犬の性格特性には犬種、年齢、社会環境が関連しているという研究結果

犬の性格特性には犬種、年齢、社会環境が関連しているという研究結果

かつてない大規模な行動調査データから何が犬の性格に関連しているのかを調査した結果が発表されました。犬と暮らす人が知っておきたい調査結果です。

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犬の性格特性に関連する要因を調査

12犬種のポートレート

私たち人間は犬種に対して、特定のイメージを持っていることが多いものです。例えば、ラブラドールといえば陽気でフレンドリー、柴犬といえば独立気質と言った具合に、犬種ごとの性格の傾向をなんとなく思い浮かべます。犬は本当に犬種ごとに性格の傾向が違うのでしょうか?

過去の研究から、犬の行動に影響を与える遺伝的/環境的な要因はある程度わかっているのですが、実は犬の性格に影響を与える要因についてはあまり研究が進んでいないそうです。

犬の性格に影響を与える要因は何なのか?このたびフィンランドのヘルシンキ大学の臨床遺伝学の研究チームによって、犬の性格特性に関連する要因が調査され、その結果が発表されました。

1万頭以上の犬のデータを収集分析

4頭のジャックラッセルテリア

調査は、一般募集された家庭犬の飼い主へのアンケート調査によって実施されました。回答者は愛犬の性別、年齢、犬種などの基本情報の他、生活環境や性格についての質問に答えました。

犬の性格については63の形容詞での記述があり、その記述に対して愛犬がどの程度当てはまるかを飼い主が5段階(よく当てはまる〜全く当てはまらない)で評価するものです。

これらの性格の記述は7つの性格特性(不安感、エネルギー、トレーニングへの集中度、攻撃/支配性、人間への社会性、犬への社会性、忍耐強さ)にそれぞれ分類されます。

最終的に315犬種11,418頭の犬についての回答データが集められました。犬の年齢は2ヵ月齢〜17歳(平均年齢5.18歳)、オスとメスの割合はほぼ半々、76%が不妊化されていませんでした。

犬種によってデータ数が少ないものは犬種グループに分類し、最終的に32の犬種グループ、19の個別犬種、雑種のデータセットにまとめられました。

性格特性に最も強く関連していたのは犬種

5頭のレトリーバー犬種

分析の結果、不安感、エネルギー、トレーニングへの集中度、攻撃/支配性、人間への社会性、犬への社会性、忍耐強さの7つの性格特性の全てにおいて、犬種(または犬種グループ)によって明らかな違いが見られました。

それぞれの性格特性が強い上位の犬種は次の通りです。

1.不安感

シェトランドシープドッグ、スパニッシュウォータードッグ、ミニチュアピンシャー、チャイニーズクレステッドドッグ、ジャーマンスピッツおよび関連犬種(スピッツ、ポメラニアンなど)

2.エネルギー

パーソンタイプテリア(パーソンラッセル、ジャックラッセル、ラットテリアなど)、ベルジアンシェパード、イングリッシュハーディングドッグ(ボーダーコリー、ラフコリーなど)、オーストラリアンシェパード

3.トレーニングへの集中度

ラブラドールレトリーバー、ボーダーコリー、スパニッシュウォータードッグ、ラフコリー、ゴールデンレトリーバー

4.攻撃/支配性

闘犬種、ジャーマンシェパード、パーソンタイプテリア、アジア系古代犬種(柴犬、コリアジンドーなど)、ミニチュアピンシャー

5.人間への社会性

ブルタイプテリア(スタッフォードシャーブルテリア、ピットブルテリアなど)、超小型犬種、ゴールデンレトリーバー、ジャックラッセルテリア、ダックスフンド

6.犬への社会性

フィニッシュラポニアンドッグ、マスティフ系犬種、セントハウンド犬種、ゴールデンレトリーバー、ウィペット

7.忍耐強さ

ミニチュアピンシャー、アジア系古代犬種、パーソンタイプテリア、ダックスフンド、闘犬種

この調査では過去の研究では含まれていなかった犬種も数多く含まれ、その規模は過去最大のものです。また性格特性の中でも、忍耐強さについての犬種別の違いはこれまで報告されていませんでした。

忍耐強さは人間によって「頑固」と評されることも多く、攻撃/支配性とも関連していました。一方、忍耐力が低い犬種(ゴールデンレトリーバー、シェトランドシープドッグなど)は適応力があり従順であると言われています。

注意しなくてはいけないのは、ある犬種に多く見られる性格特性に当てはまる個体数の多さは、犬種によって違いがあることです。つまり特定の性格特性を示す確率は、犬種によって違うということです。

犬種以外で重要なのは子犬期の社会化!

2頭のビーグルの子犬

犬種以外の環境的な要因で最も重要なのは、子犬期の社会化でした。生後7週間から4ヵ月の子犬期に多くの社会化体験をした犬は、不安感や攻撃性/支配性が低く、トレーニングへの集中度、人間や犬への社会性が高いという特性と関連していました。

社会化の経験が乏しい犬は、これらの性格特性について反対の傾向が示されました。

子犬の社会化の重要性は一般的にも広く知られるようになっていますが、子犬期に全く外出することなく過ごす犬もまだまだ少なくありません。

ワクチン接種前であっても、抱っこやカートで外に出てさまざまな環境に慣れることは重要です。決して子犬に怖い思いをさせることなく、できるだけ多くの人、場所、動物に慣れさせなくてはなりません。

また、犬の年齢も性格特性と大きく関連していました。トレーニングへの集中度の平均値は年齢とともに高くなり、反対に不安感、エネルギー、人間への社会性、犬への社会性の平均値は年齢が上がるほど低くなりました。

攻撃性/支配性は9歳で最も平均値が高くなり、忍耐強さの平均値は8歳で最も低く、若い犬と高齢犬で最も高くなりました。

社会化などの環境要因や年齢と性格特性との関連は、人間や他の動物とよく似ていることも明らかになったといいます。

まとめ

さまざまな犬種の犬たち

犬の性格特性に関連する要因についての大規模調査から、犬種と社会化は最も重要な要因であり、年齢も性格特性に強く関連していたという結果をご紹介しました。

ここで紹介した以外の要因も性格特性に影響を与えており、さらにこの研究では触れられていない項目(妊娠中の母犬の状態、母犬のケアの質など)や個体差もあり、性格特性の形成はとても複雑です。

犬種は犬の性格について重要な要因ではあるが全てではないことを心に留めておくことが大切です。

《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.isci.2023.106691

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