ドッグフードも多様化、ホームメイドタイプやヴィーガン対応
犬のための市販フードと言えば、エクストルード(押し出し成形)方式で作られたドライフードが主流です。このタイプのフードは利便性に優れていますが、高温調理によって栄養が損なわれやすいとも言われています。
しかし、この10年ほどの間にフリーズドライやエアドライのフード、さらに一見すると手作りの食事のように見えるホームメイドタイプのフードなどが次々に市場に登場し、人気が高まっています。
これらのフードは従来のドライフードに比べて調理温度が低く調理時間も短いため、栄養素の損失が少ないことが謳われています。
また飼い主の信念や見解が多様化するにつれ、動物性食品を使用しないヴィーガンフードも増えてきました。上にあげたようなホームメイドタイプのフードにもヴィーガン対応のものがあります。
この度アメリカのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の動物科学の研究チームが、ホームメイドタイプのヴィーガンフードと、従来のドライフードの消化率を調査し比較した結果を発表しました。
ホームメイドタイプのヴィーガンフードの消化率を調査
研究チームが調査したのは、3種類の市販ドッグフードでした。2つはホームメイドタイプのヴィーガンフードで、穀物が使用されたものと穀物フリーのものでした。
これらのフードはヒューマングレードの原材料が使用されており、人間の食事と同様の方法で調理されています。原材料は全て植物性で、豆類、イモ類、野菜や果物を獣医学栄養士が調合した総合栄養食です。
もうひとつはチキンをベースにした従来のドライフードで、こちらも総合栄養食(フードと水だけで完全でバランスの取れた栄養が摂取できる)です。
フードを与えられたのは健康なメスのビーグル12頭で、普段食べているフードから移行する適応期7日間、調査のためのフードを15日間与えられ、消化率を調査するための糞便採取、血液検査のための採血が行われました。
ヴィーガンフードによっていくつかの変化があった!
3種類のフードの消化率はいずれも高いものでした。タンパク質、脂肪、炭水化物の3大栄養素の消化率はすべて80%以上でした。
同研究チームは以前にヴィーガンではなく、肉類を使ったホームメイドタイプのドッグフードの消化率を調査したことがあります。その調査時は、ホームメイドタイプではドライフードに比べて便の量が劇的に少なくなったのですが、今回はホームメイドタイプのフードとドライフードで、便の量に大きな違いはありませんでした。
ヴィーガンフードでは豆類やイモ類など食物繊維豊富な原材料が多く使われているので、これは自然なことです。
食物繊維の量が関連していると考えられる他の変化は、糞便中のフェノールとインドールの濃度で、ヴィーガンフードを食べた犬では減少していました。この2つの物質は便のニオイの原因となるもので、ヴィーガンフードは犬の便のニオイを軽減すると考えられます。
血液検査の結果では、ヴィーガンフードを食べた犬は血中脂肪の指標である中性脂肪とコレステロールが有意に低下していました。これは犬が過体重や肥満である場合には特に有効だと考えられます。
研究者は、総合栄養食として専門家が処方したヴィーガンフードは、高い栄養消化率、望ましい便の特性、特定の血中代謝物に良い変化をもたらすことを示したと述べています。
まとめ
市販のホームメイドタイプのヴィーガンフードと、ドライフードの消化率の調査や給餌後の血液検査を実施したところ、いくつかの良い変化が示されたという結果をご紹介しました。
気をつけなくてはいけないのは、ホームメイドタイプではなく本当に自家製のヴィーガン食では犬が必要な栄養素をきちんと摂取することは非常に難しいということです。
愛犬にヴィーガン食を与えたいと考えている方は、信頼できるメーカーを選んだり、犬の栄養の専門家に相談するなどの対策を取ってください。
《参考URL》
https://doi.org/10.1093/jas/skad093
https://aces.illinois.edu/news/u-i-study-gives-thumbs-carefully-formulated-vegan-diets-dogs