「犬が飼い主に似る」のは本当?その根拠とは
「犬が飼い主に似る」という言葉は、決して迷信や希望ではありません。実際に犬と飼い主の間に生まれる影響について、様々な研究や実験がおこなわれていて、その言葉の根拠が提示されています。
まず、2004年にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校の心理学者クリステンフェルド教授らが出した論文では、犬と飼い主の顔写真を用いて、正しいペアを組み合わせる研究がおこなわれたと発表されました。
45組の犬と飼い主の顔写真を正しい組み合わせにするテストを学生相手におこなった研究で、偶然以上に正解を出すことができたとされています。ただし、これは純血種の犬種に限った話で、雑種の犬の場合は同じような結果が得られませんでした。
また、同様の研究は、ベネズエラのシモン・ボリバル大学のジャッフェ教授らのチームでもおこなわれています。
さらに、日本でも関西学院大学の心理学者である中島定彦教授が、2009年に犬と飼い主のペアをつくる実験をおこなっています。この実験では、それぞれの目元や口元を隠した画像を使うことで、顔のどのパーツが似てくるのかということを調べました。
その結果、目元を隠した写真では、偶然程度の一致度での正解しか得られず、「犬と飼い主は目つきが似る」という結論が出されました。
顔だけでなく、犬と飼い主は性格にも類似点が見られるようになります。犬の性格形成は、生まれ持った性格や遺伝と同じくらい、成長段階での経験や環境も重要な要素だと考えられています。
アメリカ・ミシガン州立大学の社会心理学者のウィリアム・J・チョピク氏は、1681頭の犬の飼い主にアンケートを取り、性格の類似点が存在していることを明らかにしました。
そのほかにも、ドイツ・フリードリヒ・シラー大学イェーナ一般心理・認知神経科学科に所属するヤナ・ベンダー氏らの研究チームでは、犬が飼い主の性格に追従することがあるということを明示しています。
犬が飼い主に似てくる理由
では、犬が飼い主に似る具体的な理由にはどのようなことが該当するのでしょうか。
飼い主との生活が性格形成に影響する
犬の性格は、様々な要素によってつくり上げられています。犬種特有の気質や本能、生まれつきの性格や個性のほか、成長するなかで得た経験や体験も重要なポイントとなります。
特に、一緒に生活をする飼い主との生活からは大きな影響を受けるため、飼い主の生活スタイルや思考、行動力などが犬の性格をつくる上で多大に関係してくると考えられます。
性格や気質が表情にあらわれる
犬と飼い主の性格が似てくるのは、様々な経験を一緒にすることが要因だと考えられています。さらに、犬と飼い主の顔が似てくるのは、性格や気質に基づいてつくられる目つきや表情が似るためだとされています。
また、犬は飼い主の感情を読み取ったり、共感したりする能力があり、同じ状況で似たような感情となり、結果的にシーンに応じた表情も似るということが起こるようです。
食生活や運動への意識で体質が似ることも
犬と飼い主は性格や顔だけでなく、体格や体質も似ることがあります。これは、飼い主の食生活や運動、健康に対する意識が、犬の生活にも多大な影響を与えるためです。
具体的には、肥満気味の人が飼っている犬は太っていたり、スポーツが好きな人が飼っている犬はスリムで筋肉質だったり、というようなことがあります。これらが影響して、負担がかかる体の部位や内臓器も似てくることがあるようです。
飼い主が自分の性格に似た犬を選んでいる
犬と飼い主の顔や性格が似る要因として、「元々似た犬を選んで飼っている」ということもあります。
見慣れたものに好感を持つ「単純接触効果」によって、似た顔つきの犬を選んだり、自分の求めるドッグライフや自信の生活スタイルに合う犬を無意識に選んだりしていることがあるのです。
犬と最高のパートナーとなる条件とは
たとえ犬と飼い主が似ていたとしても、必ずしも最高のパートナーになれるとは限りません。似ているがゆえにぶつかってしまうことは人間同士でもよくありますよね。
そこでここでは、性格のどのような面が似ているかで分けて解説したいと思います。
ポジティブな性格が似ている場合
犬と飼い主の関係性に関する研究の結果、『それぞれのポジティブな性格特性が類似しているほど、強い絆で結ばれている』ということがわかっています。
そのため、犬を飼う前には「前向き」「意欲的」「穏やか」「楽天的」「冷静」など、ポジティブな部分の気質が似ている犬を選ぶとよい関係性を築けると思います。
一緒に生活をはじめてからも、似た部分を尊重していくことを心がけましょう。
ネガティブな性格が似ている場合
犬と飼い主の性格がネガティブな部分で似ている場合、生活に悪影響を及ぼしてしまうことがあります。「心配性」「不安感が強い」「攻撃的」などの部分が似ていると、お互いがそれに影響されて、さらに増大されて分離不安や喧嘩などのトラブルを招くリスクが高まるのです。
心配症であっても犬にそれが伝わりすぎないように、大らかで明るい態度で接することを心がけるなどするといいでしょう。
まとめ
犬の生活は、飼い主がすべて握っているといっても過言ではなく、食生活や運動能力、経験などは飼い主次第で大きく変わってきます。そのようなことが影響して、犬と飼い主は顔や性格、体格、体質までもが似てくることがあります。
性格が似ているからこそより楽しいドッグライフが過ごせる場合もあれば、反対にトラブルが続いてしまうこともあります。また、飼い主の健康への意識が希薄なことで、犬の病気や怪我を招くこともあるでしょう。
自分に似ている部分を見つけると、一層愛おしさを感じるものだと思いますが、似ていても似ていなくても「何が愛犬にとって最適の環境か」ということを考えながら深い愛情を持って接していくようにしましょう。