飼い主に話しかけられた時の犬の心理
飼い主さんが愛犬に話しかけると、犬は一所懸命に飼い主さんの言葉を聞こうとして、じっと見つめたり首を傾げたりしながら飼い主さんの言葉を聞いています。しかし、当然ですが犬は言葉を理解できません。人間とは脳の構造が違うのでそれは仕方のないことです。
だからといって、飼い主さんの伝えたいことが理解できないわけではありません。ハンガリーの大学で、神経科学の研究者が犬に話しかけた時の言葉とトーン、そして犬の脳の反応をMRIで分析した結果、犬の脳が人の脳のと同じように反応することが分かりました。
まず声のトーンに反応し、次に言葉の意味を理解する複雑な工程に進みました。犬も人も、まず声のトーンから話し手の感情的なメッセージを受け取り、次に学習で得た手がかりを元に、話の内容を理解しようとするのです。
犬が学習で得た手がかりというのは、声色、単語の発音、そしてその時の状況を関連付けて覚えている「単語の意味」だと考えられています。正確には単語の意味というよりも、「音の意味」という感じかもしれません。
いずれにしろ、飼い主さんが愛犬に対して、同じような状況で同じ単語を使って話しかければ話しかけるほど、多くの単語を覚えられるでしょう。
では、飼い主さんに話しかけられた時の犬は、どのような心理なのでしょうか。
1.幸せ
飼い主さんと愛犬との間には、人間の母子の間に築かれる愛情とよく似た絆が結ばれるということが分かっています。アイコンタクトをとったり話しかけられることで、飼い主さんも犬も、共に幸せホルモンといわれるオキシトシンの分泌量が増え、多幸感を覚えます。
つまり、飼い主さんから話しかけられている時の犬の心理は、嬉しさや喜びを味わって幸せなのだと考えられます。
2.安心(不安解消)
ご家庭ごとに生活スタイルが異なるため、終日飼い主さんと一緒に過ごせる犬もいれば、長い時間ひとりで留守番をし、飼い主さんと一緒に過ごせるのは僅かな時間しかないという犬もいるでしょう。
後者の場合、犬は家の中で長時間をたったひとりで過ごすことになります。そのため飼い主さんが帰宅され、自分に話しかけてくれることで留守中の不安が解消され、安心感に満たされることでしょう。
3.飼い主さんの感情に同調
犬には、人間に共感する力があることが分かっています。この犬が持っている共感力は、セラピー犬の癒やす力の源であるとも考えられています。比較的最近、日本の大学の研究で、犬は飼い主さんの短い間のストレス変化にも共感できることが、データとして示されました。
飼い主さんが楽しい時に話しかければ愛犬も楽しいと感じ、飼い主さんがイライラしながら話しかければ愛犬も不安になりイライラすると考えられます。愛犬に話しかける場合は、飼い主さん側の感情にも気を付ける必要がありそうです。
愛犬に話しかける時は優しく穏やかに
前述のとおり、犬はことばを音として捉え、発音や声色と状況を関連付けて意味を覚えていきます。また、犬は飼い主さんの口調や行動、表情から飼い主さんの感情を感じ取り、共感する能力も持っています。
愛犬に話しかける時には、まず愛犬に不安や恐怖感、緊張感を与えないような話し方を意識すると良いでしょう。具体的には、明るい気分で優しく穏やかに話しかけるということです。
犬は、あまりにも高くてキンキンとした声や、唸るような低くて大きい声を嫌う傾向があります。そのため、声が高くてキンキンとしている女性の場合は少し低めの声で、声が低くて大きい男性の場合は少し高めの小声で話しかけると、愛犬はより安心できるでしょう。
また同じ言葉を発した場合でも、話し方や声色がいつもと違っていたり、いつもとは異なる状況で発した場合には、理解できないことがあります。愛犬に指示を出す、褒める、駄目だと伝えるという場合は、常に同じ声色、強さ、単語を使うように意識することも大切です。
まとめ
犬は、飼い主さんから話しかけられることで、幸せになったり安心できたりすることが分かりました。
愛犬に話しかけることには、確かにメリットが多いと思われます。しかし、場合によっては飼い主さんの感情に共感し、不安や恐怖、緊張感を覚えることもあるようです。
飼い主さんの感情は声色に現れやすいので、興奮していたり怒っていたり機嫌が悪かったり落ち込んでいたりする時には、気持ちを切り替えてから話しかけるように心がけると良いでしょう。