社会の中での犬の役割は人々の犬の扱いと関連しているという研究結果

社会の中での犬の役割は人々の犬の扱いと関連しているという研究結果

犬は社会の中で色々な役割や機能を担っています。さまざまな異なる社会で犬がどのように扱われるかにも違いがあり、それが犬の役割とどのように関連しているかという研究結果が発表されました。

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世界のさまざまな違う社会での犬の役割を調査

子どもと遊ぶ子犬たち

犬の認知や、犬と人間との関わり合いに関する研究は数多く行われ発表されています。しかしそのほとんどは「WEIRD」と呼ばれる社会で研究されたものです。

WEIRDとはWestern、Educated、Industrialized、Rich、Democraticの頭文字で、つまり西側諸国の教育が普及した、工業化された豊かで民主主義の社会で生きる犬について研究したものです。

日本も含めてこのWEIRDに当てはまる社会では、犬たちはさまざまな役割や仕事のために飼育されており、これらの役割が犬と人間の関係、犬の行動や認知に影響を与える可能性があります。

しかし、世界中で生きている犬の多くはこのような社会とは違う環境にいます。文化や環境が違えば、犬の役割や人間との関係性も変わると考えられます。

そこでドイツのマックス・プランク研究所の地球人類学と進化人類学の研究チームが、世界各地の社会における犬と人間の関係をより深く理解するための調査を行い、その結果を報告しました。

世界の124の地域で犬はどのように扱われているのか

荷馬車と歩く犬

調査のためのデータは、イェール大学が設立した世界中のさまざまな文化のデータベースである『eHRAF』から収集しました。eHRAFには、約2,500以上の地域の文化のデータが分類して収められています。

このデータベースから、アジア、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、オセアニアを広くカバーする124の地域の、犬に関する民俗学的データが調査されました。これらの地域は歴史上ほとんど接触がなかった社会が多く含まれるという条件で抽出されました。(日本も含まれています。)

各社会について犬が果たしている役割や、犬についての人々の認識が分析されました。犬の役割としては、「狩猟、警備、防衛、牧畜、運搬(ソリ犬など)」を5つの主要な役割機能として分類、その他の役割ではコンパニオン、害獣駆除、補助犬、救助犬、食用などが挙げられました。

さらに人間が犬をどのように扱うかを、以下の3つの指標で分類しました。

1.ポジティブな世話

犬に人間の食べ物を与える、子犬に授乳して育てる、室内で寝かせる、グルーミング、健康管理、トレーニングなどがここに分類されます。

2.ネガティブな扱い

犬に食事を与えない、医療が提供されない、犬への身体的虐待、定期的な淘汰行為などが分類されます。

3.人格化

犬に名前をつける、話しかける、埋葬や弔いを行う、家族や親友として扱うなどが分類されます。

犬に与えられた役割は、犬がどのように扱われているかを示している

羊と牧羊犬

犬の役割は世界各地の社会で大きく異なっていました。124の社会のうち108の社会では、犬は少なくとも1種類の役割を持っていました。

そのうち半数の54社会では、単一の目的で犬を飼っていました。48の社会では犬の役割は複数あり、6つの社会では5つの主要な役割に当てはまるものがありませんでした。

犬の役割と犬の扱いを分析すると、社会の中で犬が持っている役割の数が多いほどポジティブな世話や擬人化との関連が強く、ネガティブな扱いとの関連が弱いことが分かりました。

簡単に言うと、犬にさまざまな役割が与えられている社会では、犬は家族や友達としてポジティブに世話されている傾向が強いということです。

また犬に割り当てられた役割によって、犬の扱いにも違う傾向が見られました。例えば、犬が牧畜の役割を持っている社会では、ポジティブな世話が多く見られました。犬が狩猟の役割を持つ社会は、犬への擬人化の割合が高くなりました。

それぞれの社会の中の犬の扱いは画一的ではなく、77の社会では3つの指標の全てが存在していました。世界全体を見渡した時、犬と人間の関係は「人類最良の親友」といった単純なものではなく、世話を提供することでの見返りとコストという複雑なバランスがあることを示しています。

まとめ

町の中で休む野良犬たち

世界の124の社会で、犬に与えられている役割と犬がどのように扱われているかを分析した結果、人間が犬にさまざまな役割を与えている社会では、犬はポジティブに世話をされ、人間の家族や友だちのように扱われている傾向があることをご紹介しました。

この研究は、犬と人間の関係性が世界各地で多様な形があることの文化的な要因を説明するための手がかりとなる可能性があります。また数多く発表されている犬の認知や、社会的スキルが普遍的なものなのか、それとも犬が住んでいる社会の文化に影響されているのかを理解するために役立つと考えられます。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-023-31938-5

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