犬の散歩に関連した怪我はどのくらい起きているのかを調査
犬と暮らしている人にとって、犬との散歩は毎日必須の活動であり楽しい時間でもあるのですが、怪我をするリスクと無縁ではありません。しかし実際に犬の散歩に関連して、どのような怪我がどのくらい起きているのかというデータは非常に少ないのだそうです。
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学医学部とジョンズ・ホプキンス・ブルームバーク公衆衛生大学院の研究者チームが、2001年から2020年の間にアメリカの救急外来を受診した成人のうち、犬の散歩に関連した傷病について調査分析を行い、その結果が発表されました。
散歩中の怪我の種類や年齢グループ
調査のためのデータは、全米電子傷害サーベイランスシステム(米国における傷害の発生状況を継続的に調査し把握するためのシステム)のデータベースが用いられました。
2001年から2020年の20年間のデータを分析した結果、犬の散歩に起因する怪我のため、救急外来で治療を受けた18歳以上の人の数は422,659人でした。詳細な内訳は次のとおりです。
- 怪我をした人の47%は40〜64歳、平均年齢は53歳
- 怪我をした人の75%が女性
- 怪我の部位で最も多いのは上肢(肩から手にかけた腕の部分)で51%
- 怪我の原因で最も多いのは引っ張られたりつまずいたりした際の転倒(55%)
- 怪我の種類で最多上位は指の骨折(6.9%)外傷性脳損傷(5.6%)肩の捻挫や挫傷(5.1%)
- 65歳以上では最も多い怪我は外傷性脳損傷と股関節骨折
具体的には、女性は男性よりも骨折をする確率が50%高く、65歳以上の人は転倒の確率が3倍以上、骨折の確率が2倍以上、外傷性脳損傷の確率が60%以上高いと言う結果でした。
転んだ際の骨折や捻挫もたいへんなことですが、怪我の種類で2番目に多いのが外傷性脳損傷というのは、しっかりと受け止めたい数字です。
外傷性脳損傷とは、頭を打つなどの外からの強い力によって脳の組織が傷つくことを指します。この調査で確認された外傷性脳損傷には脳挫傷、硬膜外血腫、硬膜下血腫が含まれました。
この研究データの20年間の期間中、犬との散歩に関連した怪我の推定年間発生率は、4倍以上に増加していたことも明らかになりました。これは犬の飼育率の上昇と、犬を飼うこと(特に犬との散歩)が健康に良い影響をもたらすという情報によるのではないかと考えられます。
また2020年のパンデミック以降は、世界の多くの地域で犬の飼育率がさらに上昇していますので、怪我のリスクも比例して高くなっている可能性があります。
散歩中の怪我を予防するためにできること
この研究は犬の飼育を控えるように促しているのではなく、犬と散歩することのメリットだけでなくリスクについても一般に周知することで、怪我の予防やリスク軽減を目指すものです。
犬との散歩中の怪我を予防するための対策を挙げてみましょう。
1.リードを指や手首に巻き付けない
リードは手のひらでハンドル部分をしっかりと握るのが鉄則です。こうしていれば咄嗟の時にも、すぐにグリップを強めたり緩めたりすることが可能です。指や手首にリードを巻きつけていると、犬が突然引っ張った時には骨折や転倒につながります。
2.適切な靴を履く
雪や氷の季節ではなくても滑りにくく、足をしっかりとホールドする安定性のある靴を履くことが必要です。暑い季節でもサンダルなどでの散歩は厳禁です。また散歩コースの地形や地面の状態を把握して、適切な靴を選ぶことも大切です。
3.適切なリードやハーネスを選ぶ
人間の靴同様に、犬のためのリードやハーネスの選び方も重要です。散歩コースに合わせた適切な長さのリード、ハンドル部分の持ちやすさ、犬の体に負担のないハーネスなど、安全性を第一に考えた選択が大切です。
4.散歩中は散歩に集中!
怪我や事故を防ぐために最も大切なのは、犬の散歩中は犬と周囲の環境にだけ注意を払うことです。
道路の障害物、他の犬、自動車や自転車、猫、子ども、そしてもちろん自分の犬に注意を払いながら歩くことで、咄嗟の事態に対応できる確率が高くなります。考え事をしながら歩いたり、スマホを操作しながら歩くことは大きな事故につながります。
5.万が一に備えて準備
どれだけ気をつけていても怪我をしてしまうことはあります。救急車を呼ばなくてはいけない場合などに備えて、自分自身の緊急連絡先や医療情報、すぐに犬を迎えに来てもらえる人の連絡先などを、散歩の際に携帯しておくことも大切です。
まとめ
犬との散歩中に起きる怪我についてのアメリカでの統計結果をご紹介しました。最も多い怪我の種類の2番目が、外傷性脳損傷という重いものであることはショックな現実とも言えます。
特に高齢の方や女性は、犬の散歩にともなう潜在的なリスクが高いことを認識し、家族で散歩の安全策を話し合い共有すること、犬を通じた友人同士での情報や安全策の共有などが大切です。
大切な愛犬とのお散歩の時間、しっかりと注意を払って安全に楽しくお過ごしください。
《参考URL》
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37057718/
https://www.hopkinsmedicine.org/news/newsroom/news-releases/walking-a-leashed-dog-associated-with-risk-of-traumatic-brain-injury-among-adults