犬との暮らしが若い世代に与える影響の研究
犬との暮らしが人々の心や身体に良い影響を与えることについての研究はたくさんあります。しかしそれらは中高年または幼児が研究対象になっているものが多く、若い世代の飼い主に関するものはほとんどありません。
ハイティーンから20代前半くらいの若い世代が犬と暮らすことで、行動や認知にどのような影響があるのかはほとんど何もわかっていません。
このたびカナダのブロック大学の研究チームが、犬との暮らしが若い世代に及ぼす影響を研究する一環として調査を実施しました。17歳から25歳の犬の飼い主を対象に、「犬の望ましくない行動にどのような認識を持っているか、どのように対応するか」というテーマで聞き取り調査を行い、その結果が報告されました。
犬の問題行動への若い世代の対応を調査
調査の目的は、若い世代の人々が愛犬の望ましくない行動にどのように対処しているのか、またその対応が効果的だと認識しているのかを知ることでした。
調査への参加者は、過去の研究で募集した人の中から選ばれた17歳から25歳の7名と、彼らの愛犬(全員が2年以上一緒に暮らしている)でした。
過去の研究の際に、それぞれの参加者の犬の性格、参加者と犬の関係性、犬への愛着などについてはすでに回答が得られています。
インタビューでの質問項目は次のようなものでした。
- 犬が望ましくない行動(吠える、攻撃性など)を見せた時にどのように考えますか
- 犬が望ましくない行動を見せた時にどのように感じますか
- 犬が望ましくない行動を見せた時にどのような戦略で対処しますか
- 犬の望ましくない行動に対する対処方法は、身近な人との問題への対処と似ていますか
犬の問題行動には「積極的なアプローチ」が多数
7名の参加者のほとんどは、愛犬の望ましくない行動に対して中程度の不快感を示しました。1名だけが重度の不快感を示しましたが、この参加者の愛犬は攻撃行動を含む重度の問題行動を示していました。
全般に愛犬の問題行動が深刻であればあるほど、飼い主に強い感情が引き起こされていました。
犬への対処方法は、大多数の参加者が「実践的なアプローチを積極的に行う」と答えました。具体的には、プロのトレーナーとの連携、正の強化を使ったトレーニング、犬の側に居て問題から意識を逸らしてやる、などが挙げられました。
彼らが言う「積極的で実践的なアプローチ」とは、トリーツを使って望ましい行動を強化することであり、体罰など嫌悪的なものではありません。
また、一部の参加者は自分が取った対処方法について否定的な自己認識を示していましたが、それを犬の問題行動に対する否定的な感情にすり換えることはしていませんでした。
犬への対処方法と身近な人間関係への対処方法には共通点が多く見られました。例えば、ある参加者は身近な人との問題を避けるため回避的なアプローチを取っており、愛犬の問題行動に対しては「受け入れる」という選択をしていました。
また犬に対して積極的な戦略を取ろうとする人は、人間関係においても直接向き合うスタイルが見られました。
この研究のサンプル数は非常に少ないため今後さらに研究が必要ですが、調査結果は犬のどのような行動が若い世代のストレス源になりやすいかなどを掘り下げるための手がかりとなります。
このような情報は心理カウンセラーなどのプラグラムでの活用、動物保護団体が飼い主候補に情報提供をする際などに役立てられます。
まとめ
10代後半から20代前半の犬の飼い主が、愛犬の問題行動にどのように対処しているのかを聞き取り調査した結果をご紹介しました。
サンプル数は小さいものの綿密なインタビューから得られた調査結果は、参加者は愛犬の問題行動に対して上手く対処している傾向が見られました。しかしこれは「犬に関する学術研究に積極的に参加するような飼い主」というスクリーニングの結果である可能性もあります。
10代後半から20代前半という成人期は、幼少期とはまた違う人格形成の時期でもあります。この時期に犬と関わることがどのような影響を及ぼすのかは今後さらに研究が必要だということです。
《参考URL》
https://doi.org/10.1079/hai.2023.0011