独立研究機関が発表したヴィーガン・ドッグフードの栄養評価

独立研究機関が発表したヴィーガン・ドッグフードの栄養評価

動物性の原材料を使っていないドッグフードの栄養と犬の体への影響を調査した結果が発表されました。メーカーによるものではない調査としては初めてのものです。

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ヴィーガンのフードは犬の健康に影響を及ぼすか?

ブロッコリーの入ったボウルと犬

ドッグフードの世界にも、ベジタリアンやヴィーガンの流れが浸透してきました。これら植物性のドッグフードが流通し始めた初期の頃は、飼い主の主義に合わせてという傾向が強かったのですが、肉や魚にアレルギーのある犬のためへと続き、近年はペットフードのサスティナビリティ(持続可能性)という面で関心が高まっています。

この2〜3年では、ベジタリアンやヴィーガンのドッグフードの栄養についての調査研究が行われ、「ベジタリアンまたはヴィーガンのドッグフードは栄養上の問題がなく、犬の健康に良い影響を与える」という報告が発表されています。

しかしこれらの調査研究は、植物性のペットフードを作っている会社が研究機関に依頼して行われたもので、信頼性の面で限界がありました。

そしてこの度、ペットフードメーカーからの依頼を受けたのではない、独立した研究機関によるヴィーガンフードの栄養と健康への影響についての調査結果が発表されました。

犬に1年間ヴィーガンフードを与えて調査

フードを食べているダルメシアン

研究を行なったのはアメリカのウェスタン健康科学大学獣医学部と、カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生学部の研究チームです。

この研究には、1〜11歳のさまざまな犬種の健康な家庭犬15頭が参加しました。15頭は調査開始以前に少なくとも1年間市販の肉類を主原料としたドッグフードを与えられていました。

犬たちは調査のために1年間ヴィーガンドッグフード(動物性原材料が全く使われていない完全植物性のフード)と、トリーツとしてヴィーガン犬用クッキーのみが与えられました。

犬たちが1年間与えられていたヴィーガンフードはエンドウ豆、ポテトタンパク、ビール酵母、雑穀などをタンパク質源として粗タンパク質24%、粗脂肪9%で米国飼料検査官協会(AAFCO)の栄養基準を満たしているものです。

調査開始時に犬たちは獣医師による健康診断、全血球計算(赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、赤血球恒数の測定)心臓バイオマーカー(心臓に負担がかかった際に血液中に放出される物質の量を測定)、血液中のアミノ酸濃度とビタミン濃度、尿と便の検査を受けました。また、調査開始後6ヶ月と調査終了時にも検査測定が行われました。

さらに研究者は毎月1回参加犬の飼い主に聞き取り調査を行い、健康状態や行動の変化について回答を集めました。

1年後の犬の健康状態と、その他の影響

聴診器を当てられている犬

1年間の給餌試験の間、6ヶ月目と12ヶ月目両方の健康診断において、全ての犬が健康であることが確認されました。15頭の犬のうち3頭が体重過多だったのですが、3頭は最終的に体重が減り、ボディコンディションスコアが改善していました。

血液検査、尿検査の結果も開始時、6ヶ月目、12ヶ月目で有意な変化は見られず、全犬の数値が正常範囲に収まっていました。これら血液や尿の検査は、認定された第三者機関によって有料で実施されました。

血液中のアミノ酸濃度では、10種類の必須アミノ酸は12ヶ月の時点でも基準値を満たしており、ヴィーガンフードによって全ての必須アミノ酸が供給されていたことが確認されました。

また過去に「豆類を使ったフードと拡張型心筋症の関連」が報告されたことがあり、豆類を主要なタンパク質源としているヴィーガンフードではこの点についても、タウリンの血漿濃度、L-カルニチンの血清濃度で検証されました。

タウリンもL-カルニチンも、必須アミノ酸ではありませんが欠乏すると拡張型心筋症のリスクと関連しており、拡張型心筋症の治療の補助食品としても使用されます。測定の結果、タウリンもL-カルニチンも12ヶ月の時点でわずかに増加していました。

心臓バイオマーカーの測定値からもヴィーガンフードが心臓に悪い影響を与えなかったことが確認されました。一部の犬では心臓の健康への良い影響があった可能性さえ示されました。

血液中のビタミン濃度については、調査開始の時点で15頭中7頭が基準値に達していなかったのですが12ヶ月後の時点では全ての犬が正常値を示しました。葉酸についても開始時点で6頭の犬が基準値に達していなかったのですが、12ヶ月後には基準値を下回っていたのは3頭になりました。

2017年の研究では食肉生産による環境コスト全体のうち、ペットフードに関連するものが最大で30%を占めると推定されています。犬の栄養や健康とは別に、ヴィーガンフードが二酸化炭素排出量の削減など、環境負荷の軽減に役立つことも認識されています。

まとめ

野菜に囲まれて座る犬

植物性原材料だけで作られたドッグフードを1年間与えられた犬たちの健康診断の結果から、ヴィーガンフードは犬たちの健康を保つための栄養を供給していると確認されたこと、一部の犬では健康状態が改善されたという研究結果をご紹介しました。

この研究はペットフードメーカーに関連していない独立した研究機関によるもので、調査期間も1年間とこれまでの同様の研究の中で最長のものです。

食肉など動物由来の食品のコスト上昇や気候変動危機の深刻化によって食料供給システムは大きく変化しつつあります。そのため植物由来の食品のみによって犬の健康を保つことができるという調査結果は大きな意味を持ちます。

《参考URL》
https://doi.org/10.1101/2023.02.18.525405

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