しつけは子犬にしかできないことではない
社会化期の子犬に対するしつけの大切さは、よく知られています。生後2ヵ月ほどで迎えられた子犬は物怖じすることなく好奇心旺盛で、乾いたスポンジが水を吸い込むように、日々の体験から学んだことを身につけていきます。
しかし、せっかく身についたはずの好ましい習慣ができなくなってしまったり、年を取るにつれてこれまでの習慣が現実の生活に合わなくなってきたりして、しつけをやり直さなければならないことも出てきます。
愛犬に持病がある、かなりの高齢である、非常にシャイである、攻撃性が強いなどの特殊な状況でない限り、成犬へのしつけのやり直しは可能です。ただし、しつけの際にやってはいけない行為やポイントを知り、正しい手順で行うことが大切です。
成犬にしつけのやり直しをする際に、絶対にやってはいけないNG行為や大切なポイントをご紹介します。
成犬でのしつけのやり直しの例
成犬になってからしつけのやり直しをすると聞いても、ピンとこないかもしれません。ここでは、どういう場合に必要となるのかを、少しご紹介しましょう。
興奮すると飼い主さんの言うことを聞かなくなる
犬が興奮してしまうと、その原因が何であれ、飼い主さんの言葉が聞こえなくなってしまい、暴走してしまいがちです。子犬の頃は、興奮する愛犬を力で制御できたかもしれません。しかし成犬になると愛犬の力が強くなり、力づくで制御することが難しくなってきます。
そこで、アイコンタクトや「コイ」「フセ」「マテ」などの合図で、愛犬の意識を飼い主さんに集中させたり落ち着かせたりできるようにする必要が生じます。それが、愛犬を飛び出し事故やトラブルから守ることに繋がるからです。
室内でトイレができるようにする
散歩でトイレを済ませていたものの、愛犬や飼い主さんが歳を重ねることで、トイレのためだけに悪天候の中散歩に出ることが辛くなったりできなくなったりすることがあります。
そこで、「室内でトイレができるようにさせたい」というのも、成犬のしつけ直しの一つです。
最近は散歩中の犬がオシッコをすることにも厳しい視線が向けられるようになってきています。そのため、ご近所トラブルを避けるためにも、室内でのトイレトレーニングの必要性が高まっているといえるでしょう。
成犬への「しつけのやり直し」で絶対にNGな行為
では、成犬の「しつけのやり直し」において、絶対にNGな行為にはどのようなことが該当するのでしょうか。
体罰
体罰は、しつけのやり直しにおいて絶対にしてはいけないNG行為です。
その瞬間は言うことを聞くかもしれませんが、しつけの目的を理解できません。目を盗んでして欲しくないことをし続けたり、飼主さんへの不信感をつのらせて信頼関係を崩すことになるだけです。
ワンパターンなトレーニング
トレーニングをいつも同じ場所、同じ状況で行うのはよくありません。なぜなら、違う場所や状況ではできなくなってしまうからです。
いつでもどこでもできるようにするためには、場所や状況を変えてトレーニングを重ねる必要があります。
タイミングの悪いリアクション
褒めるタイミングは重要です。良いことをした瞬間に褒めましょう。時間が経ってから褒めても、犬は何に対して褒められたのかを理解できません。
そしてこれは、叱るタイミングも同じです。留守中の愛犬の行為に対して、帰宅後に叱っても意味がありません。
過剰な叱りつけ
「ダメ」とか「ノー」と短い単語を低い声で発して「してはいけない」と伝えます。その際に、過剰に叱りつけるのは逆効果です。
飼い主さんの気を引きたかった場合、犬は「飼い主さんの気を引けた!」と満足してしまうことがあるからです。
手に負えないのに一人で抱え込む
どうしてもうまくしつけ直しができない場合、プロのドッグトレーナーや行動治療の専門知識を持つ獣医師に相談することを検討しましょう。
手に負えないのに一人で抱え込んでしまうと、愛犬の行動がエスカレートしたり、せっかく築いた信頼関係が崩れたりすることに繋がります。
「しつけのやり直し」における大切なポイント
ここからは、「しつけのやり直し」での大切なポイントについて解説します。
1.上下関係は忘れる
飼い主さんと犬との間の上下関係を意識したしつけ方が主流だった時代がありました。しかし今では、その考え方が間違っていたことが分かっています。犬は人に対して上下関係を求めてはいません。大切なのは信頼関係です。
愛犬の本能的な欲求を飼い主さんが満たすことで、安心して生活できるようにしてあげることが大切なのであり、そのためのしつけだということを忘れないようにしましょう。
2.失敗しても怒らない
愛犬が失敗しても怒らないことが鉄則です。怒るというのは感情から出る行為です。ダメだということを知らせるためには、冷静に叱りましょう。
ただし、叱って教えるよりも褒めて教えるのがしつけの基本だということは意識しておきましょう。
3.一貫性のある態度を守る
その時々の気分で接し方が変わると、愛犬は学習できません。一度覚えたことを何度も繰り返すことで、しつけた内容を定着させます。いつでも一貫性のある態度で接し続けましょう。指示の合図も同じです。家族間で統一した合図を使いましょう。
4.柔軟性のある発想が大切
頭でっかちで柔軟性のない考え方しかできないと、愛犬も飼い主さんも不幸になります。
「かくあるべし」という考え方に固執せず、犬の習性や個性に合わせて「どうすればできるのか、やらずに済むのか」というような柔軟な発想で生活環境を見直すことも大切です。
まとめ
基本的には、何歳になっても愛犬にしつけをし直すことは可能です。
しつけ方の基本を抑え、分かりやすく「良いこと」と「悪いこと」を伝え、それをさまざまな場所や状況下で繰り返しましょう。
ただし、極端にシャイな性格、強い攻撃性が定着しているなどの特殊な場合では、手に負えないこともあります。そのような場合は、是非専門家の力を借りることも検討しましょう。