より広い範囲を対象にしたペットについての意識調査アンケート
犬にまつわる研究は、行動学、獣医学、遺伝学、心理学、考古学などさまざまな分野で広く行われており、いろいろな角度や側面から犬自身や人間の生活に役立てられています。
このような専門的な学術分野での研究を行う前提として、犬と暮らしている一般的な人々が犬に対してどのように感じ、どのように接しているのかを把握する必要があります。
アメリカの独立系非営利団体ピュー・リサーチ・センターは、「アメリカ人のファミリーライフ」というテーマで調査を実施しており、その一環としてアメリカ人のペットに対する意識調査を行ないました。
大学などの研究機関によるアンケート調査の場合、回答者の募集はペット好きが集まるSNSなどをベースにして行われることが多く、参加者はボランティアつまり無報酬で調査に回答するのが一般的です。
このような形ですと回答者はペットに対しての思い入れが強く、動物の健康や福祉を平均以上に意識している人に偏る傾向があります。
ピュー・リサーチ・センターは、全米から無作為に選ばれた人を対象にアンケート調査参加をお願いする郵便を送付、最高20ドルの報酬を支払うという条件で参加者を募集しました。
そのため、この調査ではボランティアのみの参加者とは違う層からの回答が得られ、より一般的なペットに対する意識が集まったと考えられます。
「ペットは家族の一員」と答えた人の家庭環境
この調査は2023年4月に実施され、5,073人の回答が集められました。
ペットを飼っていると答えた人のうち、ほぼ全員の97%が「ペットは家族の一員だ」と回答しました。また51%の人は「ペットは人間の家族と同等に大切だ」と答え、「ペットは家族だが人間と同等ではない」と答えた人46%を上回りました。
ペットが人間の家族と同じように大切だと答えた人が最も多かったのは、同棲中のカップル65%、所得の低い家族64%、都市部に住んでいる人61%、女性57%、18歳未満の子どもが家にいない人55%、であることもわかりました。
このように家庭環境や家族構成はペットへの親密さに関連していましたが、飼い主の年齢や人種による大きな違いは見られなかったそうです。
またわずかな違いでしたが、犬だけを飼っている人は猫だけを飼っている人よりも、ペットを人間の家族と同等だと考えている人が多くなっていました。
一般的にペットの幸福は配慮されているか?という質問
「アメリカにおいて、ペットは人間に比べてどのように扱われていると思いますか」という質問に対しては、意見が分かれていました。
回答者の26%は「ペットの幸福や福祉が十分に配慮されていない」と答え、同じく26%の人は「ペットの幸福や福祉が重視され過ぎている」と答えました。48%の人は「ペットの幸福や福祉は適切に配慮されている」と回答したそうです。
ペットを飼っている人が「幸福や福祉が十分に配慮されていない」と答えた割合は、ペットを飼っていない人の2倍。ペットを飼っていない人の37%は「ペットの幸福や福祉が重視され過ぎている」と回答しました。
また、「ペットは人間の家族と同等に大切だ」と答えた人の51%が「ペットの幸福や福祉が十分に配慮されていない」と答え、「ペットの幸福や福祉が重視され過ぎている」という回答は6%だったそうです。
「ペットは家族だが人間と同等ではない」と答えた人のうち、「ペットの幸福や福祉が十分に配慮されていない」と答えた人は13%で、「ペットの幸福や福祉が重視され過ぎている」と答えた人は32%でした。
ペットの幸福や福祉が重視されているかどうかについての回答は、一般的な視点はペットがどのように受け止められているかを知ることができたとリサーチ担当者は述べています。
まとめ
アメリカで実施されたペットに関する意識調査の結果をご紹介しました。
学術的な聞き取り調査またはペット関連企業などによるアンケート調査は、飼っている動物に対してひときわ強い思い入れのある回答者が多く、世間一般に多数を占める意識や見解がわかりにくいことが多々あります。
その意味で、この調査はペットが占める位置付けをもう少し現実的な視点から見たものと言えます。
《参考URL》
https://www.pewresearch.org/short-reads/2023/07/07/about-half-us-of-pet-owners-say-their-pets-are-as-much-a-part-of-their-family-as-a-human-member/
https://www.pewresearch.org/social-trends/2023/06/14/support-for-blm-methodology/