農林業に被害を及ぼすランタンフライ駆除の研究
農作物の病気や害虫を探知するために働いている犬はたくさんいますが、このたび彼らの探知対象がまた一つ増えました。それはランタンフライ(日本名シタベニハゴロモ)という昆虫です。
ランタンフライは中国原産の蛾に似た昆虫で、アメリカでは農業や林業に深刻な被害を及ぼす侵略的外来種として恐れられています。
ランタンフライが70種類以上の植物を食べて栄養を奪うだけでなく、分泌物や排泄物がカビの素になったり、アリやスズメバチといった他の害虫を引き寄せるなどの被害をも引き起こします。
アメリカ東海岸からイリノイ州まで広範囲で果樹などに大きな被害を及ぼしており、見かけた場合にはすぐに駆除するよう呼びかけられています。
このランタンフライの被害を駆除するために犬に手伝ってもらう研究が、バージニア工科大学農業生命科学部とテキサス工科大学の研究チームによって行われています。
犬がランタンフライの卵を探知
バージニア工科大学の研究チームは、臭気探知犬の訓練のバックグラウンドを持つ研究者が災害救助犬の経験のある犬を訓練することで、ランタンフライの卵を探知することに成功しました。
この卵はとても小さく、植物の葉の裏側に産み付けられることが多いため目視で見つけることが困難です。しかし卵のうちに駆除し、繁殖を阻止することは被害を予防する上で非常に重要です。
犬がランタンフライの卵を見つけるための訓練は他の嗅覚探知と同じで、ある特定の臭気が犬にとって価値があると覚えてもらうものです。美味しいもの、楽しいことなど犬にとっての良いものと臭いを結びつけることで、犬は「この臭いを探して見つけたら何か良いことが起きる」と学習します。
研究者が訓練した犬は、高い精度でランタンフライの卵を見つけて知らせることに成功しています。
一般の飼い主と犬を探知犬として募集
特定の臭いとご褒美を結びつける訓練方法は、ノーズワークというドッグスポーツとして一般の家庭犬や飼い主にも広まっています。このような背景から、研究チームはランタンフライの卵の検出に協力してくれる犬と飼い主のチームの募集に踏み切りました。
一般から募集することで、より多くの犬に参加してもらい、より多くの卵の検出が期待できます。これは募集する側のメリットですが、参加する飼い主にも愛犬といっしょに楽しみながら地域社会に貢献できたり、臭気探知のトレーニングは犬の行動を良い方向に変化させるといったメリットが考えられます。
研究チームは将来的にはランタンフライ探知のハンドラーのネットワークを構築し、ランタンフライやその他の外来種に対する市民ベースの探知プログラムを作ることを意図しているそうです。
まとめ
アメリカ東海岸を中心に農業や林業に大きな被害をもたらしている侵略的外来種の昆虫ランタンフライ(シタベニハゴロモ)の卵を探知する犬の研究が始まり、参加犬を一般募集しているという話題をご紹介しました。
この昆虫は日本でもすでに確認されており、見かけ次第駆除するよう呼びかけられています。人体や動物への直接の害はありませんが、庭木などにスズメバチを引き寄せることもありますのでお気をつけください。
《参考URL》
https://vtx.vt.edu/articles/2023/04/cals-spottedlanternfly-dogdetection.html