。そのため、これらの研究結果が家庭で暮らしている犬にも当てはまるかどうか不明なところがあります。

生活環境が腸内細菌叢に与える影響を調査するための研究が、アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、フロリダ大学、ペットーフードメーカーのノムノムナウ社の研究チームによって行われ、その結果が発表されました。

一般家庭、民間犬舎、研究室のビーグルで比較

ソファーに座っているビーグル

比較調査に参加したのはすべてビーグル犬で、一般家庭で飼われている犬54頭、カナダの民間犬舎で飼われている犬39頭、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究室で飼われている犬34頭でした。

一般家庭の犬は全員が健康で、1ヵ月以内に抗生物質、抗寄生虫薬、抗真菌薬、プロバイオティクスを摂取していない犬たちです。

54頭のうち29頭にはノムノムナウ社製のチキンベース手作りタイプフードが、25頭にはドライフードが少なくとも7日間与えられました。

カナダの犬舎の犬は、暖房の効いた清潔なコンクリート犬舎で毛布、ベッド、おもちゃを与えられています。1日1回は屋外のドッグランで遊び、最低週2回は芝生のドッグパークに出かけます。

犬たちは全員が健康で投薬やサプリメントは使用していません。39頭のうち19頭にはノムノムナウ社のチキンベース手作りタイプフード、20頭にはドライフードが10日間与えられました。

イリノイ大学研究室の犬は個別の飼育ペンで暮らしており、常におもちゃを与えられています。少なくとも週に2回は新しいおもちゃやエンリッチメントが与えられ、人間や他の犬と遊ぶ時間も設けられています。

34頭中15頭はノムノムナウ社のチキンベース手作りタイプフードを12日間、19頭にはドライフードが10日間与えられました。

全ての犬は給餌期間終了後に糞便サンプルが採取され、これらのサンプルはDNA抽出が行われ、含まれる細菌の種類が分析されました。

犬の腸内細菌叢の研究には家庭のペットも含める必要がある

犬舎の中のビーグル

糞便サンプルのDNA分析の結果は、3つの環境で細菌の分布も多様性も大きく異なっていました。最も多く存在した細菌の門は、家庭のペットではプロテオバクテリア門、民間犬舎ではファーミキューテスA門、イリノイ大学ではアクチノバクテリア門でした。

ノムノムナウ社のフードを食べた犬では、家庭のペットとイリノイ大学のグループはプロテオバクテリア門が最も多かったが、民間犬舎ではこの細菌は非常に少なくファーミキューテスA門が最多でした。

ドライフードを食べた犬ではペットと民間犬舎でファーミキューテス門が最も多く、イリノイ大学では放線菌門が最多でした。

細菌の多様性では、家庭のペットは多種多様な微生物源や食べ物、環境化合物にさらされているため多様性が高いと予想されましたが、意外なことにイリノイ大学の研究室の犬の方が顕著に高いという結果でした。

これはどちらのタイプの食事でも同じでした。これは研究室の犬は、実験のために様々な種類の試験食やサプリメントに日常的にさらされていたためと考えられます。

これらの結果は、犬の腸内細菌叢や食事が犬の健康に及ぼす影響を調べる研究では、さまざまな生活環境の犬を含める必要があることを示しています。研究室の犬による実験だけでは、一般的に飼育されている犬にも同様の結果が出ない可能性があるからです。

まとめ

床に伏せているビーグル

家庭、民間犬舎、研究室という全く違う環境で暮らすビーグルに同じ食事を与えて腸内細菌叢を比べたところ、細菌の分布も多様性も全く違っていたという結果をご紹介しました。

この結果は腸内の微生物の組成において生活環境は重要な因子であることを示しています。私たち人間も自分の腸内環境のために覚えておきたい点です。

《参考URL》
https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-3167499/v1

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