5歳未満の子どもは犬の表情を誤解する可能性が高いという研究結果

5歳未満の子どもは犬の表情を誤解する可能性が高いという研究結果

子どもは犬の表情を見て「怒っている」「ハッピー」などを理解できるのか、できるとすれば何歳くらいからが目安になるのか。咬傷事故防止に重要なこれらのことを調査した研究結果をご紹介します。

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子どもは犬の表情をどの程度読み取れるのだろう?

仔犬と戯れる子ども

犬が人を咬んでしまう咬傷事故で、最も被害に遭いやすく大きなダメージを負いやすいのは5歳以下の子どもたちです。犬による咬傷事故を防ぐためには、この年齢層への対応がとても重要です。

適切な対応策を立てるためには、幼い子どもが犬の表情から犬の感情をどの程度読み取れるのか、年齢による違いはどのくらい影響するのかを把握する必要があります。

このたびフィンランドのユヴァスキュラ大学とオーストリアのウィーン大学の研究チームによって、大人と子どもを対象にした犬の表情を読み取る能力の調査実験が行われ、その結果が発表されました。

大人と子どもが犬と人間の表情画像を見て質問に回答

舌を見せて笑うコーギー

調査のための実験に参加したのは、34名の成人(25〜46歳、平均年齢36.9歳)28名の4歳児(平均年齢4.5歳)31名の6歳児(平均年齢6.3歳)でした。

大人も子どもも、犬と人間の顔の48枚の画像を見て、その表情が表す感情や興奮の度合いを答えるという内容です。

人間の顔の画像は、参加者にとって見知らぬ人のもので男女半々で構成されていました。犬の画像は経験豊富なドッグトレーナーによって、それぞれの感情を表すものが選ばれました。

人間の表情の種類は次の通りでした。

  • 歯を見せて微笑んでいる幸福な顔
  • 口を開けて歯が見えている攻撃的な顔
  • 口を閉じて無表情な中立的な顔

犬の表情の種類は次のようなものでした。

  • リラックスし、口が開いて舌が見える幸福な顔
  • 歯が見えている攻撃的な顔
  • 口を閉じて無表情な中立的な顔

1つの画像について8問の質問が設定されていました。

  • 表情についての印象を「非常にポジティブ」〜「非常にネガティブ」の7段階のどれかから選んでください
  • 表情についての印象を「リラックスしている」〜「非常に興奮している」の7段階のどれかから選んでください
  • この表情は「怒っている」「ハッピー」「中立」のうちどの気分を表していますか
  • この表情にはどの程度の怒り(攻撃)が含まれているかを「全くない」〜「非常にある」の7段階のどれかから選んでください

最後の質問の「怒り(攻撃)」の部分は他に、悲しみ、驚き、嫌悪、恐怖が設定されていました。

大人はスクリーンの画像を見ながらキーボードで回答しますが、子どもには7段階を示すわかりやすいイラストが付けられ、そのうちのどれかを選ぶ方法が取られました。

4歳児は攻撃的な犬の表情をポジティブなものと捉えてしまう傾向

攻撃的な表情のチワワ

参加者の回答を分析した結果、攻撃的な犬の表情については、大人と6歳児はほぼ同レベルで認識しており、どちらの年齢グループも4歳児よりも正確に認識していました。

4歳児のグループでは、攻撃的な犬の表情をポジティブなものとして捉え、あまり興奮していないという認識が見られたそうです。

6歳児では攻撃的な犬の顔にネガティブな印象を持ち、とても興奮しているという評価が多くなりましたが、ただし6歳児のグループも攻撃的な犬の表情をポジティブに感じるという回答は、大人よりも少し多くなっていました。

犬のハッピーな表情の認識はどの年齢層にも差は見られませんでした。これらの結果は、幸せな感情は攻撃的または中立的な感情よりも早い時期から高い精度で確認されることを示しており、過去の他の研究とも一致しています。

年齢とは別に、犬と暮らしたことがあるかどうかの経験も、犬の表情への認識に違いをもたらしていました。犬と暮らした経験のない人は、どの年齢層でも攻撃的な犬の表情をポジティブに捉える傾向がありました。

犬と暮らしたことがある人は、どの年齢層でも画像の表情に対してほぼ同じような評価、つまり攻撃的な表情には「怒っている」「ネガティブ」「興奮している」といった正しい認識を示しました。

これらの結果は、犬の感情、特に攻撃性を認識する能力は年齢や経験とともに向上する可能性を示しており、子どもと犬のふれあいを安全で質の高いものにするための取り組みに役立つと考えられます。

なお人間の表情の読み取りについては、4歳児と6歳児のグループは同レベルでよく理解しており、攻撃的な人間については大人よりも正しく評価しました。

これは大人が画像の俳優の表情を「演技だ」と感じていたからという可能性、異種の生き物よりも同種への評価が甘くなる可能性が考えられます。

まとめ

子犬を抱いている男の子

成人、6歳児、4歳児が犬の表情の画像を見て感情などを回答する実験から、4歳児は犬の攻撃的な表情をポジティブなものと誤って評価する割合が高かったという結果をご紹介しました。

過去の研究でも、幼い子どもは犬が歯を剥き出した表情を笑顔だと認識してしまう傾向が確認されています。4歳くらいの子どもは犬の攻撃的な表情をポジティブに捉えてしまい、犬の顔を覗きこむといった行動が咬傷事故につながりやすく、そのような事故は手足を咬まれるよりも重い怪我になる可能性が高くなります。

犬と子どもがいっしょにいる時、周囲の大人は子供が犬の表情を誤って認識する可能性があることを知っておく必要があります。そしてもちろん、大人は常に監督者として注意深く見ていることが重要です。

《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0288137

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