犬の変性性脊髄症の治療研究への資金提供
犬の変性性脊髄症(へんせいせいせきずいしょう)という病気があります。脊髄の神経細胞が変性することで、体の麻痺が徐々に進行していく神経系疾患です。
人間の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の一部と似た特徴があります。現在のところ、この病気の進行を遅らせるための治療方法はありません。
このたびAKC(アメリカンケネルクラブ)ケーナイン健康基金が、犬の変性性脊髄症の治療方法研究への資金提供を発表しました。
AKCケーナイン健康基金は、1995年に設立された犬の健康増進を目的とする非営利団体で、犬の病気の予防や治療に役立つ研究に助成金を提供し情報を共有しています。
人間のALS治療薬を使って変性性脊髄症の臨床試験
資金提供される研究に参加しているのは、アメリカのミズーリ大学、オハイオ州立大学、タフツ大学、ノースカロライナ州立大学の獣医神経学の研究チームです。
研究者たちは、1995年に人間のALS治療薬として初めてアメリカ食品医薬品局に承認されたリルゾールを用いて、変形性脊髄症を持つ犬の臨床試験を立ち上げ、治療プロトコル(定められた手順、試験/治療計画など)を確立しようとしています。
現在、この臨床試験に参加する変性性脊髄症と診断された犬20頭が募集されています。リルゾールの経口投与の安全性評価、用量の設定、治療効果の評価が試験の目的です。
多くの飼い主の願いが込められた研究
元々この研究は、Bubba's Buddies(ブッバの仲間たち)という非営利団体がスポンサーになって進められて来たものです。
この団体は、変性性脊髄症で亡くなったブッバという名のボクサーの飼い主さんが立ち上げたものです。この病気の治療方法研究のための資金を集め、この病気に苦しむ犬の家族のサポートも行なっています。
変性性脊髄症の治療法がないことに不安や不満を募らせた多くの飼い主さんたちが、Bubba's Buddiesに寄付やサポートをしています。AKCケーナイン健康基金はスポンサーに取って代わるのではなく、資金の提供を行います。
ブッバの飼い主さんや、同じ思いを抱えている多くの人々の願いが、この研究によって実を結ぶことを祈らずにはいられません。
まとめ
アメリカで進められて来た犬の変性性脊髄症の治療法の研究に、AKCケーナイン健康基金が資金提供を行い、人間のALC治療薬を用いた臨床試験がスタートするというニュースをご紹介しました。
大規模な財団である健康基金によるバックアップは頼もしい限りですが、亡くなった愛犬のために個人で非営利団体を設立し、研究資金を集め、他の飼い主のサポートをして来たBubba's Buddiesの存在には胸を熱くさせられます。
犬の変性性脊髄症が治療方法が確立されて、診断後も生活の質を保って天寿を全うできる犬たちが増えることを心から願います。
《参考URL》
https://www.dvm360.com/view/study-evaluating-potential-treatment-for-degenerative-myelopathy-receives-funding
https://www.akcchf.org/research/research-portfolio/3139.html
https://www.bubbasbuddies.org