犬と飼い主が良い関係を築くために必要なこととは?
犬との暮らしは心身両方の健康に良い影響があると言われていますが、それは犬と飼い主が良い関係を築いていることが前提になります。犬と飼い主の関係性が良くない場合には、犬の行動上の問題が起こりがちになり、飼育放棄につながることも少なくありません。
では愛犬と良い関係を築くために必要なこととは何でしょうか?犬を迎える際にはどんなことに気をつければ良いのでしょうか?多くの飼い主さんが知りたいことだと思います。
このたびドイツのマックス・プランク研究所の研究チームが、犬と飼い主が良好な関係を築く要因とは何かを検証するため、過去の29の科学文献を調査しその結果を発表しました。
犬と飼い主の関係についての過去の文献から調査
研究チームは次のような仮説を立てて文献の調査を行いました。
- 犬と人双方の愛着スタイルや性格傾向が関係性に影響を与える
- 犬と人双方の愛着スタイルや性格傾向の組み合わせが関係性に影響を与える
- 犬を取得した時の動機が、関係性の機能と一致しないことがある
愛着スタイルとは他者との関わり方の傾向のことで、大きく分けて「安定型」「不安型(見捨てられ不安が強い)」「回避型(他者との関わりを回避)」「恐れ/回避型(不安型と回避型の要素を併せ持つ)」の4つに分類されます。
性格傾向とは、「開放性」「誠実性」「外向性」「協調性」「神経症的傾向」の5つの因子のうちどの因子が強いかで判断する性格の傾向です。
上記のような仮説のもと、研究チームは犬と飼い主の関係性に関する29の科学論文を検証分析しました。検証された文献は1973年から2022年の間に発表されたものです(大半は2000年以降)。
犬と人が補い合える関係が理想的
犬との関係が良好である飼い主の特徴は、性格傾向のうち開放性、協調性、誠実性が高い人でした。もし飼い主のこれらの特性が低い場合には、開放性や協調性の高い犬を選ぶことで良い相互作用が得られる可能性があります。
反対に犬との関係が上手くいっていない飼い主では、回避型愛着スタイル、神経症的傾向が高い、愛着が強すぎるといった傾向が強く、これらは危険因子とみなすことができます。
自分に危険因子の傾向が強いという自覚のある人は、犬を選ぶ際に開放性や協調性などのポジティブ要素が強く、恐怖心の強さや縄張り意識の強さなど危険因子の少ない犬を選ぶことが特に重要です。
反対に危険因子を持つ犬であっても、飼い主の開放性、協調性、誠実性が高い場合には攻撃性や恐怖心が消えていくことも珍しくありません。つまり犬と人の良好な関係とは、互いに補い合える関係であると言えます。
29の文献の検証から、3つの仮説のうちの最初の2つが裏打ちされた結果となり、犬との良好な関係性に関連するその他の要素では、「犬と飼い主のエネルギーレベルが似ていること」「互いに独占欲が弱いこと」がありました。
仮説の3つ目「犬の取得動機が、関係性の機能と一致しないことがある」という点についても、犬の取得動機としてしばしば報告される「見た目のかわいらしさ」は後の飼育放棄など飼い主の失敗と関連していたといいます。
反対に29の文献の研究に関わった飼い主の中で、犬を迎える時に性格傾向や愛着スタイルの相性を考慮したと答えた人はいませんでした。
まとめ
犬と飼い主の関係性について過去の文献を検証して調査した研究から、犬と人間両方の性格傾向や愛着スタイルが大きく関連していたこと、犬を迎える際には見た目だけでなく自分の性格や愛着についてよく考え、それを補い合えるような犬を選ぶことが大切だという結果をご紹介しました。
性格傾向、愛着スタイルはこれらの語句で検索すると説明や診断方法が数多く見つかるので、調べてみると愛犬との生活の中で気づくことがあるかもしれません。
犬を選ぶ際の新しい基準「自分の性格傾向と愛着スタイル」という考え方が根付いて、犬の問題行動や飼育放棄が無くなってほしいものだと思います。
《参考URL》’
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2023.105857