犬の肥満や糖尿病予防に期待される低GI食材
家庭犬の肥満は世界の多くの国で着実に増加しており、欧米諸国では50%を超えているとも言われています。太り過ぎは関節への負担や糖尿病などの疾患にもつながり、犬と飼い主の両方の生活の質を低下させてしまいます。
このような現状を反映するように、市販のドッグフードの原材料では『低GI』をうたったものが多くあります。
低GIのGIとは、食後の血糖値の上昇を示す指標Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の頭文字を取って略したものです。ブドウ糖によって血糖値が上昇する速度を100として、60以下であれば低GI食品であることを意味します。
食事によって上昇した血糖値は、すい臓から分泌されるインスリンによって細胞に取り込まれますが、低GIの食品は糖質の吸収がゆっくりであるためインスリンの分泌も穏やかになり、肥満予防や代謝の健康を改善することがわかっています。そのためドッグフードに適した低GI食材のニーズが高まっています。
このたびドイツの食品会社BENEOが、天然の糖類であるイソマルツロースがドッグフードに適しているかどうかの研究結果を発表しました。
犬におけるイソマルツロースの血糖値やインスリン反応を調査
イソマルツロースは蜂蜜に微量に含まれている天然の糖類ですが、一般に利用されているのはてんさい糖(てんさい大根=シュガービートから作る砂糖)を発酵処理したものです。
人間では消化吸収が遅いため低GI値であることに加え、脂肪のエネルギー利用率が高まるという作用がわかっています。
9頭の犬を3つのグループに分けて、イソマルツロース、スクロース(砂糖の主成分、ブドウ糖と果糖で構成される)、マルトデキストリン(デンプンを加水分解して作られる糖質)のどれかを1回投与しました。
投与後0〜180分の血糖値とインスリン反応を測定した結果、イソマルツロースを投与した犬の血糖値とインスリン反応は、他の2種に比べて有意に低いものでした。
次に18頭の犬に対して、イソマルツロースとスクロースを半々に混合したものを体重1kgあたり1gを2週間毎日与え、その後、犬たちを3つのグループに分けてイソマルツロース、スクロース、マルトデキストリンのどれかを1回投与。
その後、犬の血糖値とインスリン反応を測定したところ、イソマルツロースを2週間にわたって摂取し続けた場合でも、血糖値とインスリン反応は他の2種に比べて低いことが確認されました。
ドッグフードに使用する食材として有望なイソマルツロース
イソマルツロースが血糖値を上昇させにくいという特性は、ヒト、ブタ、げっ歯類を含む動物種で示されていましたが、この調査によって犬でも確認されました。
このことからイソマルツロースはドッグフードのエネルギー源として適しており、安定した血糖値反応に役立つ低GI食材として利用できる可能性があります。
過去の研究では飼い主の約8割の人々は「血糖値への影響が少ない」「体重を自然にコントロール」といった情報がペットフードの購入に影響すると答えているので、イソマルツロースはドッグフードに配合される食材として有望だと言えるでしょう。
まとめ
イソマルツロースという低GIの糖類は、人間と同様に犬においても血糖値を上昇させにくく、肥満防止などの効果が期待できるという研究結果をご紹介しました。
近い将来にドッグフードの原材料一覧にイソマルツロースの名前を見ることがあるかもしれませんね。