犬の『脳』は犬種によって構造が違う?人間や猫との比較やその構造を徹底解説!

犬の『脳』は犬種によって構造が違う?人間や猫との比較やその構造を徹底解説!

犬や猫は、ヒトの2〜3歳児程度の知能を持っているといわれています。しかしヒトは、成長に伴い、より複雑な思考能力や問題解決能力を身につけます。犬も、ヒトとは別の能力を持っています。この違いは、脳の構造からくるのでしょうか。またそれぞれに得意分野が異なる犬種間の違いも、脳の構造からくるのでしょうか。脳に関する研究成果を中心にご紹介します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

脊椎動物の脳の構造と働き

犬の脳

脊椎動物の脳は、脳幹、小脳、大脳で構成されています。脳幹は、呼吸や循環などの生命維持のための機能や反射、摂食、交尾などの本能的な行動を司っています。小脳は、筋肉の緊張や姿勢の調節に関与して、身体のバランスをとっています。

大脳は、表層部の大脳皮質と内部の大脳髄質とで構成されています。大脳皮質には、新皮質と大脳辺縁系(古皮質)があり、新皮質は高次元の脳機能、思考、感情、感覚認知、随意運動などを、大脳辺縁系は本能的な行動、情動、自律機能、嗅覚などを司っています。

魚類・両生類・爬虫類の脳は、大部分が脳幹です。しかも魚類と両生類の大脳には、新皮質がありません。鳥類・哺乳類の脳は、発達して大きくなった小脳と大脳が特徴です。特に大脳が発達し、「感覚野」と「運動野」という新皮質が現れました。

霊長類はさらに大脳皮質が発達し、新皮質に「連合野」が加わって高度な認知や複雑な思考もできるようになりました。特にヒトは大脳が発達し、しかも大脳の90%以上が新皮質なので、非常に高度で複雑な思考や認知能力を身につけたのです。

よく、犬と猫ではどちらが賢いかという話題が出ます。賢さ、知性を客観的に計る指標は、大脳皮質におけるニューロンの数です。ニューロンとは、神経細胞のことです。

ヒトは160億〜210億程度、犬は5億3000万、猫は2億5000万のニューロンを持っているという調査結果が報告されています。このことから考えると、犬は猫の2倍強の知性を、ヒトは犬の30倍以上の知性を持っているということになります。

豊富な犬種

さまざまな犬種

ここまでは、動物種による脳の違いを見てきました。ここからは犬種の違いについて見ていきましょう。国際畜犬連盟(https://www.fci.be/en/)が公認犬種として登録している数は約350種ですが、世界には700〜800の犬種があるともいわれています。

犬は猫と比べても品種の数が多く、しかも体のサイズもバラエティに富んでいます。それは、犬種が用途に応じた能力を追求された末に作られたこと、しかも犬に求められていた用途が多種多様だったことが関係しているといえます。

国際畜犬連盟による犬種の分類は、下記の10種類です。

第1グループ:牧羊犬・牧畜犬
第2グループ:使役犬
第3グループ:テリア(穴の中に住むキツネなど小型獣用の猟犬)
第4グループ:ダックスフンド(地中の獲物を狩る、獲物の足跡をゆっくりと追う猟犬)
第5グループ:原始的な犬・スピッツ(日本犬を含むスピッツ系の犬)
第6グループ:嗅覚ハウンド
第7グループ:ポインター・セター(獲物を探し出してその位置を静かに示す猟犬)
第8グループ:レトリーバー、スパニエル、ウォーター・ドッグ(第7グループ以外の鳥猟犬)
第9グループ:愛玩犬
第10グループ:視覚ハウンド

数百種におよぶ犬種は、これらの分類の用途に最適な能力を持つように作り出されてきたため、当然その能力や行動特性も、用途に応じて異なるようになりました。

犬の脳は発達の仕方が犬種毎に異なっていた!

MRI装置内の犬

2019年9月2日付で学術誌『Journal of Neuroscience』に発表されたハーバード大学の論文によると、加えられた改良によって犬の脳の構造が異なることが分かったといいます。構造といっても、脳幹、小脳、大脳という基本構成の意味とは異なります。

まず犬種によって、脳の大きさと形に違いがあることが分かりました。これは体格差による影響も考慮した上での結論です。

例えば、小型犬の頭部は丸く、頭骨内には丸い脳が隙間なく収まっていますが、大型犬の頭部は細長く、長く伸びた脳が頭骨内に若干の余裕を残して収まっているのだそうです。

次に、研究チームは、MRI装置内で大人しく座っているように訓練された33品種62頭の犬を対象に、MRIによるスキャンを行いました。その結果、犬の行動特性から識別できる、下記6つの脳内ネットワークを特定し、犬種間で脳の作用がどのように異なっているのかを調べました。

<ネットワーク1>
おやつや飼い主さんからのご褒美による学習強化やモチベーション強化に大きく関与しているネットワーク
<ネットワーク2>
覚醒時の嗅覚刺激に反応して活性化するネットワーク。嗅覚刺激が、本能的ではなく自発的な反応を引き起こす可能性があると考えられている
<ネットワーク3>
運動、眼球運動、視覚、空間ナビゲーションに関わり、環境の中を移動することに大きく関与しているネットワーク
<ネットワーク4>
社会的な行動やコミュニケーションに関わるネットワーク。犬のfMRI研究により、犬や人間の顔や声を示した時に、このネットワークが活性化されることが分かっている
<ネットワーク5>
恐怖、ストレス、不安に関わり、環境ストレッサーや脅威への対応、内分泌反応などの他、交尾、記憶、攻撃性などの感情や本能的な行動に関わっていると考えられている
<ネットワーク6>
嗅覚、視覚に関わるネットワーク

この脳内ネットワークの発達の仕方が、犬種の行動特性により異なっているということが分かったのです。例えば第9グループ(愛玩犬)に属する犬種では、人とのコミュニケーション能力に関わる<ネットワーク4>に該当する部位が発達していました。

また第6グループの嗅覚ハウンドは、嗅覚刺激を自発的に反応させられる<ネットワーク2>に該当する部位が発達していました。このように、品種改良は犬の脳の発達にも大きな影響を与えていたことが分かったのです。

まとめ

フリスビーを楽しむ犬

動物種による脳の構造の違いや犬と猫の知性の比較、犬種間による脳内ネットワークの発達の違いなどを紹介してきました。品種改良は、犬の脳の発達にも大きな影響を与えてきたことが分かり、驚かれた方も多いのではないでしょうか。

人が脳の発達にまで関与してきたことを考えると、愛犬の幸せのためには犬種特性を見極め、それを活かせるようになる必要があるといえるのではないでしょうか。

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