犬が尻尾を振る理由
犬は言葉を話せない代わりに、全身を使ったボディランゲージで私達に気持ちを伝えてくれています。例えば「しっぽを振る」という仕草は、犬の代表的な仕草のひとつではないでしょうか。
犬がしっぽを振っていると、多くの方が(愛犬は今喜んでいるのだ)と考えます。確かに犬は、喜んでいる時にしっぽを振ります。
しかし、愛犬がしっぽを振りながら唸ってくるというシーンを経験し、(なぜ喜んでいるのに唸っているのだろう?)と不思議に思われた飼い主さんもおられるのではないでしょうか。
しっぽを振る理由は「喜び」だけとは限りません。犬は基本的に、興奮している時にしっぽを振ります。そのため、ポジティブな興奮の「喜び」だけではなく、ネガティブな興奮の「怒り」や「恐怖」といった感情の時にもしっぽを振るのです。
犬が唸る理由
犬が唸っているのを見て、「怖い」と感じる方は多いでしょう。多くの場合、犬は相手を威嚇するために唸ります。つまり、唸っている犬を見て「怖い」と感じるのは正常な反応です。そのため先の例では、「しっぽを振っている=喜んでいる」犬が「唸っている=怒っている」のはなぜだろう、と不思議に感じたわけです。
多くの場合、犬が唸る時には威嚇の意味があります。しかし、犬同士でじゃれ合って遊んでいる時、思わず唸り声のような声が漏れてしまうことがあるのです。この時は怒って相手を威嚇するための唸りではないため、放っておいても喧嘩に発展することはありません。
ただし、それ以外の唸りには「威嚇」の意味が多分に含まれているため、そばにいる飼い主さんは気を付ける必要があります。
犬が威嚇する理由には、「縄張りや自分の所有物を守るため」「家族を敵(不審者)から守るため」「恐怖から」「要求がある」「体調が悪いから」という理由があります。
また最近は、科学的にも犬には思春期があり、人間と同じように「反抗期」になることが判明しました。つまり、反抗期に一過性で見せる「反抗」から唸っている場合もあるようです。
犬が尻尾を振りながら唸ってくる心理
では、冒頭の「しっぽを振りながら唸っている時」の犬の心理はどのような状態なのでしょうか。
1.犬同士の遊びが楽しい
楽しくて思わず「グーッ」といったような唸り声を出すことがあります。
嬉しい時はしっぽだけではなくお尻も動かしながらくるくると回転させるようにしっぽを大きく振ります。
また、興奮はしていますが怒っているわけではないので、全体的にポジティブな様子が見られます。
2.威嚇
お尻は動かさずにしっぽだけをゆっくりと、動かします。ただし、動きは硬い感じがすることが多いです。緊張が伴っているため、全身に力が入りこわばった様子が伺えます。
このような状態で相手を見つめながら唸っている時は、強い警戒心を伴った威嚇だと考えられます。
3.恐怖
しっぽを振りながら後退りしたり耳が立っている場合は、恐怖を感じて身を守ろうとしています。
体重の重心が後ろ側に置かれたような状態で体を低くし、しっぽも低い位置で振りながら唸っていることが多いです。
怒っている時との見分け方
怒っている時には全身がこわばっているだけではなく、歯茎ををむき出しにしていたり、鼻にシワを寄せていたりするなど、明らかに表情や全身から険しい様子が伺えます。こういう状態の時は、むやみに手を出して触ろうとしないことです。
愛犬を落ち着かせようとしてつい手を出してしまう飼い主さんがおられますが、興奮状態の時に視野の中に手が入ってくると、犬は本能的にかみついてしまうことがあるので、普段の信頼関係があったとしても注意が必要です。
まとめ
犬は、しっぽをはじめとして、耳、ひげ、顔の表情、姿勢や声などを使い、全身で気持ちを表現します。ごく一部だけを見て「こう感じている」と決めつけてしまうのではなく、全体の様子から気持ちを読み取るようにしてみましょう。
また、犬は元々警戒心が強いということもよく考慮に入れましょう。
恐怖心や威嚇の意図が見られる様子の場合は、むやみに愛犬を撫でようとしないでください。本能的にかみついてくる場合がありますので、注意が必要です。
犬と人では、同じ刺激に対しても受け止め方が異なるということを理解しておくと、より愛犬の気持ちに寄り添いやすくなるでしょう。