犬にとってのおもちゃとは
人間の脳と犬の脳の構造は、基本的にはよく似ています。しかし、大脳新皮質という部位の大きさに大きな違いがみられます。大脳新皮質とは、言語機能や論理的な思考などを行う際に使われる部位で、犬は人間と比べるとかなり小さいのです。
そのため人と比べると、犬は論理的な思考に基づいた行動をするよりも、本能的な感情に基づいた行動の方が得意だと考えられています。遊び方にもこの違いが表れていて、犬の遊びの根幹となっているのは、生きるために欠かせない「狩猟本能」だと考えられています。
つまりおもちゃは、犬にとっては「獲物」の代替え品なのです。おもちゃを獲物に見立てることで、追いかけたり、咬み付いたり、咬み付いたまま首を激しく振ってとどめを刺したり、食いちぎったりして狩猟欲求を満たし、満足するのです。
とはいえ、獲物にもいろいろあり、狩りのシーンもさまざまです。愛犬がどのような狩りを好むのかによって、おもちゃの好みも変わってくるでしょう。そのため、せっかく買ったのに気に入られず、お蔵入りしたおもちゃが多いという飼い主さんもおられるのではないでしょうか。
そこで今回は、あまり好きではないおもちゃによく見せる犬の反応や、犬のおもちゃの好みを理解するための方法をご紹介します。
犬が「好きじゃないおもちゃ」に見せがちな反応や行動
では、犬が「好きじゃないおもちゃ」にみせがちな反応や行動には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
1.遊びに誘ってものってこない
大好きなおもちゃを見せて遊びに誘うと、大抵の犬は喜んで遊びの誘いにのってきます。しかし、見せたおもちゃがあまり好きではなかった場合、愛犬はあまり興味を示しません。鼻を短く「ふんっ」と鳴らしてそっぽを向いてしまうこともあるでしょう。
このような強くて短い鼻息やため息には、不満の気持ちが表れています。また、飼い主さんの誘いなので一応近づいてはくるものの、動作が緩慢で目の生気も弱いため、乗り気ではないことがすぐに分かるでしょう。
2.無視する
新しいおもちゃを見せると、新しもの好きの犬はまず確認しようとします。近づいてきてニオイを嗅いだり、舐めたり噛んだりします。
その後そのまま放置してしまい、まるでそこにおもちゃがないように振る舞ったり、見向きもせずに立ち去ったりする場合は、あまり気に入らなかったのだと判断できます。
3.震え出す
ごく稀に、特定のおもちゃを見せると、震えだしたりあくびをしたりする犬がいます。
震えだすのは恐怖心からです。また、この場合のあくびは「カーミングシグナル」といって、ストレスを受けている自分を落ち着けようとして出ている行動です。これらの反応は、過去にトラウマとなる程の嫌な経験をし、おもちゃが引き金となってそれがフラッシュバックしたものと考えられます。
このような場合、そのおもちゃに似ているものはフラッシュバックの引き金になりかねませんので、選ばない方が良いでしょう。
犬の好みを理解するための方法
では、上記のような反応や行動をされないために、愛犬の好みを理解するための方法について解説いたします。
遊び方を教える
犬があるおもちゃに対して興味を示さない、好きではないという理由の中には、『そのおもちゃの遊び方を知らないために、楽しさも理解できていないから』という場合があります。
そのため、愛犬に新しいおもちゃを買ってきた場合は、ただ渡すだけではなく、一緒に遊びながら使い方を教えてあげることが大切です。
おもちゃの遊び方が分かった上で興味を示さないようであれば、そのおもちゃのことを本当に好きではないのだと考えてよいでしょう。
いろいろなタイプのおもちゃを試してみる
おもちゃには、ボール、ロープ、ぬいぐるみ、知育玩具などいろいろなタイプがあります。それぞれのタイプ毎に、さらに音が鳴る・鳴らない、素材が硬い・柔らかい、サイズが大きい・小さいなどがあり、バラエティに富んでいます。
最初はいろいろなタイプのおもちゃを試しながら愛犬の好みのタイプを絞り込んでいき、徐々に細かく探りを入れていくと、愛犬が本当に気に入ってくれる逸品にたどり着けるでしょう。
レベルを合わせる
人間の子どもと同じように、犬も成長することで体のサイズが大きくなり、知能も発達していきます。そのため、お気に入りのおもちゃは成長段階で変わっていくのが普通です。
愛犬の成長に合わせて、おもちゃのサイズや硬さを変えたり、知能の発達に合わせたレベルの難易度に変えたりしながら、常にその時点におけるお気に入りを見つけてあげる努力を続ける必要があるでしょう。
まとめ
愛犬のお気に入りのおもちゃが分かったからといって、いつも同じおもちゃでばかり遊んでいれば、愛犬もそのおもちゃに飽きてしまいます。
ある程度愛犬の好みを把握できたら、好みの範囲で異なるタイプのお気に入りをいくつか用意しておき、ローテーションをしながら遊ばせましょう。そうすることで、飽きさせずにお気に入りのおもちゃで長く遊ばせることができます。
また、遊び終わったおもちゃは犬の手が届かない場所にしっかりとしまい、ダラダラと遊ばせないことも、おもちゃを長く楽しんでもらう秘訣です。