犬や猫と暮らすことは飼い主の睡眠に影響する?
犬や猫などコンパニオンアニマルと暮らすことは、心身の健康に良いという報告がたくさんある一方で、動物の飼育が負担になるという報告もあります。中でも睡眠の質に関する研究は数多く発表されており、その結果はさまざまです。
愛犬や愛猫の存在がもたらす安心感や運動量の増加から、睡眠の質が上がるという場合もあれば、人間と動物の睡眠サイクルやスタイルの違いのせいで、睡眠の質が下がることもあるからです。
このたびアメリカのリンカーン・メモリアル大学獣医学部の研究チームが、犬または猫を飼育していることと睡眠の質や睡眠障害との関連があるかどうかを調査し、その結果を発表しました。
健康栄養調査のデータからペット飼育と睡眠の質の関連を探る
この調査は、2005〜2006年のアメリカ国民健康栄養調査のデータに基づいて行われました。アメリカ人の健康と栄養に関する情報を収集するための、アメリカ全国を対象としたものです。
2005〜2006年のデータが使用されたのは、家庭のペットに関する情報を収集した健康栄養調査のうち最新のものだったからです。
犬猫の飼育状況が不明など条件に合致しないデータを除いて、最終的に5,499名が調査対象データとなりました。このうち犬を飼っている人は1,549名、猫を飼っている人は963名でした。
健康に関する調査データの中で、いびき、睡眠障害の診断、寝つきの悪さ、夜中に目が覚める、早朝に目が覚める、眠気が取れない、睡眠導入剤の使用、睡眠中に脚がつる、平均睡眠時間6時間未満など、睡眠に関する項目について犬猫の飼育との関連を統計調査しました。
犬や猫を飼っている人は寝つきが悪く睡眠不足気味
分析の結果、犬を飼っている人は飼っていない人に比べて、睡眠障害の診断、寝付きの悪さ、眠気が取れない、十分な睡眠時間が取れない、睡眠導入剤を使用している、睡眠中に脚がつる、といった項目で高い割合を示しました。
猫を飼っている人は飼っていない人に比べて、いびき、睡眠障害の診断、寝つきの悪さ、十分な睡眠時間が取れない、睡眠中に脚がつる、の割合が高くなっていました。
また、犬の飼い主では寝付きの悪さと睡眠障害の診断の割合が特に高く、猫の飼い主では睡眠中に脚がつるという割合が特に高いこともわかりました。猫の飼い主と非飼い主の比較では、犬の飼い主と非飼い主を比較した場合よりも、睡眠の質の指標に差が小さいこともわかりました。
この調査では犬猫の飼育と飼い主の睡眠の質との関連は見出されましたが、因果関係についてまではわかりません。
またこの調査では、飼い主と犬や猫が一緒に寝ているかどうかは判断できませんでしたが、研究者は過去の研究からコンパニオンアニマルとの添い寝にポジティブな効果があることも述べています。
飼い主と動物の心理的なつながりの強さが睡眠の質を上げる可能性もあり、ここに焦点を当てた研究も有益だと考えられます。
今後さらに研究を進めることによって、睡眠障害の治療やコンパニオンアニマルの飼育方法の提案などに役立つことが期待されます。
まとめ
アメリカでの健康栄養調査のデータに基づいて分析したところ、犬や猫を飼っている人は飼っていない人に比べて睡眠障害や睡眠不足など、睡眠の質が低い割合が高かったという調査結果をご紹介しました。
愛犬や愛猫と暮らしている人にとっては耳の痛い報告ですが、確かに犬や猫に真夜中や早朝に起こされたり、添い寝のせいで身体が凝ったりといった経験は多くの人が持っているかと思います。けれど研究者も言及している通り、愛犬や愛猫との心のつながりが心と身体の両方に元気や安らぎをくれることもまた事実です。
このような調査結果を冷静に受け止めて、改善できる点を取り入れる指標としたいですね。
《参考URL》
https://www.cabidigitallibrary.org/doi/10.1079/hai.2023.0005