犬用フェロモン製品は効果があるのだろうか?
愛犬の分離不安、雷や花火への恐怖対策のひとつとして、市販の犬用フェロモン製品があります。これらはDog-Appeasing Pheromones (犬を鎮めるフェロモン)の頭文字をとってDAPとも呼ばれます。
DAPは母犬が授乳中に分泌するフェロモン(化学伝達物質)を再現したもので、子犬にリラックス効果や安らぎを与えるものです。市販の犬用フェロモン製品は、この鎮静効果を再現しています。
犬用フェロモン製品は首輪、ディフューザー、スプレーなどさまざまな形態がありますが、これらは本当に効果があるのでしょうか。
DAPの効果を調査した過去の研究結果
DAPの研究はかなり以前から行われており、その効果が報告されています。
2010年にはスペインのバルセロナ自治大学獣医学部の研究チームが、アニマルシェルターで保護されている犬たちの不妊化手術の際に、スプレー式DAPを使った場合と偽薬を使った場合の、ストレス指標を評価する研究を行なっています。
調査対象となった犬は46頭で、DAP使用が24頭、偽薬使用が22頭でした。ストレス指標は、行動、ホルモン、免疫系、急性期反応の変化などが観察評価されました。
DAPの使用は手術を受ける犬の回復と、ストレスを改善する可能性が示されたというわけです。
また2010年の韓国のコングク大学獣医学部と、動物病院の臨床獣医師の研究チームによる調査では、動物病院に入院中の犬に、DAPと偽薬を投与した場合の不安行動への効果が評価されました。
DAPを投与したグループ24頭と偽薬を投与したグループ19頭を比較した結果、DAP投与群では不安行動について全体的な改善が観察されました。
特に効果が著しかったのは排泄、過剰な舐め、うろうろ動き回るの3つで、警戒と食欲不振については目立った改善が見られませんでした。
DAPの使用は入院中の犬の不安や恐怖を軽減し、回復を促進する可能性があることが恣意めされた結果です。
実際に犬用フェロモン製品を使う際に気をつけたいこと
このようにDAPは実際の獣医療の場面で効果が確認されており、動物病院での治療の際に活用している臨床獣医師もいるそうです。
留守番や病院に預ける際の分離不安、雷や花火など大きな音に対する恐怖などは、犬の不安症というと一番に思い浮かべられるものですが、攻撃的な行動や過剰な吠え行動なども不安や恐怖に基づいていることが多いものです。
犬用フェロモン製品は、犬の行動上の問題の解決策として試す価値があると言えます。
しかし音に対する恐怖、不安症、攻撃的な行動は体の痛みや不調から来ている場合もありますので、市販の製品を試す前にかかりつけの動物病院で受診し、医学的な問題の有無を確認することが大切です。
過去の研究では、飼い主の不在に対する不安にはDAPは目立った効果がなかったという報告もあります。DAPだけですべての不安症が解決するわけではありませんが、DAPによる行動治療は副作用などのリスクが低く、他の行動療法と併せて使用することもできます。
日本では動物用デンタル製品などでおなじみのビルバックから犬用フェロモン製品が発売されています。
まとめ
犬の不安症対策のひとつとして市販されている犬用フェロモン製品が実際に医療の現場で効果があったという過去の研究や、使用する際の注意点についてご紹介しました。
犬用フェロモン製品は「犬自身や不安の種類に合っていれば効果がある」と言えますが、このような製品があって犬のストレスを軽減する可能性があると知っておくと役に立つこともあるかと思います。
《参考URL》
https://doi.org/10.2460/javma.237.6.673
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2839826/