歯科治療とセラピードッグの研究
セラピードッグの存在は一般にも広く知られ、中でも医療現場での活躍は、多くの人がセラピードッグの仕事のメインとして思い描くものではないでしょうか。
小児病棟への訪問、抗ガン剤治療中の人への付き添い、カウンセラーとのセッションへの同席など、セラピードッグは広い範囲で活躍しています。
しかし歯科治療とセラピードッグについての研究は数が少なく、研究におけるサンプル数も小さいものです。そのような状況の中、歯科治療におけるセラピードッグの役割を調査した新しい研究結果が、アメリカのコロラド大学デンバー校歯学部の研究チームから発表されました。
歯の治療に不安を感じる退役軍人を対象に調査
歯科治療の際にセラピードッグの存在が助けになると考えられるのは、患者の不安感です。歯の治療に対する不安や恐怖のため、歯科医への受診を躊躇する人も少なくありません。このようなことを回避するためにも、歯科治療中の不安の軽減は重要なテーマです。
研究チームは、軍隊を退役した人に歯科治療での不安を訴える人が多いことに注目し、退役軍人の患者を対象にしてセラピードッグが不安軽減にどのくらい効果があるのかを調査しました。
対象となった患者は20人で、10人の治療時にはセラピードッグが同席、残り10人の治療時には犬が同席せずに、治療中の脈拍や血圧が計測されました。治療は歯石除去や定期検診、義歯の装着、詰め物など多岐にわたりました。
犬はセラピードッグの認定を受けたジャーマンシェパード1頭で、治療中は患者の治療用椅子の隣に座っていました。
セラピードッグが脈拍を低下させ、患者さんの評判も上々
治療中の不安感やストレスの指標となる脈拍や血圧の測定結果は、セラピードッグが同席したかどうかで違いを示しました。
犬が同席した患者の平均脈拍は64.5/分、同席しなかった患者では76.0/分でした。血圧では収縮血圧の平均値が、犬同席の患者では131.75、犬が同席しなかった患者は136.75でした。
血圧の方は有意と言えるほど低くはありませんが、脈拍は犬が同席した場合に有意に低くなっていました。
また局所麻酔の際に犬がいる場合には脈拍が安定し、犬がいない場合は不安定であることも確認されました。一般的に歯科での局所麻酔は不安を感じる人が最も多い場面だそうです。
犬が同席した患者のほとんどは、治療中に自然と犬の頭に手を置いていたことも確認されました。
この調査はサンプル数が非常に小さいものですが、セラピードッグが同席した患者からも高い効果を感じたという声が寄せられ、同大学歯学部のクリニックにセラピードッグが来ることが決定したそうです。
また同歯学部で根管治療などの歯内療法を行うクリニックでも、セラピードッグ導入が検討されているということです。根管治療は患者が最も不安を感じる処置のひとつで、患者が予約に現れない割合が最も高いのだそうです。
まとめ
歯科治療の際に不安を感じる人を対象にセラピードッグの効果を調査したところ、セラピードッグの存在が治療中の脈拍を低下安定させ、患者からも「落ち着いていられた」という声が寄せられたという結果をご紹介しました。
歯の治療というのはたしかに気の重いものですし、治療用の椅子に座ると常にドキドキしているという感じはよくわかります。そんな時にそばに犬がいてくれたら気持ちが和らぐだろうと思いますし、何より治療に行く足どりが軽くなりそうですね。
https://news.cuanschutz.edu/news-stories/can-thearpy-dogs-improve-access-to-dental-care