短頭種犬の睡眠時呼吸障害を診断する新しい方法のテスト結果

短頭種犬の睡眠時呼吸障害を診断する新しい方法のテスト結果

犬の睡眠時呼吸障害を診断するための新しい方法をテストした結果が報告されました。簡単な診断方法で犬の呼吸障害が見つかりやすくなりそうです。

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犬にも睡眠時無呼吸症候群がある?

眠っているキャバリア

人間の睡眠障害のひとつで『睡眠時無呼吸症候群』という病気があります。

眠っている時に呼吸が止まってしまうという症状で、血液中の酸素濃度が低下してしまい深い睡眠が全く取れなくなる、低下した酸素濃度を補うため心臓に負担がかかり高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくなるなど、リスクの高い病気です。

この人間の睡眠時無呼吸症候群と非常によく似た症状を示す、犬の睡眠時呼吸障害という病気があります。上気道閉塞による浅い呼吸と無呼吸の繰り返しが特徴で、イングリッシュブルドッグとキャバリアキングチャールズスパニエルで報告されています。

睡眠中の呼吸困難は短頭種の犬では数多く報告されていますが、睡眠時呼吸障害と診断するには、大掛かりな設備の中で犬がさまざまな機器に接続された状態で眠るという検査が必要です。そのため診断や研究が困難で、犬の睡眠時呼吸障害に関する知見が限られていました。

イングリッシュブルドッグやキャバリア以外にも、睡眠時に無呼吸になる呼吸障害を持つ犬(特に短頭種)は多いと考えら、診断されていないので治療も受けていないとすれば、人間の睡眠時無呼吸症候群と同じように、犬の健康がリスクに晒されていることになります。

このような状況を受け、犬の睡眠時呼吸障害を簡単に診断するためにフィンランドのヘルシンキ大学獣医学部の研究チームが新しい診断方法のテストを行い、その結果が報告されました。

簡単で新しい睡眠時呼吸障害の診断方法をテスト

眠っているマスティフ

このテストのための研究に参加したのは、一般から募集された24頭の家庭犬でした。

24頭のうち12頭は、短頭種の犬(フレンチブルドッグ9頭、イングリッシュブルドッグ1頭、キャバリア1頭、ブルマスティフ1頭)

残り12頭は、対照群として中頭または長頭種の犬です。(ラブラドール3頭、ゴールデンレトリーバー2頭、バセットフォーヴドブルターニュ2頭、ラポニアンハーダー1頭、ウィペット1頭、ウェールズテリア1頭、スパニッシュウォータードッグ1頭、アイリッシュセッター1頭)

新しい診断方法とは、人間の睡眠時無呼吸症候群の診断用に開発されたネックバンドを使うものです。

ネックバンドはC型で喉の部分が圧迫されない作りで、気管音を集めるマイク、周囲の音を集めるマイク、動きと位置情報を提供するセンサーが内蔵されていて、集めたデータは専用のタブレットに転送され保存されます。

犬たちは各家庭で夜眠る時にネックバンドを装着してテストが実施されました。飼い主は夜遅くに犬の首にネックバンドを装着し、朝起きた時に外すよう指示されました。

このようにして、短頭種グループでは平均6.98時間、対照グループでは平均7.57時間の睡眠時のデータが収集分析されました。

ネックバンドが短頭種の呼吸障害を検出

眠っているイングリッシュブルドッグ

2つのグループの違いは明白でした。短頭種グループでは全員がいびきをかいており、睡眠中に頻繁に無呼吸または低呼吸の状態が起こっていたことから、睡眠時呼吸障害の症状を示し、対照グループではいびきや睡眠中の無呼吸状態はほとんど確認されませんでした。

飼い主によるとネックバンドは使いやすく、犬の眠りを妨げることはなかったと報告されています。この結果から、ネックバンドシステムを使って犬の睡眠時呼吸障害を診断する方法は簡単で有効であると結論づけられました。

このテストでは人間用のネックバンドを使っているため、小型犬には適用できないという問題があります。また、短頭種気道症候群の重症度と睡眠時呼吸障害の関連を調査するため、より大きいサンプルサイズでの研究が必要だと研究者は述べています。

まとめ

眠っているフレンチブル

人間の睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングに使われるネックバンド装置を睡眠時呼吸障害診断に使うテストを実施したところ、この装置は使いやすく犬にも負担が少なく、簡単に犬の睡眠時呼吸障害を検出することが出来たという結果をご紹介しました。

簡単な装置とは言え今はまだ研究者の使用に限られていますが、以前よりも簡単な検出方法が見つかったことで研究も大きく前進することが期待され、犬の睡眠時呼吸障害の診断に新しい可能性がもたらされるかもしれません。

人間同様、夜にぐっすり眠ることができないと犬も免疫機構、ホルモン分泌、代謝、認知機能に影響を及ぼし健康を害します。短頭種の犬と暮らしている方は「いびきはこの犬種の特徴」とスルーするのではなく、かかりつけの獣医さんに相談して対策を立てることが大切です。

《参考URL》
https://doi.org/10.1111/jvim.16783
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html

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