犬の感情表現
人には言葉があるため、いろいろなことを言葉で表現します。日本人の中には、相手に愛情を言葉で伝えるのは苦手だという方もおられるかもしれません。しかし、言葉であろうが態度であろうが、相手に伝えようとしなければ、どんなに深い愛情でも伝わりません。
その点、言葉による表現手段を持たないはずの愛犬からの愛情表現は、比較的分かりやすいと感じている方が多いのではないでしょうか。犬は、感情をとても豊かに表現できる動物なのです。しかもその表現方法は、比較的私たち人間とも相通ずる部分が多いのです。
愛犬から愛情が伝わってくる瞬間とは
それでは、日々の暮らしの中で愛犬からの愛情が伝わってくる瞬間を、いくつか抜き出してみましょう。
1.どこからともなく感じる視線
一般的に、犬が相手の目をじっと見つめるのは戦意の現れだといわれています。しかし、愛犬が信頼している飼い主さんのことをじっと見つめるのは、意味合いが変わって愛情表現になると考えられています。
犬は、成犬になっても飼い主さんのことを母犬のように思い、信頼しています。そのため、飼主さんの様子が気になって仕方ないのです。そして、飼主さんから気にかけてほしいとも思っているのです。その気持が、飼主さんの行動をじっと見つめるという行動にあらわれるのです。
家の中で、誰かの視線を感じて振り返ったら愛犬と目があったという時は、素直に愛犬からの愛情を受け止めて、しっかりアイコンタクトを図り、優しく声をかけてあげると良いでしょう。
2.純粋無垢で太陽のような笑顔
犬が目を細め、口角を上げてわずかに開いた口から舌を出し、少し興奮気味な表情をしていることがあります。それはまるで、満面の笑顔のようです。その純粋無垢で太陽のように明るい笑顔を見せられたら、こちらもつられて笑顔になってしまうでしょう。
「犬が笑うわけがない」と思う方もいるでしょうが、この表情は犬の笑顔であり、幸せだとか嬉しいという気持ちを表している表情だと解釈されています。素直に愛犬からの愛を受け取り、こちらからも笑顔を返してあげましょう。
3.全身全霊を込めての「お帰りなさい!」
仕事で疲れて返ってくると、愛犬が玄関まで出迎えに来てくれて、ちぎれるほど激しく尻尾を振りながら大歓迎してくれるというご家庭も多いのではないでしょうか。この瞬間も、愛犬からの愛情をダイレクトに感じられる瞬間です。
これは確かに愛犬からの愛情表現なのですが、少し注意が必要です。ちぎれるほど激しく尻尾を振るのは、とても興奮している状態だからです。この時、飼い主さんは愛犬に対して冷静に向き合いましょう。一緒になって喜び合うと、愛犬の興奮を助長してしまいます。
出迎え時の激しい興奮は、留守番中の死ぬほど退屈で寂しかった時間の裏返しです。激しい感情の起伏は、愛犬のためにはよくありません。留守中の愛犬が退屈しないように、おやつを隠した知育玩具を渡しておくなど、いろいろと工夫をしてあげましょう。
4.黙って静かに頭をコッツン
飼主さんがソファに座って本を読んだりタブレットに向かっていたりすると、音もなく近寄ってきた愛犬が、静かに自分の頭を飼主さんの体にコッツンとぶつけてくることがあります。とても静かで緩やかな時間の中で、静かに愛犬からの愛情を感じる瞬間です。
この行動は、愛犬が飼主さんに対して「信頼」の気持ちを表しているものだと考えられています。何回も繰り返したり、ぶつけた頭をグリグリと擦り付けてくることもあります。愛犬の目を優しく見つめ返したり優しい声をかけたりして、愛犬の愛情に応えてあげましょう。
5.顔をペロペロ
飼主さんのことを母犬のように思っている飼い犬は、いくつになっても子犬の頃の気分を忘れてはいません。そのため、時々飼主さんに対して子犬が母犬に行うような行動を見せることがあります。その中の一つが、この顔をペロペロ舐めるという行動です。
これは、子犬が母犬に対して食べ物をねだっていた時の行動の名残で、飼主さんに対して甘えたい気持ちから引き出される行動だといわれています。
ただし、犬の口の中には多くの常在菌がいて、その中には犬には無害でも人には有害な作用をもたらす菌もいます。愛犬が飼主さんの顔を舐め始めたら、愛犬を傷つけないようによけながら、別の方法で愛情交換を行うようにすると良いでしょう。
飼い主さんからも愛犬にお返しの愛情表現を
愛犬が飼主さんに対して愛情を見せてくれた時には、飼主さんからも愛犬に愛情を返してあげたいものです。決して甘やかす必要はありません。ただ、飼主さんが愛犬のことをいつも気にかけていて、愛しているのだということを伝えてあげていれば良いのです。
日々のお世話をきちんと行うことはもちろんですが、愛犬と向き合う時には常に真剣に向き合うこと、できるだけ一緒に過ごす時間を作ること、感情的にならずに常にゆったりとした気持ちで過ごし、優しい声で話しかけ、良いことをしたらすぐに褒めることなどが、愛犬に対して飼主さんの愛情を伝える方法です。
飼主さんからの愛情がいつも感じられるような環境にいられれば、愛犬も不安に感じることなく、安定した気持ちで毎日を楽しく暮らせるはずです。
まとめ
愛犬から愛されることは嬉しいですし、飼主さんからも愛犬に対して愛情をしっかりと伝えたいと思うのは当然のことですが、それと甘やかすのとは話が違います。愛犬の好きなようにさせておくとか、要求されることを何でも叶えてあげるのは、愛情ではありません。
愛犬が人間社会の中で心地よく暮らせるように守ってあげることが、飼主さんの愛犬に対する愛情です。人間社会の中で暮らすために必要なルールを教え、愛犬が興奮しすぎて暴走しないように導けるようになった上で、愛犬とたっぷり愛情交換を行いましょう。