保護犬は前の飼い主のことを忘れられるのか?
さまざまな事情で飼い主から手放された保護犬たち。なかには暴力やネグレクトなど、前の飼い主から酷い扱いを受けていた犬もいます。辛い過去を持つ保護犬の里親になった方なら「前の飼い主のことは忘れさせてあげたい」「辛い記憶は消してあげたい」と思うことがあるのではないでしょうか。
しかし、犬は記憶力が良い動物ですので、前の飼い主のことを完全に忘れることは難しいでしょう。全く犬の世話をしないひどい飼い主だったとしても、一定期間を共に暮らした人間は犬の中で長期記憶としてインプットされているはずです。
とはいえ、犬は里親さんの元で新しい生活がスタートすれば、前の飼い主のことを思い出すことはほとんどありません。思い出すとしたら、前の飼い主に似た人を見かけたり、昔住んでいた場所の近くに行くなど、前の飼い主に関連するものに接した時くらいです。
犬の記憶は上書きされやすいともいわれているので、楽しい経験をたくさんしていれば次第に前の飼い主の記憶は薄らいでいくことでしょう。
辛い経験を良い経験で上書きするためにできること
保護犬の里親になったら、愛犬が持つ「前の飼い主の記憶」を上書きできるように努めましょう。
犬の記憶を上書きするためには、次のことを意識してください。
1.辛い記憶が蘇らないように配慮する
犬は前の飼い主に関連したものを見ると記憶が蘇ってしまいます。虐待などのトラウマを持つ保護犬の場合は、特に配慮が必要です。
たとえば、丸めた新聞紙で叩かれていた過去がある犬には新聞紙や棒状の物は見せない。男性に恐怖心を持つ犬の世話は女性が行い、男性は時間をかけて仲良くなるようにするなど。
辛い記憶を思い出すキッカケはできるだけ減らすように配慮してあげましょう。
2.とにかく愛情を持って接する
保護犬の多くは人間に不信感や恐怖心を持っています。
最初は人間に触られることすら拒否したり、クレートの中から一歩も出てこないなんて子も少なくありません。噛みつくなど攻撃的な行動を取る犬もいるでしょう。
そんな時に叱ったり、懐かせようと無理やり触れ合うのは絶対にNGです。保護犬にはしつけをする前に、まず人間を信頼してもらえるように愛情たっぷりに接してください。
クレートの中から出てこなくても焦らず見守り、犬のペースに合わせて少しずつ関係を作っていきましょう。「人間は怖い存在」から「人間は優しい」と犬のなかで上書きしてもらえるように意識してください。
3.色々な経験をさせる
保護犬が新しい家に慣れてきたら、今まで体験していないような新しい経験をさせてあげましょう。
ドッグカフェや公園へ一緒にお出かけをしたり、芸を教えたり、犬友達を作ったり。刺激的な毎日を過ごしていれば、前の飼い主との記憶はきっと薄らいでいくはずです。
ただし、知らない場所や他の犬が苦手という保護犬もいますので、様子を見ながら無理のない範囲でチャレンジしてみてください。
まとめ
保護犬が前の飼い主のことを完全に忘れることは、おそらくありません。ふとしたキッカケで思い出すことはあるでしょう。
しかし、新しい家族が愛情を持って接し、楽しい経験を色々させることで犬の心は少しずつ癒されていくはずです。里親さんのことが大好きになれば、前の飼い主のことを考えることはほとんど無くなることでしょう。
もし保護犬を迎えられる方は、犬のペースに合わせてゆっくり焦らずに接してあげることを心がけてくださいね。