犬同士の相性とコミュニケーション
かつて犬は集団で狩りをして暮らしていたため、グループ内でそれぞれの役割を担えるような社会性や協調性を身につけました。今でも犬同士が出会うと、お互いに鼻を近づけてニオイを確認し挨拶するという社会性を持っています。
この時、お互いのコミュニケーション能力や積極性、相手への距離感などが合っていると仲良くなれますが、合わない場合はなかなか仲良くなれません。
お散歩中に出会った犬や、飼い主さんのお友達の愛犬、ドッグランなどの自由に行動できる場所で出会った犬と愛犬の様子をよく観察していると、仲良くなれそうかなれそうにないかを感じ取れるようになります。
双方の犬が仲良しのサインを出していれば、静かに様子を見守ってあげればよいでしょう。しかし、片方だけでも「苦手だな」という素振りを見せている場合は、状況に応じて飼い主さんがうまく引き離してあげるようにしたいものです。
犬同士で交わされる尊い愛情表現
では、犬同士で交わされる大好きのサインには、どのようなものがあるのでしょうか。
1.お互いにお尻のニオイを嗅ぎ合う
犬の肛門の両脇にある肛門腺では、特殊なニオイのする分泌物が作られます。このニオイにはその犬の個人情報がたくさん含まれていて、名刺や履歴書のような役割を担っています。そのため、犬たちは相手のお尻のニオイを嗅いで、相手のことを認識し、理解しようとします。
しかし相手に背を向けるような体勢になるため、そう簡単な行為ではありません。犬同士がお互いにお尻のニオイを嗅ぎ合っているのであれば、お互いを信頼しているサインであり、相性の良い仲良し同士の愛情表現だといえるでしょう。
2.相手の顔をペロペロと舐める
子犬が母犬に甘えたり母犬が子犬を守ったりする時に、相手の顔を舐めることがあります。成犬同士のコミュニケーションとしても、相手の顔をペロペロと舐めることがあります。
この行為には、相手に対して「敵意がない」ことを示すという意味があり、仲の良い犬同士が「会えて嬉しいね」という気持ちを交換している愛情表現だと考えられています。
3.遊びに誘う
愛犬が飼い主さんに向かって頭を低く下げ、同時にお尻を高く上げるような姿勢をしていたら、それは「プレイバウ」といわれている「一緒に遊ぼうよ!」と誘っているサインです。この仕草は、犬同士のコミュニケーションでも同じ意味で使われます。
散歩やドッグラン、公園などで出会った犬同士が挨拶をし、お互いの情報を交換しあった後にこのプレイバウの姿勢をして相手を遊びに誘った場合、相手と一緒に楽しく過ごしたいという意思表示であり、愛情表現の一つだといって良いでしょう。
4.くっついて眠る
犬の多頭飼育や、犬も猫も、というような異種による多頭飼育をしている場合、犬同士や犬と猫がピタッと体を寄せてくっついたまま、すやすやと眠っている姿を見かけることがあります。これは、お互いが相手のことを信頼し、好きだからこそできる行為です。
人と同様に、犬も嫌いな相手と長い時間を一緒に過ごしたくはありません。ましてや睡眠中は無防備な状態です。嫌いで警戒すべき相手とは、一緒に眠りたくはないでしょう。
逆に、くっついて眠れる程の相手であれば、この上なく信頼し愛情を感じている、という証です。
犬同士で交わされる意外な嫌いのサイン
では、犬同士が「嫌い!」という場合には、どのようなサインをだすのでしょうか。
固まったように動けなくなったり、相手にお尻のニオイを嗅がせないようにしている姿は、明らかに相手の犬を嫌がっているのがわかりますよね。
しかし、「ストレスサイン」を見せる場合には、『一見嫌っているように見えなくても実は嫌っている』ということがあります。
このストレスサインとは、犬がストレスを感じている時に決まって見せるサインで、相性の悪い犬と対面した時にも、このストレスサインを見せます。覚えておくと、愛犬が他の犬に不快感や不安、脅威などを感じているときに、相手から離すなどの対処がとれるようになります。
犬のストレスサインには、主に次のようなものがあります。
- あくび
- 耳を後ろに倒す
- 浅くて速い呼吸(パンティング)
- 自分の鼻や体を舐める
- 体を掻く
- 震える
- 隠れる、逃げる
- 唸る、歯を剥き出す
- 吠える 等
また、犬が尻尾を振っていると、「喜び」のサインだと思う飼い主さんが多いです。しかし、これは「興奮」しているサインです。興奮の原因は「喜び」だけでなく、「不安」「恐怖」等の場合もあります。
愛犬が尻尾を振っている場合、ストレスサインと合わせて確認し、相手の犬への愛情表現なのか否かを見極める必要があります。
まとめ
犬は社会性のある動物ですが、どの犬とでも仲良くなれるわけではありません。すぐに仲良くなれる場合もあれば、時間をかけて仲良くなっていく場合もあります。逆に、お互いに相手に対して良くない印象を持ってしまう場合もあるでしょう。
愛犬に友だちを作ってあげたいと思われるのなら、焦りは禁物です。まずは犬同士の仕草や行動をしっかり観察し、仲良くなるまでの長い道のりを暖かく見守ってあげましょう。
もし犬のストレスを察知した場合は無理強いせず、必要に応じてその場を離れる等の対処をするように心掛けましょう。