「歩き方」別で見られる犬の心理
犬の気持ちを読み取るために重要なのは、犬の言葉を理解することです。
「言葉」といっても犬の場合は言語ではなく、「ボディランゲージ」のことを差します。そのため、世の中には「犬語辞典」のような意味合いで、犬のボディランゲージを解説した書籍がたくさん出版されています。
犬のボディランゲージを理解するために着目すべき点はいろいろありますが、「歩き方」からも犬の気持ちを読み取ることができます。また犬の歩き方には、気持ちだけではなく、その犬の体調なども表れています。
そこで今回は、「歩き方」別で見られる犬の心理について解説したいと思います。
1.弾むような足取りで歩く
全身に余計な力が入っていないリラックスした状態で、お尻をふりふりしながら尻尾を大きく振り、弾むような足取りで歩いている場合は、「楽しい、嬉しい」というハッピーな気分のときです。
2.相手と距離を取りカーブを描くように近づく
正面からまっすぐグイグイと近づかずに、カーブを描くように相手の横の方から近づいていく場合は、相手に対して敵意がないことを示しています。
目や耳は柔らかな表情で、体にも余計な力は入っていません。相手も受け入れてくれると、鼻をくっつけあって挨拶をします。
3.体重が4本の足に均等にかかり、リラックスして歩く
柔らかい表情を浮かべ体にも余計な力が入っておらず、4本の足に均等に体重をかけてゆったりと歩いているときは、のんびりと気楽に散歩を楽しんでいます。
耳がクルクルといろいろな方向に動くのは、特定の音に警戒することなく様々な音を楽しんでいるサインです。
4.耳を下げ気味に近づく
耳を軽く下げ、柔らかい目をしながら近づいてくるときは、親しみの感情を表しています。目の表情と、耳が下がっていても頭に張り付いてはいない、という点がポイントです。
帰宅した飼い主さんを出迎えるときなどに見せる歩き方です。
5.忍び寄るように前進する
全身を深く沈めて低い姿勢のまま、慎重な足取りでジリジリと前進しているときは、ハンターの気分で標的に集中しています。特に頭と胸が低く下げられ、耳と目は標的に向けられて固定し、口も固く閉じられています。
標的の動きによっては突然走り出すこともあります。ただし、本気の狩りではなく遊びの場合もあります。
6.前のめりながらも腰が引けている
体は前のめりなのに腰が引けているような状態で歩いているときは、用心をしながらも興味のあるものに惹かれているときです。
首は前に伸び、耳や頭を下げながらしきりにニオイを嗅ぎ、いざというときにはいつでも逃げ出せるようにしています。
7.息が荒くリードをグイグイと引っ張るように突進する
息を荒げながら必死に前に行こうとグイグイ引っ張って突進しているときは、軽いパニック状態かもしれません。耳が後ろに倒れ、眉毛にシワがより、緊迫した表情をしています。
興奮して尻尾を振りながら飛びつこうとする場合もあり、喜んでいるように見えることもあります。
実際はイライラしたり逃げ出したい気分だったり、不安でたまらなかったりしているため、落ち着かせることが大切です。
8.突然勢いよく狂ったように走り回る
背中を丸めてしっぽをたたみ、突然勢いよく狂ったように走り回るときは、溜まっていたエネルギーが爆発してストレスを発散している最中です。
長い拘束状態や緊張状態から解放されたときに見られます。
9.落ち着きなくウロウロと行ったり来たりする
耳を後ろに倒し、尻尾を下げ、肉球に汗をかき、ハァハァとヨダレを垂らしながら落ち着きなくウロウロと行ったり来たりしているときは、とても強い不安や恐怖を感じています。そのため、身も心も休められないのです。
10.いつもと足の出し方が異なる
犬は「斜対歩」といって、左右の対角線上の足を交互に出して歩くのが普通です。「右前足→左後ろ足→左前足→右後ろ足」という感じです。
それが、「側対歩」という同じ側の前足と後ろ足を同時に出すような歩き方に変わることがあります。これは、緊張やストレス状態のときや疲れているときに見られることのある歩き方です。
犬の「歩き方」に表れるケガや病気のサイン
犬の一般的な歩き方には、常歩(なみあし)、側対歩(そくたいほ)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)、襲歩(しゅうほ)という種類があります。しかしその子の癖で、一般的な歩き方をしない犬もいます。そのため、一般的な歩き方以外は異常であると決めつけることはできません。
そこで、飼い主さんは普段から愛犬の歩き方をよく観察し、把握しておきましょう。愛犬の歩き方がいつもとは異なる場合、そこにはケガや病気が隠れている可能性があります。
犬の歩き方に影響が出る病気やケガには、「ヘルニア」「感染症」「低血糖」「腫瘍」「脳や神経系の病気」「目や耳の病気」「ホルモンの病気」「泌尿器系の病気」などのようにたくさんの骨、関節、筋肉のケガや病気が該当します。
愛犬の歩き方に違和感を感じた際に、特に下記のような様子が見られる場合はケガや病気のサインとして注意が必要です。
- ふらつく
- 真っすぐ歩けない
- 足運びが不自然
- 特定の足だけ着地時間が短い、または引きずる
- 足がガクッと崩れるようになる
- 必要以上に足を高く上げる 等
このような症状が愛犬に見られた場合は、できるだけ早く診察を受けることを強くおすすめします。
まとめ
愛犬との散歩は、愛犬と飼い主さんが共に同じ体験をして過ごせる、とても大切で楽しい時間です。その際、愛犬の歩き方から気持ちや体調を読み取ることができれば、散歩の時間がより有意義なものとなることでしょう。
そのためにも、普段から愛犬をよく観察し、歩き方を把握しておきましょう。とくに、愛犬が健康なときに歩いている様子を、スマホなどで録画しておくことをおすすめします。
万が一愛犬の歩き方に違和感を感じたときに比較して確認する場合にも使えますし、違和感を感じたおかしな歩き方の録画と一緒に獣医師に見せることで、診察にも役立ちます。