カナダの公園の犬のフン汚染を調査
犬と暮らしている人にとって、散歩中の愛犬のウンチを後片付けをすることは当たり前のことなのですが、残念ながら全ての人が実行しているわけではないのが現状です。
自然環境に組み込まれていない環境で犬という自然のサイクルの外にいる動物の排泄物を放置することは、衛生上大きな問題であることは明白です。また、このような無責任な行動は社会的な対立を生み治安の悪化につながるおそれもあります。
この度カナダのカルガリー大学、日本の神戸大学、イタリアのピサ大学の研究者チームによって、カナダの都市の公園の犬のフン放置の程度とパターンを分析し、公共の公園の汚染度を推定する調査が行われました。
カルガリー市内の公園でサンプル収集
調査はカナダのアルバータ州カルガリー市で行われました。市の条例では指定されたオフリード区域以外では犬にリードを付けて管理し、犬のフンはすみやかに取り除くことが義務付けられています。
カルガリー市内には75の都市公園または自然公園、そして州立公園が1つあります。研究者チームは、犬連れの人が多く集まる大規模公園のほとんどが含まれる16の公園と、鳥獣保護区から犬および他の野生動物のフンのサンプルを収集しました。
カルガリー市内にはイヌ科動物である野生のコヨーテが生息していますが、コヨーテのフンには動物の骨や毛が含まれているため犬との区別は簡単でした。
収集されたサンプルはエキノコックスの卵などを不活性化させるため冷凍処理され、重量の測定などが行われました。
市内の公園では1週間に1.5トンのフン放置の可能性！
この調査では2週間の調査期間中に259箇所で合計53の犬のフンが発見されました。調査は雪のない季節に行われたので今回見つかったサンプル数が雪のない半年間を表していると仮定し、フンの平均重量も合わせて考慮すると、半年間で1ヘクタールあたり約3.3kgの犬のフンが放置されていると推定されます。
これをカルガリー市の公共公園全体に換算すると、1週間あたり1.5トン近い犬のフンが放置されていることになります。放置フンが雨によって河川に流れ込み下流域の水を汚染する可能性があり、人々や野生動物の健康に深刻な影響を与えるおそれがあります。
また、犬をオフリードにすることが許可されているエリアでは、放置されている犬のフンが有意に多くなっていました。
オフリードにしている場合、飼い主は犬が排泄したことに気づかない場合もありますが、他の公園利用者から見られているという意識が薄れることもフン放置の一因になっていると考えられます。オフリード区域では駐車場付近のフン放置が多かったこともわかりました。
このような調査によって具体的な数値を出すことは、都市計画や自治体の政策を立てる上で重要です。
公園の全てのエリアでオフリードを禁止することはフンの放置には有効だと思われますが、犬を飼っている市民の多くは犬を放し飼いにできるエリアを重要視しているので、これは現実的ではありません。
オフリード区域の駐車場内でのリード着用の指定を徹底することは、一定の効果をあげる可能性があります。
この調査に使われたデータは2021年のものですが、カルガリー市の条例では2022年1月からオフリード区域に1人の人間が連れてくることができる犬の数を6頭以内に定め、違反を繰り返す者には公園への出入り禁止もあり得ます。次回同様の調査を行なった場合には、この新しい条例の効果を評価できると考えられます。
研究者はまた犬の飼い主に対して犬のフンを放置することがもたらす害について教育することは簡単で効果的なアプローチではないかと提案しています。
まとめ
カナダのカルガリー市で行われた公共公園での犬のフン放置について分布やパターン、放置の総量を分析した調査結果をご紹介しました。
河川や海浜の汚染度を調査した結果はたくさんあるのですが、犬のフンそのものを収集した調査は非常に少なく、過去の調査結果も期間や方法が違うので比較が難しい状態です。
研究者は、世界中のさまざまな場所で統一された方法を使って犬のフン放置の調査を行い、国や地域ごとの放置パターンを比較し文化的な特徴を知ることが、各地域の対策に有効ではないかと述べています。
日本でも犬のフン放置の調査が行われ、有効な対策を立てるために役立てられると良いなと思います。
《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-023-30225-7
