培養肉を使ったペットフード研究の現在

培養肉を使ったペットフード研究の現在

ヴィーガンや昆虫食など従来のタンパク源とは違うペットフードに続き、培養肉を使ったペットフードの研究も進んでいます。培養肉ペットフードの現状をご紹介します。

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ペットフードに使われる食肉と地球環境

地球に乗ったチワワのイメージ

『サスティナビリティ=持続可能性』という言葉は、あらゆる分野で目にするようになりました。ペットフードもまた例外ではありません。

現在のペットフードの主流は肉類を原材料にしたものです。2017年にカリフォルニア大学LA校が発表した研究では、ペットフードに使われる食肉は生産量の25%を占めているとも言われています。

食肉産業が環境に与える環境へのインパクトの大きさは長年指摘されており、将来にわたって現在と同じだけの食肉が供給できる保証はありません。

そのため植物性の原材料のみを使ったヴィーガンフードや、養殖のためのコストが低い昆虫を使ったペットフードなどが開発され、すでに市販されています。

しかし犬や猫にとっては、長年にわたって食べてきたタンパク源である肉類が理想的であると考える人は少なくありません。犬や猫の食性に合い、持続可能性という面からも考えて研究されているのが、『培養肉』を使ったペットフードです。

培養肉とはどんなもの?

培養肉のラボのイメージ

培養肉とは、牛、豚、鶏などから取り出した少量の細胞群を組織培養して作る肉のことです。取り出される細胞はそれぞれの動物の可食部からごく少量採取され、動物への負担は最小限に抑えられます。

取り出された細胞は増殖が速やかに行われる培地に入れて育てます。バイオリアクターの中で細胞を成長させ、必要な栄養素を加えて「食肉」を作り上げます。

培養肉を使ったペットフードを研究中のアメリカの会社Because Animals社によると、約3週間で牛を2年半育てて得られるのと同じ量の肉を作ることができるとのことです。培養肉の味や外見は挽肉に近く、そして栄養成分は従来の食肉と同じだということです。

培養肉のペットフードが実用化されるのはいつ頃?

4種類のペットフード

培養肉はもともと、人間の食糧危機対策として研究が始められたものです。世界中で数多くの企業や研究所が携わっていますが、公式な承認を得ているものはまだ多くありません。

アメリカでは2022年に米国食品医薬品局がUpside Foodsという会社の培養鶏肉に対して、人間の食用として安全であるという認可を出しました。今のところアメリカで認可を得ているのはこの1社のみです。同社が培養肉を販売するためにはさらにアメリカ農務省の承認を得る必要があります。

培養肉を使ったペットフードの会社はアメリカですでに数社が立ち上げられていますが、今のところどの会社も食品医薬品局の認可を得るには至っていません。

しかしペットフードの原材料は、人間用の食肉と違って成形などの工程が必要ではありません。前述のBecause Animal社や、もう一つの培養肉ペットフードの会社 Bond Pet Foods社は2025年頃の販売を視野に入れているようです。

培養肉には政府の認可の他に、もうひとつ「価格」という高いハードルがあります。現在の培養肉製造設備ではコストが非常に高くなるため、製品価格も高価にならざるを得ません。

シンガポールは今のところ世界で唯一の培養肉販売を許可した国ですが、同国の会員制高級レストランで提供されるチキンナゲットは3個で約3,000円だそうです。ペットフードではここまでではないにせよ、発売当初は高価なものになるのは避けられないでしょう。

価格の問題は認可される企業が増え、消費者の購入が増えれば徐々に変わっていくと考えられます。

まとめ

フードを食べるゴールデンレトリーバーと猫

未来の食糧危機を回避するために世界中で研究が進められている培養肉。その培養肉をペットフードに使う研究も進められているが、今はまだ販売されているものはないという現状をご紹介しました。

培養肉は環境への影響が小さく、家畜の福祉の点からも理想的な代替タンパク質であるという声がある半面、「研究室で作られた肉」に対して懐疑的な意見も有ります。

そう遠くない将来に手の届く価格帯の培養肉フードが店頭に並ぶ日が来た時、皆さんは愛犬や愛猫のために手に取ってみられるでしょうか?(ちなみに私はきっと手に取って検討します。)

《参考URL》
https://www.bondpets.com/press/
https://becauseanimals.com

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