匂いを探知する犬に必要な特性を探る
そのずば抜けた嗅覚を使って探知の仕事をする犬たちは、さまざまな分野で私たち人間を助けてくれています。警察犬による臭気追跡、爆発物や麻薬を見つけ出す探知犬、特定の病気のスクリーニングや絶滅危惧種の生き物の保全など、その分野は多岐にわたります。
このような仕事をするためには単に嗅覚が優れているだけでなく、身体、行動、認知の面で適性を備えている必要があります。どのような特性が探知犬に適しているのかを判断することは、任務の遂行と動物福祉の面でも重要です。
この度、オーストラリアのニューイングランド大学、ラ・トローブ大学、シドニー大学の研究チームが、嗅覚を使った探知犬の選定や訓練に必要な特性を調査し明らかにしたと発表しました。
現役の探知犬について性格や実績を調査
調査対象となったのは、オーストラリアでバイオセキュリティ探知犬として現役で働いている犬たちです。バイオセキュリティとは、家畜や農作物への病原体の感染や病気の蔓延を防ぐための取り組みや体制のことを指します。
まず最初に、現役の探知犬のハンドラー、犬舎スタッフ、トレーナー、管理者に対して少人数でのグループインタビューを実施して、バイオセキュリティ探知犬として重要な資質などについてそれぞれの意見が集められました。
グループインタビューで明らかになったテーマは、犬と接している担当者へのアンケート調査の項目を作成するために使用されました。
アンケートはオーストラリア農業・水・環境省のバイオセキュリティ探知犬のハンドラー全員に配布され、個々の探知犬について、犬の性格および行動特性、犬の作業実績の評価について回答を依頼しました。結果、現在働いている犬の88%にあたる36頭についての回答が得られました。
探知犬に重要な7つの指標
探知犬のハンドラーによるアンケート回答を分析した結果、次の7つの指標が明らかになりました。
- 1. 探知への意欲(活動の際の熱心さや積極性)
- 2. 情緒の安定
- 3. 探知への喚起(活動の際のエネルギーやペース)
- 4. 食べ物への意欲
- 5. 遊びへの意欲
- 6. 探知への主体性
- 7. 探知への集中
中でも探知活動への意欲と喚起の強さは、作業実績の高評価と強く関連していました。食べ物や遊びへの意欲が強いことは初期訓練性や条件付き探知意欲に関連します。
この調査は現役の探知犬が対象になっているので、成功例に基づいた調査結果と言えます。バイオセキュリティ探知犬は全般的に探知意欲、情緒安定性、食物への意欲の評価において一貫して高いスコアを示していました。
この調査によって得られた知見は、探知犬の選定や訓練についての意思決定に役立つと考えられます。
まとめ
オーストラリアの現役のバイオセキュリティ探知犬とハンドラーへの調査から、探知犬にとって重要な7つの指標が明らかになったという報告をご紹介しました。
嗅覚を使っての探知という重要な任務の性質上、パフォーマンスの高さを追求するために適性のある犬を選定することは非常に大切です。高度な訓練には費用もかかるので、無駄なコストを抑える意味でも、このような研究結果は役に立つものです。
そして忘れてはならないのは、適性のない作業の訓練を続けることは動物福祉を損なうということです。この調査では、遊びへの意欲の高さが作業への適性に関連していることが分かったので、探知犬の訓練には遊びの要素が上手く組み入れられていることがわかります。これらは一般の飼い主として、心に留めておきたいことです。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani13030504