犬の気質を検査する統一テストを行なっている協会
アメリカにはAmerican Temperament Test Societyという全米規模の非営利団体があります。この名前を日本語にするとアメリカ気質検査協会(以下、略称ATTS)となります。
何の気質を検査する協会なのかが名前に含まれないのでわかりにくいのですが、これは純血種および混血の犬の、気質評価を統一的に行うことを目的とした協会です。
全ての犬種を対象とした全国的に統一したテストによって犬の気質を評価します。テストは日常生活で公園や住宅地を散歩するというシミュレーションのもと、散歩中に視覚、聴覚、触覚への刺激が与えられます。
この刺激とは、犬にとっての見知らぬ人がハンドラーに近づき握手と会話をする、犬にとっての見知らぬ人が楽しそうに近づき犬に友好的に接する、離れた場所で石の入ったバケツをガラガラと鳴らす、犬とハンドラーから1.5mほど離れた場所で傘を開く、異質な床材の上を歩く、離れた場所から見知らぬ犬が吠えるなどです。
犬は刺激が中立的なのか友好的なのか驚異的なのかを区別する必要があります。
犬はハンドラーと共にオンリードで歩き、刺激に対する反応が3人の審査員によって評価されます。パニックを起こしたり、強い回避行動を取ったり、強い攻撃性を示した場合には不合格となります。
このATTSは犬種別の成績を発表しており、その中の「ピットブルテリア」の数字が注目を集めています。
ピットブルの気質検査の合格率は?
犬の気質テストの全犬種の平均合格率は83.4%。ATTSでは870頭のピットブルテリアがテストを受けており、そのうち合格したのは755頭で、合格率は86.8%でした。ピットブルテリアの合格率は平均よりも高い結果を示しています。
ピットブルテリアは一般的に「凶暴な犬」という印象を持たれがちな犬種です。しかし気質検査のテスト結果は上記のとおり、イメージに相反するものとなっています。
さらに同協会のゴールデンレトリーバーのテスト結果を見てみると、テストを受けた785頭のゴールデンレトリーバーのうち、合格したのは669頭で合格率は85.2%でした。わずかとは言えピットブルテリアを下回っています。
他にも、ビーグル、ブルドッグ、バセットハウンド、ビションフリーゼ、コーギー、チワワ、ジャーマンシェパード、プードル、ヨークシャーテリアなどがピットブルテリアよりも低い合格率となっています。
犬種とステレオタイプを結びつける危うさ
もちろん、この協会のテストが全てではありませんし、合格率が低いから扱いにくい犬種というわけでもありません。しかしこれらの結果からは、犬種名を聞いて反射的にステレオタイプのイメージを持つことの間違いや危うさが読み取れます。
そもそも犬が攻撃性を示す場合のほとんどは、恐怖を感じることから来ています。恐怖や不安を感じて逃げ場がないので仕方がないから攻撃に転じる、さらに酷い場合は何度も体罰などを受け、恐怖から逃れるには攻撃しかないと学んでしまうといった例です。
ピットブルテリアは日本では頻繁に見かける犬種ではありませんが、犬種によるステレオタイプは他にもたくさん溢れています。反射的に凶暴な犬だというイメージを持つのと反対に、ステレオタイプで「賢い犬」だと思いこんでしまう例もあります。
「ラブラドールは盲導犬になる賢い犬だから、躾もしやすくて飼いやすい」というイメージを持っている人は驚くほどたくさんいます。
ATTSのテスト結果の数字は、このような思い込みに警鐘を鳴らすという大きな意味があるかもしれません。
まとめ
アメリカで犬の気質検査の統一テストを実施している協会についてご紹介しました。同協会が発表している犬種別のテストの中からピットブルテリアをピックアップして、犬種へのステレオタイプについても考えてみました。多くの人が考えるきっかけになればと思います。
《参考URL》
https://atts.org
https://atts.org/breed-statistics/