最初から抱っこが好きな犬はいない?
人間は、赤ん坊を抱きしめて心地よいふれあいを重ねることで、深い愛情の絆を結びます。そのためか、人は人間の赤ん坊に限らず、かわいくて愛おしいと思う相手に対して「抱きしめたい」という衝動を覚えるようにできているようです。
飼い主さんと飼い犬との間にも、アイコンタクトやスキンシップが愛情の絆を構築することが、科学的にも証明されています。そのため、飼い犬は飼い主さんから撫でられることが大好きです。
ところが、犬は自分の動きが拘束されることを嫌います。なぜなら、危険な状況になっても逃げ出すことができなくなるからです。そのため、撫でられることは好きでも、抱かれることには抵抗を示す犬は、実は少なくありません。
「うちの子は抱っこされるのが大好き」だと思っている飼い主さんも多いでしょう。しかしそれは、最初から好きだったわけではなく、一緒に暮らしている間に犬が「抱かれる=良いこと」という経験をたくさん積んだことで、後天的に身についた感覚なのです。
犬が「抱っこしないでほしい」と言っている時のサイン
そうは言っても、犬にもその時々の事情があります。
「今は抱かれたくない」とか「この人には抱かれたくない」といった意思を示し、抱かれることを拒否することもあるでしょう。
まずは、抱っこされたくない時に見せる犬のサインを知っておきましょう。
1.逃げ出す
最もわかりやすいのが、逃げ出してしまうという行動です。これから行く場所が「嫌な場所」であると知っている、いつもと異なる飼い主さんの様子に警戒しているなど、理由はさまざまですが、これから起こることに対して不安を感じ、警戒していると思われます。
また「抱っこされるといつも嫌な場所に連れて行かれる」とか「抱っこされるといつも痛い思いをする」など、抱っこそのものに悪いイメージを抱いていることもあります。
2.抱こうとして触った瞬間甲高い声で叫ぶ
抱こうとして愛犬の体に触れた瞬間、甲高い声で「キャン!」と叫ぶような場合は、体に痛みを感じているサインの可能性が高いです。
無理に抱き上げようとせず、優しく全身をチェックし、痛みを感じているようであれば動物病院で診てもらうようにしましょう。
3.顔を背ける
抱っこをしようとして近づくと顔を背ける、または抱っこされたものの、顔を背けて目を合わせようとしないという場合は、抱っこをしてほしくないというサインです。
他にも、耳を倒している、尾を巻き込んでいる、目に白い膜が見えた状態である、口の周囲を舐め続けるといった様子を見せて、いつまでも落ち着かないようなら、抱かれていることに不快感を感じているサインです。
4.体をのけぞらせる
もっと積極的に「抱かれたくない」という意思表示として、体をのけぞらせたり、飼い主さんに攻撃的な態度を取ることもあります。唸り声を出すこともあります。
トラブルを避けるために飼い主が取るべき行動
飼い主さんが愛犬を抱っこする意味は、愛情表現だけではありません。
日常生活の中で、犬が嫌がったとしても、どうしても抱っこをしなければならない以下のようなシーンに遭遇することもあります。
- ワクチン未接種の子犬を外に連れ出す時
- 愛犬が慣れていない場所に行く時
- 混雑した人混みの中
- 車や自転車が間近を通り過ぎるような通り
- すれ違った他の犬と喧嘩になりそうな時
- 災害時等の避難行動
- 看病や介護のため
上記のように、愛犬の身を守り安全な場所に移動しなければならない時や、周囲に迷惑をかけないためには、どうしても抱っこをしなければならない時もあります。その際、どのように対処すればよいのかについて考えてみましょう。
問題の対象となる場所から移動して落ち着かせる
どうしても抱っこを嫌がる場合は、おやつなどで愛犬の気をそらせる、愛犬を落ち着かせるための指示を出す等で愛犬が怖がっている対象から気をそらせて別の場所へ移動させましょう。
急を要する場合は、強引に抱き上げるしかない場合もあるでしょう。その場合も、乱暴な抱き方を避け、しっかりとアフターフォローも含めて抱っこに対して嫌なイメージを持たせないように気をつけましょう。
カートに乗せて移動する
ワクチン未接種の子犬を外に連れ出す場合や、痛みなどで抱っこができない状況の時、また行き先で抱っこをしなければならないようなシーンが予想できる場合は、犬用のカートに乗せて移動するという方法があります。
普段から抱かれることに慣らせておく
普段から抱っこを嫌がる子なのであれば、抱かれることに慣らせておくことも大切です。前述のように、愛犬の身を守るためにはどうしても抱っこしなければならないシーンも出てきます。「抱っこされると良いことがある」という経験をたくさん積ませるようにしましょう。
「抱っこされると嫌なことがある」という経験をすると、抱っこを嫌がるようになることがあります。「抱っこ=嫌なこと」という経験をさせないようにすることも意識しましょう。そのためには、正しい抱き方を身につけることも必要でしょう。
まとめ
飼い主さんとして、愛おしい愛犬を抱きしめたくなる心理はごく自然なものです。
しかし、犬にとっては「抱きしめられる」「抱っこされる」というのは、不自然な出来事です。なぜなら、犬同士では抱き合うという行為をしないからです。
とはいえ、日常生活の中で愛犬の身を守り安全な場所に移動するためには抱っこが必要なシーンも出てきます。また、看病や介護が必要になった時のことも考慮し、普段から抱っこに慣れさせておくことも大切です。
そのためには、犬の正しい抱き方を身につけることも大切でしょう。