愛犬が飼い主さんを怖がるようになるNG行為
最近の研究から、『飼い主さんと飼い犬との関係は、母子の関係に近い』ということが分かっています。母子の間に築かれる関係のベースには、絶対的な安心感が欠かせないでしょう。
つまり、愛犬が飼い主さんのことを「怖い」と感じた時点で、この関係は成り立たなくなってしまうということです。だからこそ、愛犬を迎え入れたその瞬間から、多くの飼い主さんは愛犬との接し方に悩み、苦労されるのです。
ところが、人間と犬では、お互いに感覚も常識も異なった世界に住んでいるのが現実です。飼い主さんに悪気はなくても、犬に「恐怖」や「不安」を感じさせてしまう行動は意外と多いのです。まずは日頃から、愛犬を怖がらせないような接し方をすることが大切になります。
そうは言っても、具体的にはどうすればよいのでしょうか。実際、愛犬との間に母子の関係を維持したまましつけをしたり嫌がるお世話をしたりするための具体策は、愛犬の個性や飼い主さんの生活スタイル等に応じて異なり、これが正解というものはありません。
そこで今回は、愛犬が飼い主さんを怖がるようになるNG行為をご紹介します。くれぐれも以下のような行為は愛犬にはなさらないように注意しましょう。
1.力づくの対応
「きちんとしつけなければ!」という強い気持ちを持つことは大切ですが、だからといって力づくで対応してはいけません。ここでいう「力づく」とは、蹴る、叩くなどの体罰を与えたり、リードを強引に引っ張ったりといったような、愛犬に痛みを与えるような対応のことです。
また、過去に人から叩かれた経験のある犬は、飼い主さんが撫でようとして愛犬の頭の上の方から手を下ろす行為も怖がります。
このように、普段から暴力を含めた力づくの対応をしていると、普段のちょっとした動作にも怖がるようになるため、力づくの対応は厳禁です。
2.怒鳴る
犬は大きい音を怖がります。声が大きい飼い主さんは、普段から気をつけましょう。
特に、怒ったときには、無意識で大声を出してしまうこともあります。たとえ暴力を振るわなくても、犬は飼い主さんの怒鳴り声を聞いただけで十分に怖いと感じます。
そしてそれが繰り返されると、飼い主さんの姿を見ただけで隠れるようになってしまうこともあります。
3.衝撃的な体験と飼い主さんのパニック
大きな地震や火事、交通事故といった不慮の天災や人災は、それだけで愛犬に強い恐怖感を与えます。しかもそのときに飼い主さんがパニックを起こしてしまい、それを目の当たりにした愛犬は、恐怖体験と飼い主さんを結びつけて記憶に残してしまいます。
不慮の天災や人災に冷静に対処するのは難しいことですが、日頃からリスク管理を怠らずに対処法を考えておくことで、いざというときにできるだけパニックに陥らないように心がけておきましょう。
4.飼い主さんからのとばっちり
飼い主さんも、いつもいつもポジティブな気持ちでいられるわけではありません。疲れたりイライラしたりと、マイナスの感情が渦巻くこともあるのは、人として当たり前です。
そういうときに愛犬に対して八つ当たりをしたり、マイナスの感情をそのままぶつけてしまうと、愛犬に強い恐怖心を与えます。ましてやそれが常態化してしまったとしたら、母子のような関係を築けるわけがありません。
5.飼い主さんの焦り
歯磨き、爪切り、投薬など、嫌がるけれども「しなければならない」お世話をするときに、飼い主さんが焦って無理強いすると、愛犬は恐怖を感じます。どうすれば受け入れてもらえるのかを工夫し、愛犬に合う方法を見つけましょう。
愛犬の気持ちを考えた配慮とは
犬は、「危険」「恐怖」といった感情を覚えた体験をその時の状況とともに記憶し、そういう状況を回避することで身の安全を図ります。そのため、一度愛犬を怖がらせるような行為をしてしまうと、その記憶を消すもしくは和らげることは容易ではありません。
ただし、時間をかけて飼い主さんが愛犬を愛していること、一緒にいても安全であることを伝えられれば、「飼い主さんは怖い」という記憶を塗り替えることは可能です。
そのためには、「必要なお世話以外何もしない」ことです。時間はかかりますが、次第に愛犬の方から近づいてくるようになりますので、そこから関係を再構築していくのです。
同時に、日頃から愛犬との付き合い方に注意をすることで前述のような事態を予防することもできます。大切なのは、飼い主さんの気持ちではなく、愛犬の気持ちを優先することです。ただし、愛犬の気持ちを擬人化して考えることではありませんので注意が必要です。
科学的な裏付けのある文献等を参考にした上で、愛犬の感じ方や習性を学び、日頃の行動を観察しながら、怖がることや嫌がることを無理強いしないようにすることが大切です。飼い主さんの工夫次第で、愛犬が受け入れてくれる方法をきっと見つけることができるはずです。
- 恐怖や不安、痛みを与えるようなことをしない
- 叱るしつけではなく褒めるしつけを行う
- 嫌がることは無理強いせずに、受け入れて貰える方法を見つける
- 飼い主さんの負の感情を犬にぶつけない
このようなことを日々の生活の中で配慮しながら愛犬の気持ちに寄り添ってあげることで、お互いの信頼関係をより強固なものにしていくことができるでしょう。
まとめ
愛犬と一緒に楽しく生き生きとした暮らしを続けるためには、飼い主さんと愛犬との間に母子のような信頼関係を構築することが不可欠です。
そのためには、飼い主さんが愛犬を愛することはもちろん、愛犬から深い信頼を得ることが欠かせません。
まずは、愛犬に対して絶対的な安心感を与えましょう。同時に、犬の感じ方や習性を正しく学んだ上で、愛犬の気持ちを考えた配慮を心がけることです。
やり方を工夫すれば、嫌なお世話もきっと受け入れてくれるはずです。その際に、今回ご紹介した愛犬を怖がらせるNG行為を避けるよう、ぜひ参考になさってください。