犬が「人間の病気」を察知する能力とは
犬が人間の病気を見抜くという能力は、犬と一緒に生活しているとなんとなく感じることがあるかもしれません。
お腹が痛かったり、ちょっとだるいなというようなとき、愛犬がそっと寄り添ってくれたり、いつもよりうんとおとなしくしていてくれたり、あるいは逆に全く寄り付かなくなったりというような経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
この人間の不調を見抜く能力、そのほとんどは彼らの嗅覚の働きと言われています。
犬の嗅覚が人間よりはるかにすぐれていることは有名ですが、その優れた嗅覚で、人間が病気の時に放つにおいのほんのわずかな違いを嗅ぎ取っている、と言われているのです。
この能力で実際にいま導入されているのが、「てんかん発作探知犬」や「低血糖アラート犬」「ガン探知犬」などです。これらの犬は「サービスドッグ」と呼ばれ、適性をみながら特別な訓練で育成されています。
人間の病気を教えてくれる犬
ではここからは、「サービスドッグ」と呼ばれている、人間の病気を察知できるお仕事犬について解説します。
てんかん発作探知犬
長年、犬が何らかの能力で、飼い主などのてんかん発作を予知するということは知られていました。しかしこの話には科学的な根拠がなく、まことしやかに噂されている状態が長く続いていました。『発作前のわずかな仕草を読み取っている』『微細な脳の電流を感じ取っている』などという説があったようです。
ところが、2019年3月に、ある学術誌に『犬はてんかん患者が発作を起こしたときのにおいを嗅ぎ取っていることが分かった』と発表されたのです。
論文の著者たちは5人のてんかん患者から発作時や休息時、運動時などさまざまな状態の時の汗を採取しトレーニングすることで、発作時の汗のにおいを嗅ぎ分けることができるようになることを突き止めました。
低血糖アラート犬
ケンブリッジ大学の研究チームが、『人間が低血糖になると、呼気中に含まれる微量な化学物質が増加する』ことを突き止めました。この化学物質のにおいを探知して血糖値が下がっていることを教えてくれるのが「低血糖アラート犬」です。
糖尿病の患者は「インスリン」という血糖値を抑制する薬による治療を受けています。しかしこの治療は低血糖になるリスクがあります。血糖値が急激に低下すると命に関わる危険な状態に陥ってしまうのです。特に寝ている間に低血糖状態になると、患者自身も気が付かないままなので大変危険です。
このようなことを防ぐために、低血糖アラート犬は呼気に含まれる化学物質を嗅ぎ分ける訓練がなされます。低血糖状態になりつつあるときは患者を起こしたり、特別に決まった動きをしたりして教えてくれるのです。
がん探知犬
こちらはアメリカの団体の研究だそうですが、『犬は人の尿からがん細胞の存在を察知することができる』と言われています。こちらも、犬がすぐれた嗅覚で尿中に含まれるがん細胞から発せられる化学物質のにおいを嗅ぎ分けているということです。
また尿中だけでなく、呼気からも同様にがん特有の化学物質を嗅ぎ分けることができるといわれています。
低血糖アラート犬と比較するとこちらの精度は非常に高く、肺がんの場合は99%嗅ぎ分けることができるということです。
まとめ
今回は、人間の「人間の病気」を察知する能力を持ったサービスドッグをご紹介し、改めて犬の持つ能力に驚かされましたね。
てんかん発作や低血糖はいつ起こるかわからないと日々緊張して生活しなければいけないストレスも大きいため、犬が側で教えてくれることで生活が安定したという声もあります。
今回ご紹介したような犬の驚くべき能力について、今後もより詳しい研究結果が待たれますね。