「優しい虐待」をご存知ですか
虐待というと、暴力や必要なケアをしないネグレクトが思い浮かぶ方も多いことでしょう。犬の心と体を傷つけ、不幸にしてしまう虐待行為は、絶対に許されることではありません。
ですが、そのような暴力やネグレクトではなく、愛犬への愛情からの間違った行為で犬を不幸にしてしまう「優しい虐待」という状況が存在しているのです。
今回はこの「優しい虐待」について、見ていきましょう。
愛犬を不幸にする「優しい虐待」
では、「優しい虐待」とは具体的にどのような行為が該当するのでしょうか。
1.太らせてしまう
「うれしそうに食べてくれるから」「お腹が空いた状態は可哀そう」「お散歩を嫌がるから」など、甘やかして太らせてしまうというのは、まさに優しい虐待のひとつです。
「ふっくらころころとした姿も可愛い」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、犬の肥満は万病の元です。太ることで心臓や呼吸器、関節など体の様々な部位に負担をかけ、命まで危険にさらすことになります。
ですが、犬は基本的に自分で食欲をコントロールできません。愛犬が欲しがるままにおやつやご飯を与えてしまうと、当然食べ過ぎになってしまうのです。
また、人間が食べている物を愛犬におねだりされて与える、というのもよくありません。犬にとっては毒になる食べ物が含まれている可能性があるのはもちろん、そうでなくても人間用の食べ物は、犬にとっては塩分や脂肪分が過多になることもあります。
可愛い愛犬の健康維持のためにも、飼い主さんがしっかり食事の量や食べる内容を管理してあげてください。
また、肥満を予防し、健康な体を作るのには、適切な距離の散歩は欠かせません。運動嫌いだからとあきらめるのではなく、散歩に行きたがらない原因を取り除いてあげましょう。
2.犬を連れまわし過ぎる
「うちの可愛い子を人に見てもらいたい」「愛犬にはいろいろな体験をさせてあげたい」「犬友さんと交流したい」という気持ちから、おでかけに連れていくこともあるかもしれません。
それ自体は悪いことではありませんが、あまりにも頻繁にあちこちと連れまわすというのも、優しい虐待に該当します。
犬は慣れていない場所や知らない人の多い環境では不安やストレスを感じやすい動物ですし、個々の体質によっては車酔いするケースもあります。
また、犬は1日に12~15時間ほど眠り、1日の中で細切れに睡眠をとります。よかれと思ったおでかけも、犬にとっては休息の妨げになってしまうかもしれません。
犬の疲れや体調を考慮せずに、あちこち連れまわすのはやめましょう。
3.しつけ・社会化をしない
意外かもしれませんが、「しつけをしない」というのも優しい虐待です。
「まて」「おすわり」などのコマンドを覚えておらず、飼い主さんに従わない犬は、散歩中のトラブルや災害時などでも飼い主さんがコントロールできない可能性があります。その結果、重大な事故につながって、愛犬の身も危険にさらすことになります。
また、愛犬の無駄吠えや他の犬や人に対しての攻撃的な態度や行動を、しつけせずに放置していると、周囲とトラブルになって人間社会の中で生きていくのが難しくなってしまうことも。
そのような他者への問題行動については、子犬のときに満足な社会化をしていないことも原因のひとつになります。「犬の社会化」とは、音やニオイなどの外的刺激に慣らし、他の人や犬への接し方を学ばせることをいい、生後3週間〜12週間の子犬の時期が効果的だといわれています。
この社会化を「面倒だから」「怖がっているのに可哀そう」としないでいると、犬はいつまでも他者とのかかわりや刺激に怯え、過敏に反応することになり、ストレスフルな状態で生きていくことになります。
「愛しているから」「優しくしてあげたいから」と、しつけ・社会化をしないことは、結果的に愛犬を苦しめることになるのです。
まとめ
今回は、知らず知らずのうちに愛犬を不幸にしている「優しい虐待」についてご紹介しました。
愛しているからこそ、愛犬の嫌がることはしたくない、喜ぶことをたくさんしてあげたいという気持ちはわかります。しかし、今回ご紹介した通り、人間の思いとは裏腹に、その行為自体が犬のためにならずに「優しい虐待」になってしまっていることもあるのです。
愛犬と末永く健やかに暮らしていくためにも、甘やかしすぎず、必要なしつけや管理はしっかりとするようにしましょう。