賃貸住宅でペットと暮らす人のための法改正
2023年5月イングランド議会が発表した、賃貸住宅の賃貸人(借主、物件を借りて住んでいる人)のための法改正が話題を集めています。
中でも注目されているのは、賃貸住宅の借主が犬や猫などペットを飼うことを希望した場合に、家主はそれを不当に拒否することができないという、借主がペットと暮らす法的権利を認める法案が可決されたことです。
賃貸住宅の家主は、入居している借主や入居希望者がペットを飼うことを一律に禁止するのではなく、個別に合理的な判断を下す必要が生じます。
この合理的な判断のためのガイダンスは、実際に法律が施行される前に、家主および借主の両方に向けて発行されることが決まっています。
また、民間賃貸住宅に関するオンブズマン制度が設置されることも決定しています。ペットを理由に入居や賃貸契約を不当に拒否されたと感じた場合、中立的なオンブズマンに申し立てを行うことができます。
動物保護団体が法改正を歓迎
この法案可決のニュースは、ペットと暮らしている人や動物を家族に迎えたいと考えている人はもちろん、多くの動物保護団体からも大きな歓迎を受けています。
2022年に動物保護団体にペットの受け入れを依頼した人のうち、10%以上がペット可の賃貸住宅が見つからないなど、住居に関する問題を挙げていたそうです。
またペット可の賃貸住宅が見つからないために、犬や猫を迎えることを諦めている人も潜在的にたくさんいることでしょう。
可決された法案が実際に法律として施行されるようになると、住宅事情のために犬や猫を保護団体に持ち込む人が減り、保護団体から新しく動物を迎える人が増える可能性があることが、動物保護に携わっている人が法改正を歓迎している理由です。
具体的な対策、残る不安感
この法改正では、借主だけでなく家主の権利を守ることも考慮されています。賃貸物件でペットを禁止している家主の多くは、ペットによる住宅へのダメージを心配しています。
改正法案では家主は借主に対して、ペットによる損害を補償するための保険加入を要求することができるとしています。ただし、保険によって損害が補償された場合には、退去時の保証金から損害分を差し引くことはできません。
法改正については歓迎するムードだけではなく、本当に問題が解決されるのか?と懐疑的な声も聞かれます。
「ペットを飼っているから入居できません」という代わりに、「他の入居希望者に決定しました」と言われるようになるだけではないか?というのが、その代表的なものです。
このような心配はもっともですが、政府が「民間賃貸住宅セクターにおける、責任あるペットの飼い主を支援することを約束します」という明言は、確かに心強いとも言えるでしょう。
まとめ
イングランドで、賃貸住宅の家主は借主がペットを飼いたいと希望した場合に、正当な理由なく拒否することができないという法案が可決したという話題をご紹介しました。
法律が実際に施行される時期はまだ明確になっておらず、法案可決については歓迎と心配の両方の声があがっていますが、ペット可の賃貸住宅不足の解決策としては一歩前進したと言える結果でしょう。
外国の話題ではありますが、いつか日本でも参考になる日が来ればいいなと思います。
《参考URL》
https://www.gov.uk/guidance/renting-with-pets-renters-reform-bill